↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予言の紅星5 ロームズの反乱  作者: 杵築しゅん
医学大学誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/79

大師イルドラ

◇◇ ロームズ役場 ◇◇


 6月19日午後3時、レガート国を出発したハキル・クレマンス率いるレガート軍中隊の内、カルート国の王都ヘサからポブ経由でロームズを目指していた、初めの部隊が到着した。

 部隊は20人の商隊が2つ、30人の大商隊が1つで、合計70人が様々な商品を荷馬車に積んでロームズに入ってきた。


 3つの商隊は始めにロームズ役場へ行き、宿の手配や役場前の広場で市を立てる許可を貰う手続きをする。

 ロームズ役場で手続きを担当するのは、王宮警備隊のレクスである。


「すみません、只今宿は20人分しか空きが有りません。しかも明日には予約が入っているので、今日だけしか泊まれません。市は役場前で構いませんが、1商隊あたり1日500エバー掛かります」


「そうか、まあいいよ。俺達はキャラバンだからテントの準備もある。何処にテントを張ったらいいのかな?ああ、先に金を払おう。とりあえず3商隊が2日分だから3,000エバーだ」


大商隊の代表者は、【奇跡の世代】でありレガート軍前衛部隊のフジヤ少佐である。


「それでは市を立てる場所とテントを張る場所を、他の者がご案内いたします」


レクスはそう言いながら、「ガルロさんお願いします」と2階に向かって声を掛けた。

【奇跡の世代】であり【王の目】であるガルロがやって来て、真面目な顔で「ご案内します」と役場の職員ぽく言ったので、フジヤは噴き出すのを懸命に堪えて、ガルロの後ろをついて行った。


「お疲れ!思ったより早い到着だったな。とりあえず半分の者に市を立てさせ、残り半分はテントを持って教会前の丘に行くぞ。フィリップはロームズ教会だ」


「了解。ちょっと待っててくれガルロ。直ぐに指示を出してくる」


フジヤはそう言うと商隊を2つに分けて、テキパキと指示を出してゆく。そこは全員軍人である。「へーい」とか「はい団長」とか「えーテントっすか?」とか適当なことを言いながらも、ヤル気満々で作業を開始する。


 久し振りにやって来た大きな商隊の到着に、住民達も興味深々で集まり始める。

 恐らく何度も練習したのだろうと思われるくらい、隊員達は要領よく大きめの商品をシートの上に並べたり、荷馬車の上には小物を上手に並べていく。


「いらっしゃい、いらっしゃい。王都ヘサから来た商品だよ!今流行りの小物から家具、絨毯まで、特別価格で販売するよ。早い者勝ちだよ!さあ見ていった!」


ガルロはその様子を見ながら感心する。本物の商隊のようじゃないかと。


「凄いだろ。途中の町で他の商隊に出会って、みっちり仕込んで貰ったんだ。商人っていうのは逞しいよな。俺には無理そうだが、隊員の中に商家の出の者が3人居て助かったよ。つい調子に乗って途中で売れてしまった小物もあるが……ハハハ」


ぽりぽりと頭を掻きながらフジヤは説明し、市(商売)は部下に任せて教会へと歩き始めた。途中で傭兵にすれ違ったが、気付かぬ振りをして通り過ぎる。

 統治官屋敷の傭兵を捕らえたら、実質動ける傭兵は15人くらいしか残っていない筈だとガルロは計算し、決戦が目前であると気を引き締めながら、現状を軽くフジヤに話していく。





◇◇ ハビルの街 ◇◇


 ギラ新教の大師イルドラは、護衛を2人連れカルート国ハビルの街に入っていた。

 残りの部下は、建設資材の調達に奔走中である。

 目的は明日ロームズに到着予定の、レガート国の秘書官補佐を探る為である。

 それなりの高級ホテルから、ただ寝るだけの素泊まり宿まで、それらしい一行を探るべく部下と手分けする。


 ハビルの街経由でロームズに向かう、レガート軍や事務官の総勢は46人である。

 総指揮を執っているハキルが率いていた本隊20人は、ハビル正教会の《教会の離れ》と呼ばれる、一般人は宿泊できない施設に宿泊することになっている。

 見た目は商団だが、ブルーノア教会の印である5星の印のついた薄皮のシートを荷に掛けてあるので、人々は教会の荷物だと認識する。

 そんな教会専属の商人(商隊)を演じているハキル一行20人は、午後3時にはハビル正教会に到着していた。



「大師様、それらしい人数ではありませんが軍人の一行を発見しました。その一行は10人ですが、話し振りや外見から軍人で間違いないと思います」


午後5時、ハビルの街の中心部で見張っていた部下が報告にやって来た。


「それで、宿は何処だ?武器は?」


「はい大師様、宿はハビルで2番目に高いホテルで、ドゴル街の近くにあります。武器は全員が剣を、3人は弓のような物を背に担いでいました」


「囮ということもある。お前はしっかりとその一行を見張れ。街中での抜刀は目立つから、夜になりホテルから出てきたら知らせろ」


大師イルドラは部下にそう命じて、自分はハビルにあるギラ新教の拠点で待つことにする。たったの10人で来るはずがないと思っているイルドラは、他の部下の報告を待って作戦を決めることにした。

