日曜日昼。阪神百貨店裏の隠れ家チックな焼肉屋にオジサン達はテンション上がる。東京イキリ社長があまり店に金落としていないことに不安になるwww
日曜日の昼。博子は朝を少しゆっくり過ごしてから、身支度を整えて梅田へ向かうのだった。
昨日は天満の芋焼酎から店まで回して、東京イキリ社長たちともそこそこ濃い話をした。
今日は朝から北山に行く案もあったけれど、結局は昼に大阪駅近くで焼肉という形に落ち着いた。
博子としても、正直その方がありがたかった。
ここ最近、座組が増えすぎて、身体も頭も常にどこか動いている。
だから今日は、重すぎないけど、ちゃんと満足度はある。
そのくらいの球を投げたいところやった。
待ち合わせは大阪駅の改札口。
博子が着くと、さきちゃんとアルカちゃんはもう先に来ている。
「おつかれ。」
「おつかれさま。」
「今日は焼肉やんな。」
「そう。けど、ちょっと見た目はびっくりすると思う。」
「また何か仕込んでるやん。」
そんなことを言っていると、東京イキリ社長たちもやって来る。
社長の一人が笑いながら言う。
「昼一でいい店連れてってくれるって聞いてさ。」
博子は軽く頭を下げる。
「荷物もあると思うんですけど、ちょっと我慢してついてきてください。」
「おう、任せるわ。」
そう言って博子が案内したのは、阪神百貨店の裏手にある、イーマの五階でございました。
ビルの外観を見た社長たちは、少しだけ不安そうにする。
「こんな百貨店の裏の、なんかちっちゃいビルに入って大丈夫か?」
「大丈夫です。」
博子は、少し得意げに笑う。
「任せてください。」
エレベーターで五階へ上がり、店の入り口に入ると、空気が少し変わる。
中には小さな川のような水の流れがあり、照明も落ち着いていて、
さっきまでの雑居ビル感が一気に消える。
社長が思わず声を漏らす。
「なんか佇まい、めちゃめちゃ高そうやけど。」
「ここ、夜に普通に食べたら、食べログ的には多分一万円ぐらいすると思います。」
「やっぱりか。」
「やけど。」
博子は、そこで少し胸を張る。
「ランチタイムは穴場なんですよ。」
「出た。」
「また穴場や。」
「ちゃんと六人で予約しておいたので、任せてください。」
そう言って店に通される。
川の段差を越えるようにして奥へ進み、障子を開けると、ちょうど六人がすっぽり
入る席が用意されている。しかも掘りごたつで、足も楽である。
「ええな。」
社長の一人が、席に着きながら言う。
「大阪の真ん中で、こんなもんがあるってめっちゃええやん。」
「でしょう。」
博子は少し笑う。
「荷物も横に置けますし、個室っぽいから喋りやすいですし。」
「なんか、いちいちあれよな。」
東京イキリ社長が、感心したように言う。
「博子ちゃんが連れてくれるのは、やっぱちょっとテンション上がるわ。」
その一言で、社長たちの機嫌がまた少し良くなる。
さきちゃんとアルカちゃんも、店内を見ながら少し驚いている。
「いや、こんなん私たちもそんな知らないですよ。」
「ほんまに。」
博子は笑いながら返す。
「いやいやいや、まあまあ、いろいろ探したらあるんよ。」
「出た。」
「また博子ちゃんの検索力や。」
そんなふうに軽く盛り上がりながら、さっそくランチのメニューを見る。
確かに、一枚肉の映えるコースになると四千円ぐらいする。
ただ、今日はそこまで重くなくていい。
昼に軽く焼肉を食べて、新大阪へ送る流れである。
「今日は、二千円のランチセットにしましょう。」
博子が言う。
「え、安いな。」
「社長たちも、食べる量とか考えたら多分これぐらいでええと思いますよ。」
「たしかに、昨日も飲んでるしな。」
「重すぎても帰りしんどいですし。」
「それはある。」
