叶わなかった未来
佳奈さんにドレスの長く伸びた裾を持ってもらいながら私たちはそのまま別室の撮影スタジオへと移動した。
スタジオの方ではカメラマンの方が撮影の準備を済ませていた。
ドラマのセットような背景の前で私はカメラに少し背を向けるようにして立った。
そして、カメラマンは色々な角度からドレスをまとう私を何枚も何枚も撮った。
カメラマンの後ろのモニターでその写りを佳奈さんと生田さんや佳奈さんの会社の上司の方たちが見守るように確認していた。
『美咲さん、とてもいい表情していますよ! もう少しだけ笑顔のパターンもほしいので……何か幸せな事……あっ、好きな人だとかを思い浮かべたりしてみてください!』と佳奈さんは笑顔でそう言った。
少しすると気付いたら私は涙を流していた。
悲しかった訳でも感極まった訳でもない。
ただただ無意識に涙が流れた。
私の異変に気付きモニターで確認していた佳奈さん達は静まり返ってカメラ前の私を見た。
『……ごめんなさい。 私……涙が』
生田さんは涙を手で拭おうとする私に気付いて駆け寄ってきた。
『鳴海さん、とっても良い表情していましたよ』
そう言ってティッシュで軽くトントンと私の頬をつたう涙を拭ってメイクを直してくれた。
それから何度かポーズを変えて写真を撮り撮影を終えた。
佳奈さんは満足そうに微笑んでイメージ通りの写真が撮れたと私に丁寧に頭を下げた。
そして、佳奈さんの上司の方から広告が出来上がったら後日ファイルと今回の出演料をお届けしますと深々とお辞儀をされて私も返した。
うまく行ったかどうかはわからないけれど『イメージ通りのものが撮れた』とそう喜んでいたみんなの言葉がとても嬉しかったなぁ。




