キャバクラ三セット目。東京イキリ社長と明日のアフターの相談。昼に大阪のリーズナブルな個室焼肉にする。
三セット目に入ったところで、ヒロコは東京イキリ社長の方を見て、少しだけ
段取りの話に切り替える。
「社長。」
「うん?」
「明日どうします?」
そう聞くと、社長たちも少しだけ姿勢を変える。
今日の夜は天満で芋焼酎を飲んで、店に戻って、北海道の話や第三ビルの話でかなり盛り上がった。
だからこそ、明日の動きは無理に詰め込みすぎない方がいい気もしている。
博子は、いくつか持っている球を並べる。
「朝から張り切るのであれば。」
「北山のブリアンですね。」
「ああ、前に行ったところか。」
「そうです。一回連れて行きましたけども。」
「そこ行って、向かい側の植物園に行って。」
「うん。」
「帰りにお茶して帰る、っていうのが一つあります。」
「なるほど。」
「ただ。」
博子はそこで少しだけ現実的な話を入れる。
「季節柄的に言うたら、来月の方が植物園に行きがいがあるというか。」
「紅葉のシーズンというか、季節がいいんで。」
「うん。」
「ちょっと散歩するにはいいかな、みたいなところはあります。」
「なるほどな。」
「で、ゆっくりするのであれば。」
博子は、もう一つの案を出す。
「昼に大阪駅のど真ん中で。」
「半個室の焼肉屋さんがあるんです。」
「ほう。」
「映えるものやったら四千円くらいしますけども。」
「普通に焼肉食べて帰るんやったら、二千円くらいで美味しい焼肉食べれるところがあるんです。」
「おお、それええな。」
「そこでまったりして。」「新大阪で帰るっていうのがあるんですけども。」
社長たちは、そこで少し考える。
北山も悪くない。
でも、今日も移動して飲んで、明日朝から京都まで行くとなると、ちょっと重い。
それに、博子が言う通り、植物園は来月の方がたぶん映える。
「どうだろうね。」
博子は、無理に押し切らず、少し待つ。
「いろいろ球あるんですけども。」
すると、東京イキリ社長が頷く。
「そうやな。」
「とりあえず、北山の紅葉というか散策は来月にして。」
「明日は焼肉にしようか。」
「それがいいと思います。」
別の社長も頷く。
「博子ちゃんたちも、結局のところ、昼軽く飯食うぐらいの方が気楽やろ。」
「まあ、正直それはありがたいです。」
博子が少し笑う。
「北山やったら、朝からまあまあ動きますからね。」
「そうやろ。」「その分、お手当は多少は勉強というか。」
社長は、わざと少し軽い言い方をする。
「北山に比べたら下がるけども。」
「そこは全然。」
「でもまあ、それぐらいでゆるっとやって。」
「また来月に行きたいかな。」
「ありがとうございます。」
「とりあえず明日また喋りたいしな。」
「そうですね。」
その流れで、他の二人の社長も同意する。
「焼肉でええと思う。」
「昼に個室でゆっくりできるなら十分やわ。」
「じゃあ明日はそれで。」
「はい。押さえます。」
博子は、そこで一つ安心する。
今日の夜はここまでしっかり回した。
明日まで北山フルコースにすると、自分たちも少ししんどい。
だから昼焼肉で、個室でゆっくり喋って、新大阪へ送るぐらいがちょうどいい。
東京イキリ社長が、最後に笑いながら言う。
「いろいろ動きながら考えるから。」
「種、また探しといてくれよ。」
博子は、少し苦笑いしながら頭を下げる。
「ないなりに何か考えておきますので。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そうやって、三セット目も気分よく終わり、社長たちをお見送りするのだった。
店の外まで出て、軽く挨拶をして、
「明日は昼に焼肉で」
「来月は北山もありやな」
というところまで確認して、社長たちはホテルへ戻っていく。
その背中を見送りながら、博子は少しだけ息を吐く。
今日もなんとか回った。
天満の立ち飲みも悪くなかった。
北海道の話も回収できた。
明日の予定も、無理のない形に落ち着いた。
店に戻ると、アルカちゃんとさきちゃんが近づいてくる。
「おつかれ。」
「おつかれさま。」
「明日、北山じゃなくなった?」
「うん。昼に大阪駅で焼肉。」
その言葉に、二人ともわかりやすくほっとする。
「よかったー。」
「北山やったら朝からバタバタやったもんな。」
「そうなんよ。」
博子も頷く。
「来月に回すって話になった。」
「それが一番きれいやな。」
「季節的にもそっちの方がええし。」
「でしょ。」
「明日は個室焼肉で、ゆるっと喋って帰ってもらう感じ。」
「それなら全然いける。」
「ありがたい。」
三人で、今日の流れを少し振り返る。
「でも今日もなんとか無難にやり過ごせたな。」
アルカちゃんがそう言うと、博子も笑う。
「やり過ごせたって言い方。」
「いや、でもほんまやん。」
「ネタないネタない言いながら、天満の芋焼酎はちゃんと刺さってたし。」
「第三ビルの話も盛り上がったしな。」
さきちゃんも頷く。
「北海道の話もよかったですね。」
「そう。ああいうの、向こうが勝手に遊んでくれて、その話をこっちで回収できるのはでかい。」
「それは強い。」
「全部こっちが用意せんでもいいってことやもんな。」
「そうそう。」
博子は、少し肩の力を抜く。
「まあ、とりあえず今日は帰ろう。」
「明日もあるし。」
「そうやな。」
「昼焼肉やし、そこまで重くないけど、ちゃんと寝とかな。」
「ほんまそれ。」
そうやって、三人はそれぞれ早めに帰る準備をするのだった。
明日は昼に大阪駅で焼肉。
来月には北山。
まだ球は完全には尽きていない。
でも、無理に全部を今日出す必要もない。
そう思うと、博子も少しだけ気が楽になる。
今日も一つ、なんとか回した。
明日も一つ、丁寧に返す。
それでええか、と思いながら、博子たちはそれぞれ家へ帰り、翌日のアフターに備えるのだった。




