東京イキリ社長達が博子の座組の総括とお手当決めをする。博子に上乗せと個別で通い整える話をする(笑)博子は返信を考える
東京行きの新幹線が、静岡あたりを過ぎた頃。
三人の社長たちは、コーヒーを飲みながら、今回の大阪の余韻をゆっくり反芻していた。
土曜日の天満、芋焼酎のスタンドバー、店での第三ビルや札幌の話、そして日曜日の大阪駅
近くの個室焼肉。派手に豪遊したというより、無理なく整った二日間だった。
「で、今回どうする?」
東京イキリ社長が、スマホを手にしながら言う。
「まあ、芋焼酎は良かったよな。」
「良かったな。天満の感じも含めて。」
「じゃあ、これを五。」
「うん。」
「で、第三ビルの話とか、札幌の話とか、店でめっちゃ喋って楽しかったから、これも五。」
「それはあるな。」
「で、今日の駅の焼肉も良かったから五。」
「あれ、二千円のランチやのに、個室で落ち着いてて良かったわ。」
「そうそう。」
イキリ社長は、指を折るように整理する。
「で、諸々の話し方とか、店で今回はそんなに使ってない分も含めて、プラス五。」
「合計二十か。」
「そう。」
「女の子たち三人、それぞれ二十でええんちゃうか。」
その言い方に、他の社長たちも自然に頷いた。
「それでええと思う。」
「土曜の夜と日曜の昼、両方付き合ってくれてるしな。」
「しかも移動も段取りもしてくれてるし。」
「三人に各二十なら、きれいやな。」
「そうやな。三人で二十やと、ちょっと少ないわ。」
「それはそうや。」
イキリ社長も頷く。
「博子ちゃんだけやなくて、アルカちゃんもさきちゃんもちゃんと場を作ってくれてたからな。」
「うん。」
「それぞれ二十渡す、でええと思う。」
そこは、三人の中であっさりまとまった。
ただ、イキリ社長はそこで少しだけ言葉を足す。
「で、その上で。」
「うん?」
「博子ちゃんには、ちょっと別で上乗せしようと思ってる。」
横の社長がすぐに笑う。
「出た。」
「それ、女の子たちがガチャつくんちゃうの?」
「いや、それはね。」
イキリ社長は、少し考えながら言う。
「まずメールで、三人それぞれに二十渡すっていう話はちゃんとする。」
「うん。」
「その上で、博子ちゃんには別で、座組の設計とか、動線とか、気遣いとか、
そのへんの分として上乗せしたいって伝える。」
「なるほどな。」
「まあ、実際そうやしな。」
別の社長も頷く。
「昨日今日の流れは、結局博子ちゃんが組んでたもんな。」
「そう。」
「アルカちゃんとさきちゃんも良かったけど、全体の骨組みは博子ちゃんやった。」
「やろ。」
イキリ社長は、コーヒーを一口飲んでから続ける。
「で、もう一個ある。」
「何や。」
「俺、個別でちょっと通おうかなっていうのも考えてる。」
その瞬間、二人が同時に突っ込む。
「お前ずるいぞ。」
「抜け駆けやん。」
イキリ社長は笑う。
「いやいや。でも、なんかね、話が整うんよね、結局。」
「整う?」
「そう。めっちゃ使うとかじゃなくても、いろんなところ行ったり、
前で言うたら奨学金返済肩代わりの話とかもしたけど、そういう実務っぽい相談もできるやんか。」
「うん。」
「今回はそういう仕事の話はしてないけど、第三ビルとか札幌とか、俺らが勝手に遊んだ話も、
ちゃんと拾って整理してくれる。」
「それはあるな。」
「あの子は壁打ち相手としても貴重やねん。」
「まあな。」
「一回一回、ボトルをドンドン下ろしてるわけじゃないから、その分、個別で返すというか。」
「それが建前やろ。」
「まあな。」
三人で笑う。
「本音は?」
「俺は俺で大阪で遊びたい。」
「出た。」
