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ダメな自分を変えたくて、私がした『おいしいパスタの法則』  作者: ハチサロン
マーメイドライン
20/24

一筋の光

 書店の前で先輩と別れて家に帰る途中に佳奈さんから電話がかかってきて撮影は週末に撮影する事となった。

佳奈さんの働く職場があるビルの中にフォトスタジオがあるらしく当日はそこで撮影するようだった。

メイクも衣装も撮影前にスタジオで済ませるので準備などは一切いらないが食べ過ぎや寝不足などには注意して生活してくださいと伝えられた。

前よりも少しだけ毎日が充実しているせいなのか自分の食欲が半端ではなくて少しそれが心配でもあった。

食べ過ぎには気をつけよう。 

けど少しくらいお腹がポッコリしたとしても加工かなにかでどうにかならないものなのかな?とか思ったりした。

けれど加工され過ぎて別人のようにされてしまったらそれもそれでショックだけど……


けれど、不安にしか思わなかった撮影がほんの少しだけ楽しみになったりしていた。


……私って自分で思っていたよりも意外と単純だ。


……まぁ、でも少し積極的に頑張った日なんだから少しくらい大目に見てよ。


 

 家に帰る前に私は珍しくスーパーへと立ち寄った。

流石に撮影をあと何日か後に控えているのにコンビニ弁当を食べるわけにもいかないなぁなんて思ったりして。


私は入り口でカゴを手に取りそれを横にあるカートに乗せて生鮮コーナーの方へと向かった。

今まで自分の食生活を改善しようだとか考えたことはなかった。

した方がいいかな程度には思ってはいたけれど、なかなか行動に移すキッカケもなかったし。

でも肌の事を考え始めるとやっぱり一番に見直さなければいけない感じがする。

だって自分の体の中に入れるものだし、どうでも良いわけがない。

食べるものはいわゆる自分の源のようなものだ。

あと数日しかないけれど体の中から綺麗になろう。


私は棚の上にある大きくて真っ赤なトマトを手に取った。


こんな風にスーパーで食材を選ぶのはいつぶりだろうか。

別に料理が苦手だったり嫌いな訳では決してない。

入社したての頃は毎日しっかりとしていたし職場に持って行くお弁当も自分でちゃんと作ったりもしていた。

どちらかといえば自炊は好きな方だったりしたのだけれど

だんだんと食欲がなくなっていく自分に料理を作る意味があるのだろうか。と思い始めてきてから適当に食事を済ませるような生活が始まった。


……帰ってから冷蔵庫の中も整理しなくちゃなぁ。


私の部屋の冷蔵庫の中は食べるものよりも賞味期限がもうきれているであろうドレッシングや買ったけれど食べきれなかったゼリーなどが散乱している状態で、お世辞にも女性の一人暮らしの冷蔵庫の中とはいえない状況だ。

私生活が上手くいかなくなってしまえばしまう程にそれと比例して冷蔵庫の中だったり部屋の中だってごちゃごちゃになっていった。


しなくなっていたお弁当づくりもまた始めてみよう。






 撮影前夜、私はベットの上で案の定全く眠れない夜を過ごしていた。

明日のことを考えると不安で心臓がどうにかなってしまいそうだ。

短い時間ではあったけれどやれるべきことはやった。

何度もブライダル雑誌の写真のモデルさんの表情や姿勢など参考になる所は紙に書き出して自分なりに鏡の前で何時間も確認してみたり、ここ数日は食生活にだって気を遣っている。

添加物をなるべく取らないように自炊だって頑張っている。

でも気を遣えば使う程に不安も増していく気がした。


それはきっと本気でぶつかって失敗してしまうのが怖いからなのかなって思ったりする。

多分、適当に何も考えずに明日を迎えて失敗したとしても『あぁ、やっぱりダメだったな』くらいにしか思わないだろうし自分に言い訳がいくらでも出来てしまうから。

本気で取り組めば取り組むほど逃げ道は少なくなっていくから不安になってしまうのだろう。


不安を少しでも取り除く為に誰かの声が聞きたい。

そう思い私はベットの隣の棚の上から充電しているスマホを手に取った。


『——はーい!』


『……もしもし千佳ちゃん? こんな時間に急に電話したりしてごめんね。 明日の事考えると緊張して全然寝付けなくって』


『いえいえ、私も美咲さんにメールしようと思ってたんです。 明日何時からなんですか?』


『明日ね午前中のの十一時に佳奈さんの働いてるビルに集合なんだー。 メイクだとかも何もしないでそのまま来てって言われたんだけど……本当にすっぴんで行って良いのかなぁ……』


『……んー、私はすっぴんで行った方がいいと思います。 多分、撮影の時は照明の明るさだったりとか選ぶドレスにしてもベースメイクの仕方から変わってくるでしょうし、普段しているメイクとはまた違うものだと思いますよ。 そこはしっかりとプロの方々に任せた方がいいと思います!』


『そっか……うん、そうだね。 じゃあ私明日バッチリすっぴんで行く! マスクとメガネで顔隠して!』と私は少しおどけてそう言った。


『全然隠さなくても大丈夫だと思いますが…… そうそう、美咲さん朝って結構むくんだりします?』


『そうだなぁ……どちらかといえばむくみやすいかなぁ……』


『小顔になるリンパマッサージって知ってますか?』


『えっ……何それ? 教えてほしい!』


『言葉じゃちょっと説明しづらいなぁ……あっ、今から少しだけビデオ通話出来たりします?』


それから千佳ちゃんにビデオ通話で丁寧にクリームを使ったリンパマッサージなるものを教えてもらった。

鎖骨から首にかけて、そして顔全体の血行を良くしていくものだった。

プロのスタイリストの方々もメイク前にするものらしい。


『——やっぱり千佳ちゃんってすごいなぁ』


『ん? 急になんですか? 何も出ませんよ?』


『お世辞とかじゃなくって素直にそう思ったの。 私が学生の頃に千佳ちゃんみたいな友達がいたら全然違う人生歩んでたんだろうなぁって思って』


『そう言ってくれると嬉しいです。 まぁ……美咲さんは学生ではないですが、でも私たち知り合えたじゃないですか。 これからたくさん思い出作っていきませんか?』


『うん、たくさん作りたい!』


『じゃあ、まずは明日の撮影を素敵な思い出の一つにしてきてくださいね! 明日がうまくいくように私願っているので』


千佳ちゃんと話していると自分がなんでも出来てしまうんじゃないかって思えてしまうんだ。

私が今一番欲しい言葉をピンポイントでくれるような私の心の支え……いや、心の大黒柱のような存在だ。

出会えてよかった。 そう言ってしまうと告白みたいになってしまうから言わないけれど

でも全然、大袈裟なんかではなくって心から……心の底からそう思ってて


私にとって彼女は真っ暗なトンネルの中を灯してくれる一筋の光のような存在だ。


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