19.後悔
疲れた。
彼が尋ねてきた宮近母娘のことは、よく覚えている。
大人びた娘に、まるで子供っぽい母親。
他の保護者に比べてずっと若く、小柄だったミサの母。姉妹のように仲が良いと言われていたけれど、実際年の離れた姉妹ともとれる年齢差だったのだ。
私には、ミサが母親の望みを敏感に感じ取り、常に「ママの望む娘」の振る舞いをしていたように見えた。
高学年になってからの変化は特に印象的だった。
長く伸ばしていた髪は短くなり、女の子らしかった服装は中性的なものに変わった。しかし彼女の筆記用具や学校の制作物は、相変わらず可愛らしい物が多かった。あのちぐはぐさは、ミサ自身の好みが隠され、無理に母親に別の好みを押し付けられているのではないかと、当時から心配していた。
仲の良かった母娘…
しかし、あれは愛というより母親の娘への執着のようにも見えた。
高学年になると一気に背が伸びた娘。小柄な母親と夏休み明けには背丈は変わらなかったはずだ。母親は、娘をさらに可愛がる一方で、まるで自分の一部であるかのように、ミサの全てを支配しようとしているような、そんな危うさがあった。娘を頼りにしだしたのか、それとも、何か別の理由で手放したくなかったのか…。
宮近ミサの明るい笑顔が、脳裏にちらつく。
あの時、もっと踏み込んで話を聞いていれば良かった。もう少し声をかけて、彼女を気にかけておけば良かった。
後悔が、今になって胸を締め付ける。
あの母娘がどこへ行ったのか。
なぜ高橋くんは今になって彼女を探しているのか。
その答えは、私には永遠に分からないのだろう。




