新大阪で解散した後の東京イキリ社長達の回想と博子の気遣いへの感心。話の整理と次へのわくわく感のハブが博子になっている
ご飯を食べ終わって、三人の社長たちを新大阪まで送る流れになるのだった。
大阪駅のど真ん中で、個室の焼肉を食べて、
派手すぎるわけでもなく、安っぽすぎるわけでもなく、
ちょうどよく昼の時間を閉じることができた。
博子としても、昨日の天満から今日の焼肉まで、なんとか綺麗に着地したなという手応えがある。
新大阪の改札口まで来ると、東京イキリ社長が振り返って言う。
「いや、今日はほんまに充実した土日になったで。」
「ありがとうございます。」
博子が頭を下げると、社長は続ける。
「北山行かんで、大阪でダラダラ焼肉食ってたのが、逆に良かったな。」
その一言に、博子はかなりほっとする。
北山に行けば行ったで、もちろん絵になる。
でも、今日は無理に詰め込まず、昼に焼肉を食べながらゆっくり話す方を選んだ。
その判断を「良かった」と言ってもらえるのはありがたい。
他の二人の社長も、結構ご満悦である。
「いや、あの店よかったわ。」
「大阪駅の近くで、あれは便利やな。」
「個室で落ち着いてたし、値段もええ感じやった。」
その言葉を聞きながら、さきちゃんとアルカちゃんも内心ほっとしている。
昨日からの流れで、そこまで疲れが残ってない。
気持ち的にも、今日は北山まで走らずに済んだことで、だいぶ余裕がある。
その空気は、顔にも少し出ていた。
「また来月。」
東京イキリ社長が言う。
「そしたら、北山のモーニング行こうや。」
「ぜひ。」
博子はすぐに返す。
「来月なら、季節もいいと思います。」
「うん。」「それまで、体に気をつけて、無理せんようにね。」
その言葉が、少しだけやさしい。
ただ遊び相手としてではなく、博子たちが座組を回しながら無理していることも、
少しはわかってくれている感じがある。
「ありがとうございます。」
「またお待ちしてます。」
そうやって、博子たちは社長たちとお別れするのでございました。
東京行きの社長たちは、改札の中でコーヒーを買って、新幹線に乗る。
席に座って、荷物を置いて、ふーっと一息つく。
「いや、今回も良かったな。」
誰かがそう言うと、そこから自然に振り返りが始まる。
「土曜日は土曜日で、あの鶏と芋焼酎、うまかったしな。」
「鶏ちゃう、今回は芋焼酎のスタンドバーな。」
「ああ、そうそう。」
「でも料理もうまかったわ。」
「里芋の揚げたやつな。」
「芋と芋で合うってやつ。」
そんな話でまず笑いが起きる。
「店の中でも、俺らが第三ビルの話とか、札幌に遊びに行った話とか、一通り回収してくれたから。」
「そこが良かったな。」
「ただ聞いてるだけじゃなくて、ちゃんと整理してくれる感じあるんよな。」
「そうそう。」
「北海道は飯と観光、大阪は座組と会話、みたいな。」
「それな。」
新幹線が京都を過ぎたあたりで、今度は今日の昼の焼肉の話になる。
「でも、今日の昼の焼肉も結構良かったよな。」
「あれ、良かった。」
「なんつうかな。」
東京イキリ社長が、コーヒーを持ちながら言う。
「映えを狙って四千円じゃなくて、二千円で食ったっていうのが、余計に
価値あったような感じがする。」
「わかる。」
「東京で二千円って言ったら、高いところやとすぐ行くやん。」
「うん。」
「でも今日の二千円は、すげえ落ち着いてたし、良かった。」
「個室やしな。」
「大阪駅すぐやし。」
「そういうところを選んでくれる博子ちゃんのチョイスは、相変わらず安定感あるわ。」
三人とも、そこはわりと共通認識になっている。
高いだけの店ではない。安いだけの店でもない。
その日、その流れ、その体力、その会話の量に合った店を選んでくる。
そこに博子の仕事がある。
「でもさ。」
別の社長が、少し真面目に言う。
「俺ら、銀座六本木でバカバカ開けてた時に比べたら、すごいリーズナブルにやってくれてるやん。」
「うん。」
「今日もその話になったけど、ちょっと不安にはなったよな。」
「店に戻せてるんか、ってやつな。」
「そうそう。」
東京イキリ社長は頷く。
「でも、博子ちゃんも考えてやってるし。」
「その分は、お手当てには挟んであげてもいいかな、今回は。」
「それはそうやな。」
「で、次は響とは言わず、もう一個上のやつをちょっと開けてあげて。」
「店側の顔も立ててあげようかなとも思うし。」
「うん。」
「頻度も月一やけど。」
東京イキリ社長は、そこで少し笑う。
「俺はちょっと個別で来ようかなとは思ってんねん。」
すると、すぐに横から突っ込みが入る。
「それずるいな。」
「抜け駆けやん。」
「いや、まあでも。」
東京イキリ社長は笑う。
「他にも座組あるって言ってるから、その辺は要調整やけども。」
「でもな。」「こんだけ丁寧にしてくれる子って、多分他におらんと思うねんな。」
「今のところはね。」
三人は少し黙って頷く。
もちろん、札幌も良かった。
第三ビルも面白かった。
これから博多や名古屋もありかもしれない。
でも、その話をちゃんと聞いて、整理して、次の遊びに繋げてくれる相手は、
そう簡単には見つからない。
「札幌はまだ掘りがいあるな。」
一人が言う。
「あるある。」
「前回当たりやったんかもしれんけど。」
「また行く価値はある。」
「ただ、その話まで聞いてくれる子っていうのは、それは探さな無理やで。」
東京イキリ社長が言う。
「博子ちゃんばりに喋れる子は、やっぱり人気になるから、無理やと思う。」
「それはそうやな。」
「じゃあ、今度博多でも行ってみる?」
「旅行がてら博多もええな。」
「飯うまいしな。」
「で、一回旅行挟んで、大阪行って、その話して。」
「それ、まあまあええ感じやな。」
三人は、そんなふうに今後の遊び方まで話しながら、ぼんやりと今回の評価を頭の中でつけ始める。
土曜日の天満。芋焼酎。
第三ビルと札幌の回収。店での会話。
日曜日の大阪駅焼肉。
ヒロコの正直な腹の内。店への戻し方の話。
来月の北山。
派手さはない。
けれど、二日間としての満足度はかなり高い。
「今回、点数高いな。」
誰かがぽつりと言う。
「高い。」
「無理してない感じが良かった。」
「それやな。」
「疲れすぎてないけど、ちゃんと大阪来た意味はあった。」
新幹線は東京へ向かって進んでいく。
三人はコーヒーを飲みながら、次は博多か、札幌か、また大阪か、そんなことをだらだら話している。
そして、その話の中心には、やっぱり博子がいるのだった。




