天満の芋焼酎の立ち飲み屋で女性陣がおススメの芋焼酎ソーダ割と料理を食べながら雰囲気と前回の第三ビルの話をする
芋焼酎の立ち飲み屋さんで、博子たちはそれぞれ、社長たちに推しの芋焼酎ソーダ割りを
出していくのだった。
棚に並んだ芋焼酎を見ながら、
「これはちょっと香りが強いです」
「これはソーダ割りにしたら飲みやすいです」
「こっちは芋っぽさあるけど、後味が軽いです」
みたいなことを、博子、アルカちゃん、さきちゃんが、それぞれ自分のついた社長に合わせて
選んでいく。
社長たちは、グラスを受け取ってひと口飲むと、素直に顔をゆるめる。
「うまいな。」
「これ、芋なのに軽いな。」
「ソーダ割りで飲むと、だいぶ印象変わるな。」
そんなことを言いながら、店の空気も楽しんでいる様子や。
「なんか、この空気感もいいな。」
東京イキリ社長が、店内をぐるっと見ながら言う。
「新橋っぽいけど、それよりちょっと開放感あるし。」
「わかります。」
「そこまでガッチガチに混んでるわけでもないしな。」
「そうなんですよ。」
博子が頷く。
「天満のごちゃごちゃ感はあるけど、ここはちょっとだけ抜けてる感じありますよね。」
「うん。」
「ちょうどええわ。」
横の社長も、棚の焼酎を眺めながら言う。
「かといって、やっぱり衝撃はあったしな。」
「衝撃?」
「店も駅前も。」
「ああ。」
「なんか、選んでくれてる感じがするわ。」
その言い方に、博子は少しだけ嬉しくなる。
高い店に連れていけばいい、という話ではない。
むしろ、この人たちはもう高い店なんかいくらでも行っている。
だからこそ、こういう“わざわざ選んでる感じ”が伝わるのは大きい。
そうしているうちに、料理が運ばれてくる。
まずは、博子が推していた一品。
里芋の煮っころがしを揚げたような、外はカリッと、中はほくっとしたやつである。
「とりあえず、これ食べてくださいよ。」
博子がそう勧める。
「これ、めっちゃうまいんで。」
「じゃあ、いこうか。」
社長たちが箸を伸ばして、ひと口食べる。
すると、すぐに顔が変わる。
「あ、うまい。」
「これ、ええな。」
「外カリッとしてて、中ほくほくやな。」
「そうなんですよ。」
「煮たやつを揚げてるから、味も入ってるんです。」
「なるほどな。」
ほくほく感と、カリッとしたサクサク感。
そこに芋焼酎のソーダ割りを流し込むと、またちょうどいい。
「これ、芋焼酎合うな。」
「芋と芋やからかな。」
誰かがそんなことを言って、また笑いが起きる。
「いや、でもほんまに合うわ。」
「この組み合わせ、ええな。」
そうやって、料理と焼酎がどんどん進むのでございました。
すると、東京イキリ社長が、ふと思い出したように前の話を持ち出す。
「いやでも、あれや。」
「うん?」
「この前、誘ってくれた第三ビルの魔境に放り込んでくれたやつ。」
「ああ。」
「あれもあれで楽しかったで。」
博子は、少し笑う。
「行ったんですね。」
「行った行った。」
「ここはちょっとおしゃれやけども。」
「うん。」
「第三ビルのあれは、ほんまにハイボール五十円とかさ。」
「そうそう。」
「あの世界観にちょっと行ってみたわ。」
「どうでした?」
「安かろう悪かろうではあったけども。」
社長は、そこで妙に楽しそうに笑う。
「なんかワクワク感が半端ない。」
「東京民からしたら?」
「そう。」
「東京でああいうの、なかなかないというか。」
「あるにはあるけど、あの濃さはないな。」
横の社長もそこに乗る。
「なんか庶民とか、そういう細いところの千ベロも見ましたよ。」
「行ったんですか。」
「いや、見ただけwwwさすがにああいうところは、ちょっと怖かった。」
「でしょうね。」
博子が笑う。
「で、博子ちゃんおすすめのサシスと、夢ゴリラは行った。」
「おお。」
「夢ゴリラはマジでご飯が美味しかった。」
その言葉に、博子はちょっと得意げになる。
「でしょ。」
「ご飯美味しくて、こんな値段かってなったわ。」
「そうなんですよ。」
「瓶ビールでやってさ。」
「うん。」
「瓶ビールのケースで机が作られててさ。」
「あの感じ。」
「そうそう。」
社長は、思い出しながら少し笑う。
「しかも飯うまいって。」
「なんかほんまに、穴場に来たなって感じで。」
「前回のアフターはすごい楽しかった。」
その話を聞いて、博子も少しほっとする。
自分が直接同行していない時間でも、
投げた球がちゃんと刺さって、向こうが勝手に楽しんでくれている。
これはかなりいい。
「そうやねんな。」
社長は続ける。
「アフターで勧めてもらってるのに。」
「なんか俺ら勝手に楽しんで。」
「それぞれ楽しかったから。」
「あれは、放し飼いとしたらちょうど良かったな。」
博子は、そこで笑いながら言う。
「でしょ。」
「私は全部ついていけないですから。」
「こうやって勝手に楽しんでもらえる球を渡しとくの、結構大事なんですよ。」
「それやな。」
そう言いながら、また芋焼酎のソーダ割りが進む。
さきちゃんもアルカちゃんも、その話を横で聞きながら、
「ああ、博子ちゃんの球って、こうやって後から効くんやな」と少し感じている。
その場で完結する同伴もいい。
でも、こうやって“別日に勝手に楽しんだ話”がまた戻ってきて、店で盛り上がる。
それは、かなり強い循環である。
「いろんな手、考えてくれてるな。」
社長の一人が、しみじみ言う。
博子は、そこで少し苦笑いする。
「でも、もう球ないですよ。」
「出た。」
「博子ちゃん、毎回それ言うな。」
「ほんまにないんですって。」
「いや、でもあるやんか。」
東京イキリ社長が、グラスを置きながら言う。
「まだ切ってないカードを、ちゃんと切ってくれてるあたりが偉いわ。」
その言葉は、妙に博子に刺さる。
たまたま。
苦し紛れ。
ネタ切れ寸前。
本人としてはそんな感覚でも、相手から見れば、
「まだ別の大阪を見せてくれる」
「こっちの知らない球を切ってくれる」
というふうに見えている。
それは、ありがたいことやなと思う。
「まあ。」
博子は少し笑って言う。
「今日は天満の芋焼酎で、ちょっとだけ別球です。」
「十分別球や。」
「うまいし。」
「飯もええし。」
「第三ビルの話も回収できたしな。」
そうやって、社長たちは楽しそうに飲み、
博子たちもそれに合わせて笑う。
天満の立ち飲み屋。
芋焼酎のソーダ割り。
里芋の揚げたやつ。
第三ビルの思い出話。
北海道との比較。
東京にはない大阪の雑味。
その全部が、少しずつ混ざって、
東京イキリ社長たちの大阪の夜は、またええ感じに進んでいくのだった。




