こんわくするきんにく
きんにくがすごいってことは、かしこいってことなのさ
部族最強の男ムロフシは激怒していた。
己と戦士たちが狩りに出ている間に部族の小娘がしきたりを無傷で乗り越え、新族長となっていた。
しきたりを無傷で乗り越えたことは素晴らしいことだ。
部族に強い戦士は何人いてもいい。
だが族長は認められない。
族長とは部族で最も強きものでなくてはならない。
それは己を置いて他にいないと自負している。
明確な知性でそう判断していた。
ムロフシはその筋肉と武力を注目されがちだが、実際には古代人の中で上澄みの知性を持つインテリマッスルなのだ。
そんな知性を持つムロフシは数日ぶりに戦士たちと狩りを終え獲物を土産に凱旋してきた。
そんな戦士団を放置して新族長は貧弱なメスにくっつき甘えていることを知った。
ムロフシから生まれたのは純粋な怒り。
理性は吹き飛び感情の赴くまま新族長の小娘を貧弱なメスごと叩き潰そうと集落を突き進む。
まず最初に見つけたのは貧弱なメスだ。
貧弱なメスはムロフシの怒りに気づいたのか怯えた顔で巨大な鳴き声をあげた。
これには流石のムロフシも驚いた。
今までに聞いたことのない大きさの鳴き声だ。
マンモスだってここまでの鳴き声はあげない。
そして複雑な鳴き声だった。
鳴き声を上げてわずかな時間で新族長が聖なる槍を携え駆けつけてきた。
あの鳴き声でメスに危機が迫っていることを案じたようだ。
新族長に身内を守ろうとする意思があることで、怒りに染まっていた頭が少し冷え、冷静に会話をする余裕がムロフシには生まれていた。
族長は部族最強で、部族を守れるものでなくてはならない。
これがムロフシのポリシーだ。
そしてそれを身振り手振りと現代人に近い知性を持ちいて必死に説明するが、新族長から返ってきたのは先ほどのメスと同じような複雑な鳴き声だった。
ムロフシには理解できないが、メスの顔をみるとどうやら意思が通じ合っているようにみえる。
こいつらは、鳴き声で意思を伝えられるのか?
ムロフシの高い知性は正解を導き出すものの、それ以上でもそれ以下でもなかった。
そして新族長たる小娘がまた甲高い怪鳥のような、しかし複雑な鳴き声をあげた。