「なんなら、ヒロコちゃんの店だけじゃなくて、どっかぐるっと回って様子見ながら
行くっていうのも全然ありやし。」
「悪いなあ。」
「でもさ、一見で北新地行くのと、一個行きつけの店を持ってるっていうのは全然違うやん。」
「それはそうやな。」
「その店があるってだけで、他の店だって気使ってくれるから。」
「うん。」
「そういうブラフ立てながらの遊び方も、ちょっとやろうかなと思ってる。」
「お前も相変わらず悪いなあ。」
「悪いというか、大人の遊びや。」
「都合よく言うな。」
そんなふうに笑いながら、イキリ社長はスマホを開く。
まずは、今回のお礼をきちんと伝えること。
土曜日の天満の芋焼酎、店での会話、札幌や第三ビルの話、日曜日の焼肉、それぞれが良かったこと。
そして、今回は店で大きく使えていないことも踏まえて、博子、アルカちゃん、さきちゃん
それぞれに二十ずつ渡したいこと。
さらに、博子には別で、動線設計や座組の段取りの分として上乗せをしたいこと。
文章にすると少し重い。
でも、こういうところを雑にすると、後々おかしくなる。
だからイキリ社長は、少し時間をかけて文面を整えるのでございました。
一方その頃、博子は家でごろごろしていた。
新大阪で社長たちを見送り、アルカちゃんとさきちゃんとも軽く雑談して別れ、ようやく家に
帰ってきたところである。
北山を避けて焼肉にしたことで体力的には助かったけれど、それでも二日連続で東京の社長たちを
受けるのは軽くない。
布団の上に転がりながら、博子はぼんやり思う。
「今回、まあまあ良かったんかな。」
天満は刺さった。
第三ビルと札幌の話も回収できた。
焼肉も、北山にしなかったことを逆に褒めてもらえた。
ただ、店ではボトルを下ろしてもらっていない。
そこはやっぱり少し気になる。
そんなことを考えていると、スマホが鳴る。
イキリ社長からである。
「お。」
博子は、少しだけ体を起こしてメッセージを開く。
そこには、今回のお礼が丁寧に書かれていた。
天満の芋焼酎が良かったこと。
店で第三ビルや札幌の話を回収できたのが楽しかったこと。
今日の焼肉も、軽く済ませたのに満足度が高かったこと。
そして、店で大きく使えていない分も含めて、博子、アルカちゃん、さきちゃんそれぞれに
二十ずつ渡したい、という話。
「え。」
博子は、思わず声を漏らした。
三人で二十ではない。
三人に各二十。
つまり、三人で六十である。
かなり大きい。
ありがたい。
でも同時に、受け方を間違えると、またバランスが難しくなる。
さらに文面の後半には、博子には別途、座組設計や動線、気遣いの分として
少し上乗せしたい、という話も書かれていた。
博子は、布団の上で少し固まる。
ありがたい。
本当にありがたい。
アルカちゃんとさきちゃんにもちゃんと顔が立つ。
店で使っていない分を外で補うという意味でも、筋は通っている。
ただ、自分だけ別上乗せとなると、そこはまた慎重に扱わないといけない。
「これは……どう返すかな。」
博子はスマホを持ったまま、少し考える。
そして、文面の最後には、イキリ社長が今後は個別で大阪に来ることも考えている、
というニュアンスまで入っていた。
「なるほどね。」
ヒロコは、少しだけ笑う。
これは新しい枝になる。
でも、雑に受けると、他の社長たちや女の子たちとのバランスが崩れる。
だからこそ、返し方が大事である。
休みたい。
でも、こういう連絡が来る限り、完全には休めない。
それでも、評価されていることは素直に嬉しい。
博子は、布団の上で少し深呼吸してから、丁寧に返信の文面を考え始めるのだった。




