24.高速
高橋の推理を聞いたあと俺はしばらく言葉を失っていた。目の前の男が刑事であること…そしてミサの双子の姉ユカリが、十数年前に死亡しスーツケースに詰められていた可能性。
高橋はサービスエリアを出発し、再び高速に合流したあと「疲れてるだろう、目的地まで大体だけど7時間かかる。寝てていいぞ」と言ったが、そんな状況で眠れるはずがなかった。
「いや、大丈夫だ」
俺はそう答え、重たい空気を振り払うように軽い話題を振った。
「…高橋、久しぶりに会ったらガタイが良くなったよな。中学校の時も背が高かったけど、体つきが全然違う」
高橋はハンドルを握りながら、視線を俺に向けずに小さく笑った。
「そうか? お前は全然変わってないよな」
「そうだなぁ…背も全然伸びなかったし特に運動もしてないからな老けるばっかりだ。警察ってのは、やっぱり体を鍛えるもんなのか?」
俺の問いに、高橋は少しの間、沈黙した。彼が自分の職業を隠す必要がなくなった今、俺の素朴な疑問に答えることに躊躇はないようだった。
「まあ、そうだな」高橋は静かに話し始めた。「中学で背が伸びて、卒業してからも部活とかでずっと体は動かしてたけどな。一番変わったのは警察学校時代だ。あの時は、だいぶ筋肉がついたよ」
彼は一度、言葉を切った。
「体力づくりは基本だな。いざという時、相手を制圧するためにも、自分の身を守るためにも必要だからな。訓練は厳しかったが、そのおかげで今の体がある」
高橋の声は淡々としていたが、その言葉の端々には、彼が選び取った道の厳しさが滲み出ていた。
「そうか…俺もなにか、健康のためにも運動しないとだな。」
そんなことを言いながら「…悪い。ちょっと…休ませてもらう」
俺はそう呟き、シートを少し倒した。高橋は一瞬だけ俺を見たようだが、何も言わずに運転を続けた。
夜が明け、関西の小学校に辿り着いた時、俺たちは何を知ることになるのだろうか。




