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九月に二週目土曜日。東京イキリ社長の座組。社長陣は道中ウッキウキ。一方の博子達は座組でパツパツ。ここが正念場と踏ん張る

九月二週目の土曜日。

今日は、博子、アルカちゃん、さきちゃんで、東京イキリ社長を迎え入れる日やった。

向こうは向こうで、東京駅からまた友達の社長さん二人と一緒に大阪へ向かっている。

三人組で来る、というところがもうこの人ららしい。

一人でしみじみ来る日もあれば、こうやって仲のいい社長同士でわいわい来る日もある。

そのへんの遊び方の幅が、やっぱり東京の人たちらしいなあと博子は思っている。

で、その東京イキリ社長の方も、新幹線の中で結構ご機嫌やった。

「いやあ、最近やっぱ楽しいな。」

そんなことをぽろっと言う。

この前は北海道に行った。

で、大阪に来た時には、博子たちに接待みたいな形で回してもらった次の日に、

第三ビルとかの“魔境”に彫り込まれて、また別の意味で結構楽しい思いをした。

そういうのが、全部バラバラに楽しいのではなくて、ちゃんと別の球として

自分の中に積み上がってきてる感じがある。

「大阪は大阪の良さがあったけど。」

「北海道は北海道の良さがあったな。」

そんなふうに比較しながら、社長三人で新幹線の中でだらだら喋っている。

大人のおっさん三人が、コーヒーだの酒だの片手に、

大阪の話、札幌の話、夜遊びの話、飯の話をしているというのは、

端から見たらしょうもない光景かもしれへんけど、本人たちにとってはかなり充実した時間である。

「なんかこうやって考えるとさ。」

イキリ社長が、窓の外を見ながら言う。

「もうええ歳になってきたけど。」

「まだまだ楽しいこと転がってるよな。」

それに、横の社長も笑いながら頷く。

「ほんまやな。」

「若い時の遊び方と違って、今の方がなんか球が多い気するわ。」

「そうそう。」

「結局、金だけ使うんやなくて、どう使うかやな。」

そんなことを話しながら、

今度大阪に行ったら何の球があるかな、という話になる。

第三ビルのこともまだちゃんと深掘れてへん。

北海道の札幌の話も、まだ博子にしてへん。

そのへんを、また丁寧に博子ちゃんと話しながらやるんや、ということを言い合って、

新大阪へ向かうのだった。

一方の博子たち。

こちらは、こちらで、ちょっと違う意味で現実的な空気がある。

東京イキリ社長たちを迎えるのはええ。

回すのも嫌いじゃない。

でも、座組との関係で結構パツパツになってきてるのも事実で、

「そろそろネタなくなってきたな」という感覚も、正直ちょっとある。

だから、今日は変に大技を狙わず、晩ご飯は天満の立ち飲みスタイルで、

焼酎の美味しいスタンドバーにしようという流れになっている。

あそこやったら空気も軽いし、三人組の社長たちも入りやすい。

しかも、東京のキラキラとはちょっと違う、大阪の雑味みたいなものもちゃんとある。

そういう店の方が、今日はむしろ合う。

ただ、次の日の話は、まだちょっと決まってない。

そこが博子としては気になっている。

「なあ。」

新大阪に向かう前に、博子がアルカちゃんとさきちゃんに言う。

「今日の晩はまあええとして。」

「明日どうするか、まだちょっと決まってないな。」

アルカちゃんが苦笑いする。

「出た。」

「博子ちゃん、またネタ不足言うてる。」

「いや、だって。」

博子も笑う。

「ほんまにパツパツやねんもん。」

さきちゃんも、そこはわりと真面目に頷く。

「でもまあ、ここでちょっと一区切りつくやん。」

「そうやねん。」

「やから今日頑張ろ。」

博子は、そこで自分に言い聞かせるみたいに言う。

「ここ抜けたら、またちょっと考えれるし。」

「次の日は、もう喋りながら作るしかないかなって感じやけど。」

「まあ、そのへんは三人おるしな。」

「そうそう。」

「なんとかなるやろ。」

そんなふうに、半分本音、半分気合いみたいな感じで話しながら、

博子、アルカちゃん、さきちゃんの三人は、新大阪へお出迎えに向かうのでございました。

新大阪のホームに着く頃には、三人とももう“仕事の顔”になっている。

さっきまで「ネタないな」「パツパツやな」と言ってたくせに、

いざ迎える段になると、それなりにちゃんと整う。

そこが、この三人の強いところでもある。

「来たかな。」

「そろそろやな。」

「今日は天満やから、変に背伸びせんでええし。」

「その方が、向こうも楽やと思う。」

「で、あとは第三ビルの話とか、北海道の話をちゃんと拾って。」

「それで夜持たせる感じかな。」

「そういうこと。」

そんなふうに最終確認をしていると、

東京イキリ社長たちが、新幹線から降りてくるのが見える。

「お待ちしてましたー。」

博子が、少し明るめの声で手を挙げると、

向こうもすぐに笑って近づいてくる。

「いやあ、来たで。」

「今日もよろしくな。」

「よろしくお願いします。」

そうやって、また一つ、新しい大阪の夜が始まるのやった。

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