ブライダルの広告
それから何日か過ぎ、千佳ちゃんから先日に話していたモデルを探している知り合いの人が私にぜひ会ってみたいとのことだったので私は仕事を終えてから待ち合わせの駅前へと向かった。
『あっ、美咲さーん! こっちこっち』
私は手を振る彼女とその隣に千佳ちゃんより少し年上に見える個性的なファッションの女性の方へと向かった。
『おまたせ! さっき仕事終わって急いできたよ』
『私達もさっきついたばかりなんです。 あっ、こちらが私の先輩の佳奈さんです』
その佳奈さんという女性は『はじめまして』と笑顔で私に軽くお辞儀をし私も返した。
そして彼女は私をつま先から頭の先までゆっくりと見渡した。
『ねっ、美咲さんとても綺麗な方でしょ?』と千佳ちゃんは佳奈さんを下から覗き込むようにして笑った。
佳奈さんは『うん』と深く頷いて肩から下げているバックから小さいケースを取り出し、その中から名刺を一枚両手で私に手渡した。
『ウェディング…… 結婚式場か何かで働かれてるんですか?』と私は名刺を見ながら尋ねた。
『結婚式場ではないんですが、海外での挙式などのブライダル関係の会社です。 今、うちの会社の広告モデルを探しているんですが……千佳に誰か綺麗な人いない?って聞いたら美咲さんが適任だ!って言われたんです』
『へぇー、そうなんですね』と私は少し苦笑いで頷いた。
『良ければ、うちの上司に美咲さんの事紹介させてもらってもいいでしょうか?』
『私、そういうの全くしたことなくって広告モデルなんて出来るかな……』と私は少し目線を落とした。
千佳ちゃんは私たちの間にピョンと入って
『とりあえず撮影だけでもしてみる!っていうのはどうですか? もしダメだったらその時はその時で! まぁ絶対大丈夫だと思いますけど』とニコッと笑った。
『しっかりとプロの方々に撮影してもらえるので、その辺は安心して下さい』と佳奈さんも優しく私を見つめた。
『……じゃあ、とりあえず撮影だけでも。 うまくいかなかったらごめんなさい』と私はしぶしぶ了承した。
それから、佳奈さんは会社に送る用と言ってスマホで私の全身を何枚かと上半身のアップの写真も数枚撮った。
そしてその写真を撮った後に佳奈さんは会社の方へと電話している様子だった。
『楽しみですねー! 撮影!』と千佳ちゃんは満面の笑みで私を見た。
『うーん……もう緊張してきた……』
写真なんて最後に撮ったのはいつだろう。
そんなに撮る機会もないから忘れてしまった。
……きっと最後に撮ったのは成人式の振袖の写真とその後の同窓会の時が最後だったと思う。
こういう時の撮影って一体どういった顔をしたらいいんだろう。
千佳ちゃんは笑顔でいいよとは言っていたけれど私は笑顔というものがあまり得意ではない。
『——美咲さん美咲さん! 今佳奈さんの電話の話聞いてたら撮影ウェディングドレスですって!』
『……えぇ!?』
私はギョッとして電話している佳奈さんの方に顔を向けた。
佳奈さんは電話で話しながらキラキラとした目の千佳ちゃんと動揺して慌てている私を交互に見てなんとも言えない表情をした。
ウェディングドレスって……
どうしよう……




