強者は弱者を狩り、ワンコロは弱者を救う
割とスキルが序盤にしては強い気もしますが【ハンドガン】には一つ制約をかけています。他のプレイヤーもβをしている人は同じくらいの強さのスキルを持っている。……と信じたいです。
そんなこんなでログインから2時間たった。
先程出たクエストはとりあえず了承を押しておいた。
「そういえば………」
頭に被せられた花冠について確認する。
[午時葵の花冠][My][ ]
銀製の冠に午時葵の花が幾つか無理矢理巻き付かせたような冠
二つの魔力により歪に咲き乱れる午時葵は、全ての花が枯れ消えた時に両魔力の因子が複雑に絡み合い、呪いを発動させる。
ログイン中ゲーム内で夕刻を回ると強制的に装備者を死亡させる
この装備の効果で死んだ場合はデスペナルティは発生しない
この装備は装備するとある程度高位の聖職の解呪系魔術を使用しないと外すことが出来ない
この装備を装備すると魔力値を使用するスキルに非常に高い補正が掛かる
この装備を装備すると一度だけ即死レベルのダメージを受けた時、HPが1で踏みとどまり、その後無敵時間が発生する
この装備を装備すると――
……?
色々気になることもあるけどそれより………呪いの装備でしょ!!!夕刻の基準が分からないが……太陽が見えなくなったら死ぬってこと…?
1回目を瞑っておちつkうわあ!!目を瞑ったら目の前に時計が表示される!律儀に針の音付きで!
………取り乱してしまった。恐らく目を瞑った時に出てきた時計、あれが1周すると私は死ぬのだろう、おそらくだが。
「ぐ………ぐぬぬ…………」
頭の花冠を外そうとするが外れず。このままだと頭皮が外れてしまう、割と真面目に。あの女次の満月の日の約束の時にとりあえず頭をカチ割ってやる。
そう決めた私はとりあえず、現実から目を背け、森に初めてのレベル上げへと向かうことにした。
◇◆◇
ウサギ!ウサギ!ウサギ!たまにオオカミ!
この森の生態系はどうなっているんだろう……?ウサギとオオカミしか居ない。レベルは私よりだいぶ上なのだが大体ヘッショ一発。普通レベル一桁の攻撃で何倍も格上の相手のダメージが与えられるか?という話なのだが恐らく……
「これ、だろう…なぁ」
頭に載せている花冠を撫でる。
色々と確認したがこの花冠、装備枠を消費しないのだ。おお、強い。呪いの装備から挽回もあり得るかもしれない。
またウサギが居る。一見真っ黒なもふもふ球体だが近づくと耳が生えたのち恐ろしい顔をして飛びかかってくるファンタジーウサギだ。更に丸くなっている間は銃弾すら弾く。お前のそのもふもふ固すぎない……?(困惑)
既に慣れたように近づき飛びかかってくる所を頭に弾を撃ちこむ。流れ作業のようにそれをこなす。それを四時間近く続けた。
次の黒兎を殺そうと近づくと同時に体力ゲージと名前が出てくる。
<アサシンラビー Lv:17>
自分より割と格上だ。それもそのはずでここは泉がある森より更に奥、入り口の7~11の一撃で沈むウサギとは多少勝手が違う。だが私のレベルもウサギやオオカミの尊い犠牲の元でそこそこに上がり、スキルレベルもそこそこに上がった。
足音を立て、気配を漏らし、殺気を立てずに近づく。
少しでも自分を弱者と見せかけ、油断させるように近づいて………。
「Guruuuu!!」
掛かった。これが私の編み出した最高効率ウサギ狩猟法。こちらに飛びかかってくるウサギは空中じゃ動きを変えることは出来ないし、私の身長が低いので飛びかかる間に確実に無駄な動作が発生する。そこを避けて……撃つ。
「『ばん』」
大口径の銃弾がウサギを貫き、その体から血をぶちまけた後物言わぬ躯に変える。
ウサギの死体を確認する。……無事に脳天直通。私の異名も終末少女じゃなくて脳天直通が良かった。でも直談判しようにも話しかける勇気が出来なかった。
体がポリゴンに変わってゆくウサギ。フューチャーゲーミング社のゲームは殺した後の目の光が虚ろになっていくあの感じがたまらない。
落ちたウサギのドロップアイテムを拾う。
[アサシンラビーの毛皮][Un][8]
アサシンラビーの体を守る毛皮
奴らは丸まっている間は異常なまでの防御値を誇っており、生半可な攻撃では傷一つ付けることは出来ない
その技術を応用することで、止まっている間は高い防御を誇る装備を作成することが可能だが、いかんせん加工法が一部の人間にしか伝わっていないため、その装備の出回る数は多くない
頭部に穴が開いているだけで損傷はほとんどない
非常に高品質
[アサシンラビーの肉][Un][7]
アサシンラビーの体を動かすための肉
奴らは待ちの狩人である、その為長時間待機できるように食いだめも出来、脂肪も厚い
お腹は薬草などで臭みをなくし、足はそのまま焼いて塩でかぶりつくのがおすすめ
内臓処理はされており、使う分を解体して使ってください
割と高品質
この2つが主なドロップアイテムだ。
毛皮は売ってお金にしてお肉は妹に渡して料理を作ってもらおうと思う。私には親が居ないので料理係は妹で他はだいたい私というサイクルでで協力して暮らしている。
今のでレベルが上がったようだ。高レベルウサギとオオカミを殺し続け、レベルもそこそこ上がっていたのでそろそろステータス割り振りをしよう。
「ん…」
足音が聞こえる。この区域ではアクティブなモンスターはオオカミだけなので必然的にこの足音もオオカミの物となる。たしかこのオオカミの確実な殺し方は………
「確か、こうや――――――!?」
その姿を見て、私は思わずその場から飛びのく。
体のサイズは周りの木々と同程度で、その巨体でのそのそとこちらを睨みつけながら近づいてくる。
………誰これ?私知らない。私が知ってるオオカミは私の倍ほどの体長と森に隠れやすい様に暗めの体毛を持つ<フォレストウルフ>だった。こんな純白でTHE・神々しいオオカミでは無かったはずだ。
「グォルルルル………!!!」
わあ、ウサギやオオカミみたいな汚い鳴き声じゃなくてちゃんとした吠え。とりあえず……逃げるか!
