13.淡い恋心
十数年ぶりに会う和真。
彼は、昔から少し特別な雰囲気を持っていた。
小学生の頃の彼は、男の子にしては長めの髪。長いまつ毛に縁取られた目は、どことなくラクダを思わせるような目元をしていた。全体的に可愛らしい、女の子みたいな容姿だった。
普段は明るく、休み時間は他の男子たちと走り回って遊んでいるけれど、話し方や仕草は優しく、どこか品のある雰囲気があった。そのため、彼は一部の女子に人気があった。
リカも、小学校四年生の頃、和真が好きだった。
ミサが休みの日、クラスの女子数人で集まって好きな男子の話になった。その時「和真くん、なんとなくいいよね」と話したことで、リカは彼を意識し始め、淡い恋心を抱いた。
そのことは、ミサには言えなかった。野暮ったい自分が恋をしていることを、この美しい少女がどう思うか不安だったのだ。
ミサはそんな子じゃなかったのにと、今なら思う。
私の初恋は、すぐに終わりを迎えた。五年生になり、リカが習い事でミサと遊べなくなった頃から、ミサと和真が二人で遊ぶようになり、リカはミサの視線や仕草から、彼女が和真に好意を抱いていることにすぐに気が付いた。
自分の初恋は、静かに幕を下ろした。
気が付いてからは純粋にミサを応援していたし、自分もすぐに他に好きな人ができた。
普通、小学生の初恋なんてそんなものなのだ。
ミサの秘密を今更和真に話たのは、ただの自己満足だったのかもしれない。
リカは、和真が持つ「秘密を守って M」と書かれたメモを静かに見つめた。
和真は力なくメモをテーブルに置いた。
リカは、そのメモに手を伸ばし、そっと指先で触れた。
「この『秘密を守って』っていうメッセージ…ミサはこれだけを伝えに来たのかなって…」
和真は、ハッとした表情でリカを見返した。
「だって、これだけのためにわざわざ来るかな?引越し先が分からないから、なんとも言えないけど…ミサはうちの電話番号知ってたし、このメモを渡すくらいなら電話でも良かったんじゃないかなって」
リカは視線を彷徨わせた後、和真を見た。
「ねえ、二人でミサを探してみない?」
その提案は唐突で、なんだか小学生に戻ったような無謀さがあった。
リカの瞳に、好奇心が見え隠れしているからかもしれない。
「ミサがどこにいるか、手がかりはほとんどないかもしれない。でも、昨日の同窓会に来た人の中に、何か知ってる人がいるかもしれない。そうじゃなくても、ミサが住んでたアパートに行けば、何かわかるかもしれない」
まっすぐ、和真を見る。
「私たち二人なら、ミサを見つけられる気がする」
和真は、置かれたメモと真剣な顔をしているリカを交互に見た。驚きで硬直していた顔に、微かな熱が戻ってきた。
「…分かった。探そう」
和真は静かに、言った。




