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麻雀同伴の話をする博子に弁護士先生が苦労している感じが好きと話す。シャンパンコールの反対側にいる感じがいい(笑)

「麻雀同伴って、どんな感じなんですか?」

なすの煮浸しをつまみながら、弁護士先生は少し楽しそうに聞いてくる。

博子は、出しまきを一口食べてから、少し考える。

「いや、まあ、やることは麻雀なんですけども。」

「それはそうでしょうね。」

「お客様二人、税理士先生と生命保険会社の人と、私とアルカちゃんで麻雀をして。」

「で、二時間ぐらい、カレー食べて、コーヒー飲んで、ダラダラ麻雀卓を回すって感じです。」

弁護士先生は、その絵を想像して少し笑う。

「同伴というより、もう普通に休日のおじさんの遊びですね。」

「ほんまそうです。」

博子も笑う。

「でも、男性と麻雀すると、結構速さにビビるんですよ。」

「ああ、打牌が早い。」

「そうです。先週、女の子四人で練習したんですけど、やっぱり先生方とやると全然速いんですよね。」「なるほど。」

「まあ、慣れれば何とかなるかなぐらいの感じですけど。」

博子は、少し肩をすくめる。

「あんまり邪魔にならへんように練習せなあかんのと、税理士先生の座組は四人で回してるんで、

残りの女の子二人も今、麻雀を一緒に練習してて。」

「ほう。」

「来月からかな。ちょっと総当たり戦みたいな形で、トーナメント組んでやろうかなと思ってます。」

弁護士先生は、そこでしみじみしたように頷く。

「お客さんのために、そこまで苦労されるってすごいですよね。」

博子は、少し不思議そうに笑う。

「そうですかね。」「まあ、当たり前のことやと思うんですけども。」

「当たり前ですか。」

「ゴルフじゃないだけマシかなと思いながら。」

その返しに、先生が笑う。

「ゴルフは、道具も揃えないとダメですからね。」

「そうなんですよ。」「ウェアも靴もクラブも。」「それに比べたら、麻雀はまだマシです。」

「とはいえ、勉強はいるでしょう。」

「いりますね。」

博子は、少し遠い目をする。

「点数計算は最悪できなくてもいいにしても、何翻かぐらいは分かっとかんと話にならないですし。」

「役も覚え直しですか。」

「そうです。東大生が書いた麻雀入門書でも読もうかなって言うてました。」

「急に真面目ですね。」

「真面目です。仕事ですから。」

その言葉に、弁護士先生はまた少し笑う。

「でも、なんかこう、言ってしまったら。」

「ない玉を、無理やりひねり出してる感じが見えますね。」

博子は、思わず顔を上げる。

「やっぱ見えます?」

「見えます。」

「隠してるつもりなんですけどね。」

「全然隠れてないです。」

二人で少し笑う。

「言ってしまったら、先生方の座組が別であるんですけども。」

博子は、あらためて説明する。

「それぞれでどっか行くっていうので一応成立してるんです。酒蔵とか、

ウイスキー工場とか、バーベキューとか。」

「でも、月一回なんで、その間に『次何しようか』会議をしょっちゅうしてたんですよ。」

「なるほど。」

「だったら、どうせなら麻雀でもやりながら、だらだら喋ろうかって感じになったんです。」

「企画会議兼麻雀。」

「そうです。」

「かなり独特ですね。」

「独特ですけど、意外と回りそうなんですよ。」

博子は、少しだけ前向きな顔になる。

「特に、一番下の、最後に入ってきたカレンちゃんがですね。」

「結構やる気というか、『この座組混ぜてほしいです』って感じで言うてきてるんで。」

「へえ。」

「それに引っ張られてるのもなくはないかなって。」

「後輩のためでもあるんですね。」

「そうですね。」

博子は頷く。

「それに、この座組自体が二人でも四人でも成立するんですよ。」

「男性四人、女性四人の八人になれば、チーム戦できるじゃないですか。」

「なるほど。」

「卓も埋まるし、総当たり戦もできるし、話も広がるかなって。」

「かなり考えてますね。」

「考えないと、もう持たないんです。」

博子がそう言うと、弁護士先生は少しだけ目を細めて笑う。

「それぞれ考えてるけども。」

「結局、座組を組んでるヒロコさんが一番汗かいてるでしょうし。」

「まあ、そうですね。」

「なんかその辺の苦労をしてるところとか。」

「無理くりこう、ひねり出してる姿っていうのは、結構好きですわ。」

その一言に、博子は少し眉を上げる。

「先生、なかなかの変態さんですね。」

「いやいやいや。」

弁護士先生は慌てて手を振る。

「別にそういう変な意味じゃなくて。」

「ほんまですか。」

「ほんまです。」

先生は、少し真面目な顔になる。

「どうしたって、夜の店って、ラストコールとか、シャンパン開け合戦とか、

そういう派手なところに光が当たるじゃないですか。」

「まあ、そうですね。」

「大阪で言ったら、エースグループとか。」

「ああいうのはスポットライトも当たるし、派手やし、分かりやすい。」

「でも、そうじゃないところで。」

先生は、ゆっくり言葉を選ぶ。

「こんだけ苦労されてる姿を見せてもらうと、なんかそれなりに、こっちにも

通ずるものがあるというか。」

博子は、黙って聞く。

「向こうは、なんかアイドルを見に行く感じなのかもしれないです。」

「でも、こっちは、日々の生活の延長線上にある感じがするんです。」

「生活の延長線上。」

「そうです。」

先生は、なすの煮浸しを一口食べてから続ける。

「ネタがなくても、次を考えないといけない。」

「お客さんの機嫌も見る。」

「女の子同士のバランスも見る。」

「店の顔も立てる。」

「はい。」

「それでいて、自分が潰れたら終わり。」

博子は、少しだけ苦笑いする。

「まさに今それです。」

「だから、親近感が湧くんです。」

弁護士先生は、少し照れたように笑う。

「僕はそっちの、光の当たる方じゃなくて。」

「博子さんのところに毎週来て、色々話を聞きたいなと思ってるんです。」

その言葉は、派手な褒め言葉ではない。

でも、博子にはかなり染みる。

「なるほど。」

博子は、なすの煮浸しを箸でつまみながら言う。

「なかなか、そういうニーズもあるんですね。」

「ありますよ。」

「出汁のしみた女ってことですかね。」

「急に何言うんですか。」

「いや、なすの煮浸し食べながら思いました。」

先生は笑う。

「でも、たしかに。」

「え、乗るんですか。」

「派手なステーキじゃなくて、なすの煮浸しみたいな良さはあります。」

「褒めてます?」

「めちゃくちゃ褒めてます。」

博子は少し笑って、なすの煮浸しを口に運ぶ。

出汁がしっかり染みていて、派手さはないけれど、じんわりうまい。

今の自分も、案外こんな感じでええのかもしれない。

そう思いながら、博子は弁護士先生と、また次の話をゆっくりほどいていくのだった。

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