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11.別のメモ
和真が沈黙したまま、すっかり冷めてしまったコーヒーを見つめていると、リカは申し訳なさそうに続けた。
「あとね、これも…誰にも話したことがないんだけどさ…実は、ミサが転校してから、一度だけうちに来たんだ」
和真は弾かれたように顔を上げた。
「ミサが? いつだ?」
「中学二年生の夏休み。私、部活でいなかったんだけど…」
リカは、思い出すように視線を彷徨わせた。
「ミサが来た時弟しか居なくて…弟はミサと話したこともないから『きれいなお姉さん』が来たって興奮してたけど、私がいなかったからかメモだけ渡してすぐに帰っちゃったみたいで」
リカはバッグから、使い込んだ小さな手帳を取り出した。
「弟が預かっていたのが、これ」
手帳のページの間から、リカが折りたたまれたメモを取り出し、和真の目の前にそっと置いた。
和真は、リカに促されるまま、その小さなメモを広げた。
そこには、見覚えのある字、あの木の洞で見つけたメモと同じ筆跡でたった一言。
『秘密を守って M』
メモを持つ和真の指に、力がこもる。
『秘密』とはユカリのことか。
それとも別の…?
そして『M』やはりあのメモはミサからのメッセージだったのだ。
和真はリカを見た。リカもまた、答えの見つからない表情で和真を見つめ返していた。