「失礼……しまぁ………――ッ!」
黒兎とは違う殺意を感じた。体を刺すような、人とは違うタイプの殺気だ。後ろを向いて走り出す、逃げるわけでは無い。対格差を考えてからの遠距離狙撃の方が殺しやすいと判断したからであって、逃げるわけでは無いのだ。
相手はまだのそのそとこちらをゆっくりと追いかける。その油断が命取りだ、離れた瞬間攻守交替で撃ち殺してやる。
「ガアァアアアーーーーーッ!」
森中に響き渡るかと思うほどの咆哮と共に走り出すオオカミ。先ほどから体力ゲージやらが見えてこない、などと頭の中で考えていたが、その今必要のない考えは一瞬で吹き飛んだ。
「こういう時は……」
森の中での逃走術。この森、どちらかと言うとBDWのアセントウッズの地形を滑らかにした見た目をしている。ルーゼルガの様に隠れられる様な起伏も無いのでお手上げの様にも見られるが、そこは¨臆病者¨の私が道を教えてくれる。
木々に身を隠し、より暗い方へ進んでいく。時々草むらに入り、ジグザグに走り回る。
オオカミは一般的野生動物に比べて動体視力が低いらしい。信じるか信じないかは考えていないがとりあえず脳内の数少ないヒントから自分の黒ローブを保護色とするために暗い方へ進み、俊敏に動き回る。
こまめに後方確認をした後逃走経路を確認する。この対格差なのに未だ生きているってことは……舐めプされてるのか。動物らしくない、純粋に腹が立つ。
走り、逃げ回る途中に後ろからなにかが飛んでくる気配を感じた。
それと同時に全力でジャンプする。思いっきり、恥も見分もなく横に飛び込んだので体が木にぶつかる。受け身はしたのでダメージは――――――受けていない。よし、まだ花冠の根性効果は残っている。
先程の通り過ぎた後を見ると……私から見るとそこそこに巨大な岩が私の走り回っていた場所を削り取り、更には木々をなぎ倒していた。その大地の傷跡からは私への明確な殺意が見て取れる。
正直今まで出会っていたのが無害そうな妖精たちと黒兎、あと弱いオオカミだったのでいまいちファンタジーな世界だという認識は無かったが……ここまで派手にされると流石に認識させられてしまう。
気を引き締めて、逃げ切るために走り出す。私が元々走っていた方は先程の投石?によって体を場所が悉くなぎ倒されているため、私が飛び込んだ方に行くしかない。果たして森を抜けだしたら帰ってくれるのか?あの性格の悪いワンコロのことだからどこまでも追ってきそうだ。ここは一つ、案が頭に浮かび上がったので、それを成功させるためにも、私は更に暗い方を目指す。
………そろそろか。恐らくここが森の深層、私が目指していたある程度暗い場所。距離を確認したのち近くにあった木にローブをかけ、わざと少し見えるようにしておいた後、伏せながら別の木に移る。
「『陰に紛れ、身を隠せ……【潜伏】』」
一秒程度で考えた適当な詠唱で【潜伏】を行使したのち、近くの木で息を止める。
足音が大きくなる。オオカミが近づいてくるのだ。無事トラップに掛かってくれると良いのだが……。
今私がやろうとしてる事は相手の認識を別の事に注目させて隠れきる。つまるところミスディレクションのような物だ。私が仕掛けた罠に近づいてきた巨大オオカミがその破壊力の塊とまで言える足を振り上げて木をへし折る。
「アオォーーーーーーーーーーーーン!!!」
満足したのか、空に向かい遠吠えをする。その光景は、倒れた木の位置から漏れる光によってとても幻想的に見えた。
少しづつ足音が遠のいていく。これでも逃げ隠れするのは¨卑怯者¨の私が慣れ切っている。
……行ったか?
はぁーーーーー。チョロ。所詮獣畜生だ。ワンコロ風情が人間様……妖精様に敵うわけがなかったのだ。
相手の敗因はこちらを舐め切って狩りをしたこと。ああいう輩は何かを諦める瞬間に歓喜するタイプの輩だ。私は今まで決して諦めたことはない。それが相手の敗因だった。それだけだ。次出会ったときはレベルをあげて完璧な狩りを持ってカーペットにしてやる。
さて、レベル上げを続けよう。
そう思い、一歩踏み出した瞬間――――――。
「へ?」
隠れ蓑にしていた木が葉を震わせながら倒れ伏す。そしてその木をゆっくりと見返すと―――――。
「ガァルルルル………!」
先程のオオカミがこちらを見下すように、嘲笑うように、その太い足を振り上げた。