そうしてランチセットを頼むと、肉がばーっと運ばれてくる。
きれいに並べられた肉に、ご飯、汁物。
しかも、ご飯や汁物はおかわり自由という説明が入る。
「サービスもええやん。」
社長の一人がうれしそうに言う。
「この場所で、個室で、これで二千円は強いな。」
「そうなんですよ。」
「夜の店を昼に使うってこういうことか。」
「そういうことです。」
肉を焼き始めると、場は自然と温まっていく。
昨日の天満とは全然違う。
今日は静かで、少し上品で、でも値段は抑えている。
その対比も含めて、社長たちはかなり機嫌よく食べているのだった。
しばらく肉を焼いて、ご飯を食べて、少し落ち着いた頃。
東京イキリ社長が、ふと博子の方を見る。
「でも、博子ちゃん。」
「はい。」
「ええんか?」
「何がですか?」
「大阪で北新地で飲むってなってさ。」
「俺ら、今回ボトルも下ろさんかったやん。」
博子は、その言葉に少しだけ表情を整える。
「まあ、そうですね。」
「で、本来的には。」
社長は、少し真面目な顔になる。
「店的には、遠方から来て、こうやってアフターとかもやってくれる人に対してやったら。」
「それなりに、店でも使わなあかんかったりすると思うねん。」
さきちゃんとアルカちゃんも、そこは少しだけ静かになる。
これは、確かに無視できない話である。
外で飯を食べて、次の日もアフターして、でも店では大きく使っていない。
店から見れば、外に流れすぎているようにも見えるかもしれない。
博子は、どう返そうかな、と一瞬だけ悩む。
変に「全然大丈夫です」と言い切るのも違う。
かといって「じゃあ次はボトルお願いします」と強く言うのも、今日の空気には合わない。
ここは、店の顔も立てつつ、社長たちの気遣いもちゃんと受け取るところである。
「正直に言うと。」
博子は、少しゆっくり話し始める。
「お店的には、もちろん使っていただけた方がありがたいです。」
「うん。」
「それは本当にそうです。」
「でも、私としては、今回の流れは流れで、ちゃんと意味があったと思ってます。」
社長たちは、箸を止めて聞いている。
「昨日は、天満でちょっと大阪らしいところを見てもらって。」
「北海道の話も聞けて。」
「今日はこうやって、昼にゆっくり喋れて。」
「それで、来月は北山行きましょうか、みたいな次の話にもなってるじゃないですか。」
「まあな。」
「だから、一回で大きく落としてもらうより。」
博子は、そこで少しだけ言葉を選ぶ。
「長く、気持ちよく来てもらえる形を作る方が、私は大事かなと思ってます。」
社長は、少し頷く。
「なるほどな。」
「もちろん。」
博子は続ける。
「店のことを考えたら、どこかでちゃんと戻してもらえるとありがたいです。」
「でも、それを今日ここで無理に言うより。」
「次に来た時に、気持ちよく一本入れてもらうとか。」
「三人で来てもらった時に、ちゃんとセット重ねてもらうとか。」
「そういう形の方が、角が立たないかなって。」
その返しに、社長たちは少し顔を見合わせる。
「博子ちゃん、ほんまその辺うまいな。」
「いやいや。」
「でも、そう言われたら、次はちゃんと店でも使おうって思うわ。」
「ありがとうございます。」
博子は、そこで軽く頭を下げる。
「こっちも、ただ外で遊びたいだけじゃなくて。」
「ちゃんと店に戻せるようには考えてますので。」「そこは信用してます。」
そう言って、また肉が網の上でじゅうっと鳴る。
少し真面目な話を挟んだことで、むしろ空気は落ち着く。
博子も、心の中で少しほっとする。
今日もまた、外遊びと店のバランスの話になった。
でも、そこを避けずにちゃんと話せたのは、悪くない。
そう思いながら、博子は次の肉を焼くのだった。




