21.点と点
高橋との電話を切った後、俺はすぐにリカに連絡した。
高橋が加藤先生に会っていたこと、ミサが失踪していることを知っていること。そして、三人で会って詳しい話をする必要があること。
リカの返信も早かった。彼女もまた、この異常な事態に驚いていた。俺たちは、お互いの予定を調整し、その日のうちに日程を決めた。
金曜日の夜。
俺とリカ、そして高橋は、都内の居酒屋の個室に集まることになった。リカは緊張した面持ちで長い髪の毛先を弄っている。
個室の引き戸が閉まり、俺たちは小さなテーブルを囲んだ。目の前にいる高橋は、昨日電話で話したときと同じく、硬い表情を崩さない。
「急に呼び出して悪かったな」高橋が低い声で言った。
「ミサの事だもん…むしろ早く集まれて良かった」リカが答える。
店員が注文を取りに来た。
「とりあえず、生で。リカと高橋も同じでいいか?」リカは頷く。しかし高橋はソフトドリンクを頼んだ。
「高橋、飲まないのか?」俺が聞くと、高橋はグラスの水に視線を落とした。
「ああ、今日は運転があるんでな」
(運転? 今からどこへ行くんだ?車で来たのか?)俺は高橋の仕事が何であるか、ますます気になった。しかし、今は彼の話を聞くのが先だ。
ビールと烏龍茶が運ばれてきて、無言で受け取る。乾杯の言葉はなかった。
「まず、俺から話させてもらう」高橋は静かに言った。
「俺がミサの行方を追っている理由は、今は話せない。だが、俺が得た情報から話す。加藤先生から聞いた通り、宮近母娘は転校先に姿を現していない。転校の直後、ミサの母親は実家とは別の、関西方面に引っ越していたことがわかった」
「関西…」リカが小さく呟いた。
「ああ。ミサの母親は元々、関西出身だ。そして、俺は明日転校予定だった小学校に行く。ミサが通ってない以上、学校に手がかりはないだろうがミサの母親の実家を尋ねようと思うんだ」
高橋の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。ミサの行方を追うため、すでに彼がそこまで動いていたとは。
「そして、ミサの家庭についてもう一つ。俺の調べでは、ミサの母親がミサを産んだのは、17歳の時だ」
「はっ…?17歳?」
俺は思わず声を上げた。あまりにも若すぎる。ミサの母親が、ミサと姉妹のように見えたのも納得だ。彼女は、まだ学生の時にミサを産んでいたのだ。
若すぎる出産。母子家庭。ユカリの存在。そして、失踪。
もう、疑問だらけだ。次から次に新たな事実が出てくる。これはもう、リカとの淡い思い出を辿る感傷的なものではない。ミサの抱えた秘密と、彼女の現在。真実の追求だ。
「高橋、俺も行く。明日、その小学校に俺も連れて行ってくれ」
リカが驚いた顔で俺を見た。しかし、俺は高橋から目を逸らさなかった。
「俺はリカと二人でミサ行方追うと決めた。お前が個人的にミサを探すと言うなら、俺たちも目的は同じだ。俺たちが持っているミサの記憶は、お前の調査に役立つはずだ」
高橋は、俺の真剣な眼差しを受け止め、烏龍茶を一口飲んだ。彼の瞳の奥で、何かが動いたのが見えた。
「…まず、俺とリカが持っているミサの情報を話す。それからでも良い。考えてくれ」




