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東京イキリ社長と博子のお手当含めたやりとり。博子は全部は受けないが返せる部分は返す。その塩梅の小気味よさに東京イキリ社長は笑う

博子は、東京イキリ社長からの連絡を見ながら、しばらく布団の上で考えていた。

三人それぞれに二十。

それだけでも十分すぎるほどありがたい。

しかも、自分には別途、座組の設計や段取り、気遣いの分として上乗せしたいという話まである。

ありがたい。

本当にありがたい。

ただ、ヒロコはそこで、すぐに飛びつかないのだった。

「うーん。」

スマホを持ったまま、少し天井を見る。

自分だけ大きく上乗せしてもらうのは、正直嬉しい。

けれど、それが十万を超えてくるとなると、少し角が立つ。

アルカちゃんやさきちゃんがどうこう言うとは思わない。

けれど、座組で動いている以上、バランスは大事である。

それに、東京イキリ社長が個別で来たいと言ってくれている。

その気持ちも、ちゃんと受けたい。

ただ、自分はもうパンパンである。

東京の別の座組もある。

大阪の薬品会社の座組もある。

おじいちゃん、弁護士先生、会計士先生もいる。

これ以上、全部を真正面から受け止めたら、さすがにどこかで壊れる。

だから、博子は丁寧に文面を打ち始める。

「今回も本当にありがとうございました。三人それぞれにそこまで考えていただけるのは、

私たちとしてもすごくありがたいです。天満も、焼肉も、無理なく楽しんでいただけたなら

本当に嬉しいです」

まずは、素直に喜ぶ。

これは変に遠慮しすぎても失礼である。

その上で、個別の上乗せについて触れる。

「ただ、私だけに十万円以上を上乗せしていただく形になると、少し角が立つかなと思います。

もし次に社長がお一人で来てくださるのであれば、新幹線代の三万円分ぐらいは引いていただいて、

七万円ぐらいでいかがでしょうか」

そう書いてから、博子は少しだけ見直す。

言い方は柔らかい。

でも、ラインは引いている。

受け取りすぎない。けれど、相手の気持ちも無碍にしない。

続けて、個別で来たいという話にも返す。

「個別で来ていただくこと自体は、私は全然嬉しいです。月二回来ていただけるなら、

二回に一回は皆さんで遊びに来ていただいて、もう一回は社長とゆっくりお話しする、

という形が一番きれいかなと思います」

そこまで書いて、さらに自分の限界も正直に入れる。

「もう一つの東京の座組も、似たような形で来てくださっているので、それでだいたい土日が

埋まってしまいます。この辺が、今の私の限界ですかね」

博子は、少し苦笑いする。

限界という言葉を使うのは少し怖い。

でも、ここを曖昧にすると後で苦しくなる。

だから、ちゃんと言っておく。

その代わりに、提案も添える。

「その代わり、アフターはパンケーキでも、梅田近辺でゆっくり過ごせるところでも、

いろいろ考えます。私だけで抱えるというより、大阪の別のお店も混ぜながら遊んでいただくと、

社長にとっても幅が出ると思います」

そして、東京イキリ社長が考えていそうな“北新地の別の店を回る”話にも、あえて軽く触れる。

「おそらく社長も考えてらっしゃるかもしれないですけど、大阪には別のお店も結構あります。

そういうところも混ぜながらやっていただくと、私としても壁打ち相手としてお話を整えられますし、

ひょっとしたら私みたいな人を探せるかもしれません。

そういう意味で、北新地も大阪も、ぜひ満喫していただけたらと思います」

最後に、もう少し遊びの球を並べる。

「熟女キャバクラ、オカマバー、マジックバー、吉本新喜劇みたいなものもありますし、

大阪は大阪で楽しめるところがまだまだあります。社長が大阪に来る意味が増えるように、

私も無理のない範囲で考えますので、またよろしくお願いします」

そこまで打って、博子は一度深呼吸する。

かなり正直に書いた。

受け取るところは受け取る。

でも、受け取りすぎない。

個別は歓迎する。

でも、全部は抱えない。

別の店で遊ぶこともむしろ勧める。

その上で、自分は壁打ち相手として戻れる場所になる。

「まあ、これでええかな。」

博子はそうつぶやいて、送信するのでございました。

一方、新幹線の中の伊藤社長は、その返信を読んで、思わず笑う。

「うまいなあ。」

横の社長が聞く。

「何が?」

「博子ちゃん。」

「なんて?」

伊藤社長は、ざっくり内容を説明する。

三人への二十はありがたく受ける。

自分への上乗せは十万超えだと角が立つから、次に個別で来る時の新幹線代を差し引く形で

七万ぐらいにしてほしい。月二回来るなら、二回に一回はみんなで、もう一回は個別で。

ただし他の座組もあるから、それが限界。

その代わり、大阪の別の店や遊びも混ぜて楽しんでほしい。

博子は壁打ち相手として話を整える。

それを聞いた社長仲間が笑う。

「ほんま全部自分で受ける気ないやん。」

「受けるきないというか、パンパンなんやろ。」

東京イキリ社長も笑う。

「それもちゃんと言うてくるのがええわ。」

「普通やったら、全部来てくださいって言うやろ。」

「そうやねん。」

「でも、あの子は無理な時は無理って言う。」

「で、返せる部分は返そうとする。」

「それが信用できるんよな。」

東京イキリ社長は、スマホの画面を見ながら、少し楽しそうに言う。

「しかも、熟女キャバクラとか、オカマバーとか、マジックバーとか、吉本新喜劇とか言うてきてる。」

「また変な球出してきたな。」

「でも大阪、まだ掘りがいあるな。」

「あるな。」

「北新地だけでもまだ掘れるし、梅田も天満も第三ビルもあるし。」

「博多や札幌もええけど、大阪は大阪でやっぱ変な深さあるわ。」

東京イキリ社長は、少し窓の外を見る。

大阪に個別で来る。

博子の店に行く。

その前後で別の店を回る。

そこで感じたことを、また博子に話す。

博子はそれを整理して、また次の球に変える。

その流れを考えると、なかなか楽しそうである。

「まだまだ掘れるな、大阪は。」

東京イキリ社長は、少しわくわくしながらそう言う。

「次、個別で一回行くわ。」

「抜け駆けやん。」

「抜け駆けやなくて、調査や。」

「都合よく言うな。」

三人は笑う。

新幹線は東京へ向かって進んでいく。

けれど東京イキリ社長の頭の中では、もう次の大阪の夜が少しずつ始まっているのだった。

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