不審影が 現れた !
気付いたら350p超えてました…。
もう少し早く更新できるように頑張ります
一部の建物は倒壊し、それ以外の建物もほとんどがボロボロになっている廃墟。霧は町を見渡せる程度に薄くなっていた。
「ここは…」
沢山の影が街を歩き回り、街は繁栄を映す様に無音で栄えている。
その中心にある異質。この中規模な街の中心、その暗い雲も、霧も、全てを貫き聳え立つ巨塔。その塔はロンドンのビッグ・ベンの様にその街のシンボルとしての存在感を放っていた。
「進む、か」
軽い緊張が心を矯正し、ローブを深く被ろうと引っ張ろうとするが、既にローブは無い。先ほどの行動に思わず赤面するが、それを見るものは誰も居ない。
そして私は前に進む。“何か”があるであろう中心の塔を目指して。
数多の影の中に一つの小さな影が混ざり、街は今までの無音のままで、今まで通りの静かな活気に包まれた。
◇◆◇
進んだ先は、廃墟だった。
確かに人は居るはず、それなのにこの町は人々は私の事を無視するかのように通り過ぎていく。私の踏んだ小枝を確かに手に取り、持ち帰ったはず。
――――疎外感。
それだけだった。居ないものとして扱われているようで不安が心を覆―――わない。別にこういった気持ちは慣れているし、事実。彼らには私は見えていないのだろう。
思考しながら目的の塔までたどり着く。
天高く聳え立ち、現実世界では絶対に見られないであろう不安定さを持ち合わせる。それなのに何処か引き寄せられる、そんな魅力を持った建築物だった。
入り口は小さくなっており、私目線から見ても人一人入れるかというサイズだった。明らかに女子供、少なくともある程度筋肉の付いた成人男性には入るのは少々無理がある、と言わざるを得ない。
余裕綽々で扉に入り込み、その内装に驚愕する。
「これ、は………。どうし、よ」
まず、その果てしなさに呆然とする。何処までも続く螺旋階段。
中心に向かい果てしない塔の先を仰ぎ見る。ポツポツと明かりは灯っているが、明かりは所々消えかかっており、長い間管理していない様で所々ボロボロになっている。
壁は煉瓦の様なものに現実のどの国にも存在しない言語で一つづつ丁寧に書き連ねられている。恐らくこの世界の言語だろうと予想できるが、私はこの世界の町にまだ一度も入ったことも、いや、ここは町に入れてしまっても良いのだろうか?人も人らしい人を見たことが無い。黒い謎の靄だけだ。
「登り切れる、か、な?」
両眼を瞑り、残り時間を確認する。
07:39:36
後大体八時間無いくらい。これで死んでもまた戻ってくれば良いのだ。臆病風に吹かれる事は恥では無いが、進まねば何も得るものは無いのだ。
それなりにらしい事を言ったは良いものの、元の職としての探求心に負けただけである。私は悪くない。
私は、抑えられない好奇心に惹かれるように階段を登り始めた。
◇◆◇
「着い、た! ハア、ハア………」
子妖精お手玉の時にも感じていたが、やはりこのゲームにはステータスには存在しない、隠されたステータスの様な値があるらしい。疲労値とでも言えば良いのだろうか?恐らくこれが一定以上溜まると《状態異常・疲労》などのでばふ?になるのだろう。
それを肯定するかの様に、視界の体力ゲージの横に《状態異常・疲労》の筋肉に罰点の付いたマークが出現している。子妖精お手玉の時の様に回復させてくれるオーブは存在しない。
が、流石にこの状態異常は時間経過で治ると想定したので、暫くこの重い体を受け入れることにした。
残り時間を確認するために再度目を瞑る。
01:21:54
登るのに六時間かかったのか。登っている間は完全に無心で居たため時間を見ていなかった。この体、階段一段一段登るとすると馬鹿時間かかるのだ。せめて飛べれば良かったものの、相変わらず状態異常は消える事は無く、体力ゲージの横に付いたままだ。
目の前に立つは巨大な扉。入り口の貧弱さに比べ、目の前に聳え立つ扉は威風たる赤は権威たる金に縁どられている。成金趣味、とは言わないが強者を称えるようだ。しかし、その扉の大部分は黒色で塗りつぶされていた。……黒?ある程度芸術なども見たことがあるが、この力強い扉にマイナスな印象を与える黒。そして扉に三色、そして赤、金、黒は少々目に五月蠅いと思う。この扉を作った者は少々品が無いのではないのだろうか?
私では到底開けられない様に見えるが、扉の上には換気用の格子が設置されている。
扉の窪みに指を掛け、上に登っていく。
「結構、行ける。ね?」
金の縁取りは指を掛けるのに十分な大きさで、軽いボルダリングの様なものだ。やった事ないけど。
格子がある部分を掴み、登りきる。そして中を覗いて―――。
「暗い、ね」
何も見えない。何も見えないはずなのだが、この真っ暗な空間の中に、確かに見えてしまった。
人影。
この暗い部屋で影なんてある筈も無いのだ。外は頼りない松明しか無く、中は真っ暗。黒とは、黒でしかなく。それ以上に黒いなんてあるはずが無いのだ。だが、それがより黒いと錯覚してしまう。
ああ、分かった。塗りつぶされていた扉は、この影の黒なのだ。実際はこの黒の足元にも及ばない。この黒を見たら、周りの暗ささえ明るく見えてしまう。
これはあまり良いものではない。それだけは分かる。
大人しく帰ろうと格子から飛び降りようとした瞬間――――。
「ああ、ああ! 珍しいこともあるものだね! この偉大で最強で勤勉なる私がここに入れられてやってから幾億年! 目まぐるしく星は周り、大観星は役割を終えて死んでいるだろう、いやそれは間違いだった! 私が殺したのだったね! いや初対面の君に話すことでも無かった。 その息遣い、恐らく女の子だろう! 種族は……体が小さいな! 風を切る音、羽を持っているね! 鳥人族のような腕が翼になっているタイプではないだろう!? 恐らくは妖精だろう! ああ、偉大で最強で勤勉なる私には何も見えていないが、いないのだが! 女性女児問わず女の子は花だからね! だからそこにいるであろう女の子――――私とえっちな事をしないかい!? 今はそんな事を言う状況じゃなかった。 悪い癖なんだ。古い友人にも言われたよ。今生きているかは分からないけどね! ハハハ! いやまあそんな事はどうでも良かった――――」
その影は凛とした声?で聞いてもいないことを語り散らした後、遂に本題を述べる。
「助けて!!!!!」
私にもその顔は見えなかったが、恐らくその言葉は、とても素晴らしい笑顔と共に述べられたのだろうという事だけは見なくとも分かってしまった。