 部下の1人は、王都ヘサからハビルの街に入ってくる街道で見張りをしている。その部下は優秀であり、どんなに変装していても軍人を見分ける目を持っていた。


「大師様、それらしい10人の商団を見付けました。商団にしては荷の量が不自然な程少なく、時々レガート語で会話していました。体も鍛えられており、どんなに商人を装っていても、私の目を欺くことは出来なかったようです」


先程の報告から1時間後の午後6時、優秀な部下が自信満々で報告に戻ってきた。


「よし、そのまま探れ。本隊と思われる10人はドゴル街の宿に居る。接触すれば間違いないだろう。荷車の中は武器かもしれない。確かめておけ!」


「はい承知しました。人数を減らしますか?」


 部下の問い掛けに3分くらい考えたイルドラは、「それはロームズに到着してからでいい」と答え、引き続き見張るよう指示した。

 いくら優れた部下でも、2人で20人の軍人を相手にするのは難しいだろう。

 最悪の場合は28日にやって来る、オリ王子の側近やハキ神国軍に制圧させれば済むことなのだ。

 最も重要なのは、今回の件にギラ新教が関与していると知られないことであり、レガート国の者と直接対決を避けることであった。


「それにしても・・・困ったものだ。バカに何を言っても仕方ないが、こうもタイミングが悪いと笑うしかない。何故この時期にルンナの軍を演習に駆り出すんだ?バカは言うことを聞いていればいいものを……」


こうしてレガート国の動きを探り、苦労して動いていることなど、バカなオリ王子には分からないだろうがと思っていても、邪魔するような動きだけは勘弁願いたいと、イルドラは諦め混じりの息を吐いた。

 そして特別なお茶を何時もの様に優雅に飲みながら、レガート国の秘書官補佐と会うことが楽しみであるかのような口振りで、「王の目のフィリップか……」と呟き、噂ほどではないようだとニヤリと笑った。





◇◇ オリ王子の別邸 ◇◇


 午後4時、サイシスの護衛であり御者でありオリ王子の近衛兵であるグソウは、オリ王子の別邸に拠点を移したサイシスとロイス少佐とマゴンに、統治官屋敷の見張り10人が捕らえられ、借家を借りれず、馬車を奪われたと報告していた。


「なんだと!どういうことだ?全て技術屋のシュノーが命じたと言うのか!」


「はいサイシス様、勝手に統治官屋敷を占拠したと……それと借家を借りるのに身分証が必要でした。私はハキ神国の身分証しか持っていません。ヒブロさんの安否が確認できない今、ロイス少佐が役場に行かれるのが良いかと……」


サイシスの激怒は覚悟の上で報告をしたグソウだが、あまりの鬼の形相にたじろぎながらも、冷静さを保ちながら報告と解決策を述べる。

 今になって思えば、新しい統治官代行が、これまで強行策に打って出なかった方が不思議だったとグソウは考える。そもそも神母なんかに拘るから、こんな結果を招いたのだと腹も立ってくる。統治官代行は教会に滞在しているのに、神母を拐われて何も行動しない方がおかしいだろうが!と、グソウは叫びたい気持ちを必死で堪えた。


「どいつもこいつも役立たずめ!マゴン、国境に用意してある傭兵を直ぐに連れてこい!ロイスは役場に行ってこい!グソウは今居る傭兵を連れて統治官屋敷に行き、人質が連れ出されてなければ、何がなんでも阻止しろ!神母だけは絶対に渡すな!行け!」


サイシスは大声で叫びながら命令する。自分は動く気など更々無いくせに、全てを部下任せで解決しようとする。

 残念ながら、国境軍が敵に回った現実を把握する能力は無かった。

 実際サイシスの頭の中は、大師イルドラの怒りを買うのではと思う不安で占められ、取り繕う方法を考えるのが精一杯だったのだ。


「サイシス様、町長や工場長やヒブロさんが生きていたら、運ぶための荷馬車が必要です。1台しかない荷馬車を使っても良いでしょうか?」


グソウは御者もしていたので、馬の数や荷馬車の数を確認しており尋ねた。


「1台?荷馬車は1台しか無いのか?」


留守番をしていたロイス少佐を責めるように睨みながら、サイシスは問い質す。


「はい、国境軍が作業で必要だからと、昨日1台を残し持っていきました。荷馬車の金は統治官屋敷が払っていたので、個人の所有物ではないと言われ……えーっ……現在建設工事は止まっていたので許可しました」


「…………」


サイシスは怒りで言葉にならなかったので、代わりにマゴンが指示を出した。


「グソウ、ロイス少佐と共に統治官屋敷に行き、人質や神母が生きていて、まだ屋敷内に居ればお前は残って何とかしろ!死んでいたらロイス少佐と荷馬車で役場に行け」


「はい、分かりました!」


グソウはマゴンに返事をし、ロイスと顔を見合わせ頷くと、2人は部屋を急ぐように出ていった。指示を出したマゴンもまた、サイシスに一礼してハキ神国側に待機させてある傭兵達の元へと向かった。




 そしてグソウとロイス少佐は、統治官屋敷の前で、衝撃の光景を目にする。


 同じくマゴンは、つい先程まで無かったバリケードが、国境に有るのを見て驚く。

 当然のことながら、遠巻きに様子を見ながら、マゴンは徒歩で国境を越る。こっそりと見付からないように……

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。