金曜日。麻雀同伴後のキャバクラ店内。まったりした時間が流れながらも仕事の連携の心配をする博子を税理士先生が一蹴。もっと長期で見るんやで関西は
お店に戻ってからも、税理士先生たちとだらだら喋る時間が続くのだった。
麻雀同伴が思ったよりきれいに回ったという手応えが、みんなの中にある。
せやから、店に戻ってからの空気も悪くない。
むしろ、ちょっとした達成感があって、そこから先の話がしやすい感じになっている。
博子が、まずそこを素直に言う。
「言うたら、これで先生方の件で二本、座組が回ると。」
「私らからしたら、すごい嬉しいですし。」
「うん。」
「来月、麻雀で女の子たちも入ってくればですね。」
「言うたら、四人とも喜びます。」
税理士先生も保険会社の人も、そこは素直に頷く。
「そらそうやな。」
「女の子側も、こういう企画ある方がやりやすいやろ。」
「そうなんです。」
博子は、そのまま少し先のルールの話も出す。
「あと、総当たり戦のところの点数は。」
「結局、馬をつけるとかじゃなくて。」
「うん。」
「東南西回して、で、合計点。」
「言うたら、先生と私、アルカちゃんと保険会社の人でやるみたいな。」
「チームの合計得点で、勝った負けたでええかなと思ってます。」
すると税理士先生が、すぐに反応する。
「まあ、確かにそうやな。」
博子も続ける。
「馬つけて計算したら面倒くさいでしょ。」
「それは面倒や。」
「で、それをメモで取っといて。」
「三勝一敗とか、諸々つけて。」
「最後、一位と二位、三位と四位で決勝戦して。」
「そこで順位つけて、っていう感じでいいんじゃないですかね。」
保険会社の人も、ボトルの焼酎を飲みながら頷く。
「それぐらいでええと思うわ。」
「ルールを正確にしすぎる必要もないしな。」
「そうなんですよ。」
博子が笑う。
「遊ぶのが目的やから。」
そんなふうに、麻雀企画が一つの形になりそうや、という空気で話してると、
博子がふと、もう一個のことを口にする。
「で、こうやって二つ座組が回ると。」
「個人的には、先生たちの懐具合というか。」
「なんかこれきっかけで、四人が仲良くなって。」
「お仕事が一つでも二つでも、たくさん決まればなと思ってますけども。」
その言い方に、税理士先生がすぐに笑いながら首を振る。
「いやいや、博子ちゃん。」
「はい。」
「ちょっとまだまだ早いで。」
「え、そうなんですか。」
「そうや。」
先生は、そこで少し腰を落ち着けて喋る。
「最初の一件二件はな、こうやってやっていくと決まるけども。」
「やっぱりな、関西の社長や個人事業主連中って。」
「結構、長いスパンで付き合うから。」
「なるほど。」
「東京とかやったらさ。」
「すぐ契約契約、みたいな感じやけど。」
「関西は、結構ぬるっとやってて。」
「で、ゴシップもさ、結構たくさん集まってきたり。」
「もうマジ長期戦なんよ。」
博子は、そこで少しはっとした顔になる。
「なるほど。」
税理士先生は、そのまま続ける。
「だから、本来の目的はたしかに仲良くなるやけども。」
「マジで、どうでもいい話から、夜のゴシップまで喋れるぐらいになってくと。」
「“こういうのが面白いな”ってなってくるから。」
「あんまり利益を先に積むってことを、別にする必要がないのよ。」
その言い方に、博子はすぐ頭を下げて笑う。
「あ、失礼しました。」「なんか、どうしたって単発で考えるのが、キャバ嬢チックでしたね。」
「そうやで。」
税理士先生も笑う。
「ヒロコちゃんたちも、長い目で見な。」
「はい。」
「とりあえず一年はなんとかするのか、って感じやろ?」
「一年とは言わず。」
博子は、そこを少しだけ言い直す。
「まあまあ、とりあえず三ヶ月四ヶ月ぐらいは、ちょっと続けようや、って感じですね。」
「そうそう。」
「で、その間に女の子たちが辞めたら。」
「女の子たちはチェンジするだけやけども。」
それを聞いて、博子も少し笑う。
「いやまあ、少なくとも私は辞めないっていう感じですかね。」
「今、座組四つ持たせてもらってて。」
「元々、三月からちょっとずつお客さん増えてきて。」
「今パンパンですけども。」
「これを一年間、じっくり回すっていうのが次の目標かなと思ってるんです。」
「売り上げベースじゃなくてね。」
税理士先生は、そこをちょっと面白そうに見る。
「で、今やったらカレンちゃんが一番下やから。」
「その辺の様子を横目で見ながらやってますけども。」
「諸々のトラブルとかを抱えながら。」
「うまくいった時、いかんかった時を見直しながら。」
「一年回して。」
「で、私だって話題の種がなくなるっていうのを結構経験してるんで。」
「その種がなくなっても、なんとかうまい具合に回していく。」
「それを一年やった先に何があるか、を見るのが今の当面の目標です。」
税理士先生は、それを聞いて少ししみじみした顔になる。
「ヒロコちゃんは、なかなか長期スパンで見てるな。」
「そういうのがな。」
「わしらとちょっと気が合うところやと思うで。」
その一言に、博子も少し照れたように笑う。
「ありがとうございます。」
「だから、そこら辺が。」
税理士先生は、そのまま店の卓の空気を指すように言う。
「焦ってないし。」
「それでドリンクがどうのこうのとか、シャンパンがどうのこうのってならへんから。」
「こっちも結構、その、キャバクラというか。」「ラウンジ感覚でさ。」
「こうやって会話させてもらってるから。」
「この感じの空気感を、マジ壊さんといて欲しいな。」
その言葉に、博子はちゃんと頷く。
「そこはほんまにそうですね。」
「今の空気が一番大事なんやろなと思います。」
「そうや。」
そうやって、焦らず、壊さず、長い目で、という話をしながら、二セットほど
だらだら喋るのだった。
麻雀同伴がうまくいった安心感もある。
でも、それ以上に、こういう座組の空気をどう育てるか、という話がちゃんとできたことが、
博子には少し嬉しかったのだった。




