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東京イキリ社長と合流。軽く挨拶後天満の焼酎立ち飲屋に移動。社長仲間は初天満。興味深そう

「いやー、博子ちゃんに第三ビルで掘り出されてから、来るのはちょっと時間空いたけども、来たで。」

東京イキリ社長は、そう言いながら新大阪で博子たちに手を振る。

その横には、いつものように社長仲間が二人。

三人とも、移動の疲れは多少あるものの、それ以上に「今日は何があるんやろうな」という

期待の方が見えている。

博子は、そこに少し申し訳なさそうな顔を作って返す。

「いやいや、すいません、ちょっと放置しっぱなしで。」

「何言うてんの。」

イキリ社長が笑う。

「放置されてる間も、こっちは勝手に第三ビルとか北海道とかで遊んでるから。」

「それはそれでありがたいですけどね。」

そんなふうに軽くやり取りをしながら、まずは最寄りのホテルへ向かう流れになる。

今日は天満で芋焼酎の立ち飲み屋に行く予定やから、いったん荷物だけホテルに

置いてしまおう、という段取りである。

「今日はね。」

タクシーの中で、博子が今日の説明をする。

「天満で、社長と前に行った鶏と芋焼酎の美味しい店とはまた違う、

芋焼酎の立ち飲み屋があるんで。」

「そこ行って、ダラダラお話ししながらやろうかなと思ってるんです。」

「なるほど。」

「とりあえずホテルで荷物だけ下ろしましょう。」

「うん。」

「で、そっからまたタクで、天満の方まで行きましょう。」

すると、イキリ社長が少し笑いながら言う。

「相変わらず、あれやね。」

「下町を見せてくるね。」

その言い方に、博子もすぐ笑う。

「いやもう、東京のキラキラしてるところは、社長たち見慣れてるでしょうと。」

「まあ、確かにな。」

社長仲間の一人も頷く。

「むしろ下町見たいから来てるところまであるからな。」

「でしょう。」

そうやって話しながら、タクシーはホテルへ着く。

荷物を置いて、また軽く整えて、今度は天満へ向かう。

天満自体は、東京イキリ社長に関しては一回紹介している。

せやから、「うわ初めてや」みたいな驚きはそこまでない。

でも、横の二人にとってはまだ十分新鮮やった。

「あ、これがあの三円日本酒のところか。」

「そうそう。」

「これがマグロ三円のところ?」

「その辺です。」

そんなふうに、商店街の雑多な熱気と値段のバグった看板を見て、

二人の社長はちょっと面白そうにきょろきょろする。

東京の整いすぎた飲み屋街とは違う、

この“ちょっと雑で、でも活気がある感じ”が、やっぱり大阪の一つの球なんやなと思う。

で、商店街を少し抜けたところに、こぢんまりとやってる立ち飲み屋があるのでございました。

大きくはない。でも、そこがええ。

六人で入るとちょうど半分埋まるぐらいのサイズ感で、

店に入った瞬間に、焼酎と出汁とちょっとした油の匂いが混ざった、ええ空気がある。

「ここです。」

「おお。」

「なるほどね。」

店のスタイルもまたちょっとおもしろい。

後ろの棚に焼酎がずらっと並んでいて、それを見ながら「これがええかな」

「いやこっちもありやな」みたいに選んでいく形である。

店員が全部主導してくるというより、客側がちょっと混ざりながら遊べる感じがある。

女の子三人で、まずはそこで軽く仕分ける。

「これどう?」

「いや、こっちの方が飲みやすいかも。」

「社長は芋の香り強い方いけます?」

そんなふうに、わきあいあいと相談しながら、それぞれ自分のついてる社長のところに

戻っていって、「これおすすめですよ」とソーダ割りを提案するというスタンスである。

「これまた新しい感じやな。」

イキリ社長が、グラスを受け取りながら言う。

「でしょう。」

博子も頷く。

「ややお客さん任せにしてるところが、逆にええんちゃいます?」

「なるほどね。」

「その代わり、料理作るとか、そういうのに全振りできますしね。」

東京イキリ社長が、店の動きを見ながら感心する。

「まあまあまあ。」

「なんだろうな。」

「スタイリッシュな感じというか。」

「前の、鶏と焼酎の店に比べたら、ちょっと下町感があるけども。」

「これはこれでありやな。」

その言い方に、博子も少しほっとする。

今日は“キレイに整えすぎない夜”を作りたかった。

だから、天満の雑味と、この店のちょっと客に委ねる感じが、ちょうどよく効いている。

で、メニューを見ながら、もうそこで一気にトントントンと頼んでいく。

「特にここ。」

ヒロコが少し身を乗り出して言う。

「里芋の煮っころがしの揚げたやつ、めっちゃうまいんで。」

「それ、いこうか。」

「はい。」

「あと、チキン南蛮。」

「うん。」

「もう一つなんか刺身頼んどこうか。」

「そうですね。」

「あと、軽くつまめるやつ何個か。」

そんな感じで、注文がどんどん進む。

立ち飲みやのに、飯がちゃんとしてる。

しかも、焼酎のソーダ割りが進む感じの味ばっかりで、自然と箸も酒も動く。

社長たちも、最初の一口を飲んだところで、もうだいぶ顔がやわらぐ。

「いや、これええな。」

「うまい。」

「なんか、今日もまた別の大阪やな。」

「そういうことです。」

博子が笑う。

第三ビルでもない。

北海道でもない。

北新地でもない。

でも、ちゃんと“来た甲斐がある”と思わせる球になっている。

その手応えを感じながら、博子たちは天満の立ち飲み屋で、また新しい夜を

ゆるゆると始めるのだった。

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