九月二週目水曜日。おじいちゃんと同伴の日。ハマチのカマ焼きの旨い店を予約。昨日の薬品会社社長からお手当の話ももらう
九月二週目の水曜日。
今日は、おじいちゃんと同伴の日や。
博子は、朝から特にバタバタするでもなく、昼ぐらいまではごろごろしていた。
さすがに金土日月火と流れてきて、水曜まで来ると、身体の方も「ちょっと一回緩めろや」と
言ってくる。だから、今日は午前中から無理に動かない。
布団の中でだらだらしながら、今日はおじいちゃんと何食べようかな、ということをぼんやり考える。
「そうやな。」「今日は、はまちのかま焼きでも食うかな。」
そういうことで、常連の店のうちの一つを選ぶ。
新規開拓を頑張る日でもないし、おじいちゃん相手やったら、ある程度慣れてる店の方がええ。
こっちも段取りが楽やし、おじいちゃんも“いつものええ店”として受け取りやすい。
そういう意味で、今日はスムーズさ優先である。
で、そうやってごろごろしてたら、火曜日の薬品会社の社長の方から連絡が来た。
昨日のウイスキー工場と、その後の小料理屋と、店の三セット。
その全体を踏まえて、お手当ての話である。
「昨日のやつやけど。」
「はい。」
「ウイスキー工場と同伴、同伴というかその後のお店の三セット考えたら。」
「ざっくり一人十万かなと思ってる。」
博子は、その文面を見ながら、まあそんなもんかなと思う。
正直、相場感としては妥当やし、向こうもちゃんと意味をわかって出してきてる感じがある。
でも、その次の文面で少しだけ目を止める。
「博子ちゃんが、言うたら座組を考えてくれたから五万足して。」
「他の子は十万、博子ちゃん十五万で考えてる。」
「お。」
博子は、そこで少しだけ考える。
ありがたい。普通にありがたい。
でも、そのまま十五万を受けると、ちょっとだけ角が立つ気もする。
昨日の流れやと、女の子たちもちゃんと動いてるし、
あんまり“博子だけ突出してます”の形が続くと、あとでややこしくなる。
せやから、博子はそこで少しだけ調整を入れることにする。
「ありがとうございます。」
「でも、十五万やったらちょっと角が立つから。」
「十二万にしてください。」
そう返す。で、そこで終わらへんのが博子である。
さらに一言添える。
「もし、お値引きの三万円分を握りしめて。」「同伴指名をワンセットしてくれたら。」
「打ち合わせが足りない時にやってくれたら、私としてはそっちの方が嬉しいですし。」
「角も立たないから。」
その返しをすると、向こうからもすぐに反応が返ってくる。
「博子ちゃん、なんかその辺のバランスもちゃんと見てるな。」
「おっしゃ、じゃあ一回どっかのタイミングで予約出勤するから。」
「またよろしくね。」
「ありがとうございます。」
そういう感じで、うまい具合に回るのだった。
お金だけで終わらせず、次の動線にも変えておく。
店にも角が立ちにくい。自分の立ち位置も変に浮かへん。
そういう意味で、なかなか綺麗に着地したなと、博子は思う。
で、そのあと、そのざっくりした相場感みたいなものを女性陣にも共有する。
「昨日のやつ。」
「うん。」
「だいたいこんな感じで返ってきたわ。」
すると、アルカちゃんやさきちゃんたちも、すぐに反応する。
「いや、半日ぐらいでこんだけ稼がせてもらえるの、ありがたいわ。」
「ほんまそれ。」
「普通に夢あるやん。」
カレンちゃんも、ちょっと驚いたように言う。
「やっぱり、ちゃんと回る会って強いんですね。」
「強いよ。」
博子も頷く。
「やから、またなんかこう、座組あったら私たちも混ぜてくださいねって話になるわけ。」
「そらそうやな。」
「で、とりあえず。」
博子は、その流れで次の予定にも軽く触れる。
「十月の一週目に、伏見の酒蔵行くっていう予定で考えとこう。」
「おお。」
「ええやん。」
「次も楽しみやな。」
そんな話で落ち着くのだった。
そうやってガチャガチャやってるうちに、
だんだんとおじいちゃんとの夕方の同伴の時間が近づいてくる。
今日は、おじいちゃん相手やから、また少し空気が違う。
薬品会社の社長たちみたいな“広げる日”でもなく、
東京の社長みたいな“整える日”とも少し違う。
もっと、しみじみした感じで、
でもちゃんと楽しませる日である。
待ち合わせ場所へ行くと、おじいちゃんは相変わらず少し機嫌よう立っている。
「おう。」
「こんばんは。」
「今日は、ええ店あるんやろな。」
「ありますよ。」
博子も笑う。
「今日は、はまちのかま焼きです。」
「おお。」「それはええな。」
そうやって軽く挨拶をして、そのまま店に向かう。
今日はもう、言うたら常連の店のうちの一つを選んでるので、こっちも流れがスムーズである。
店までの導線も、席の感じも、頼むもんも、だいたい頭に入っている。
こういう日は、変に背伸びせんでええ。
その分、おじいちゃんとの会話に集中できる。
水曜の夕方。
前半は薬品会社の社長との連絡で、また一つ綺麗に回って、
後半はおじいちゃんとの同伴へ滑り込んでいく。
そんなふうに、今週もまた、博子はうまい具合に流れを繋ぎながら、
常連の店へと向かうのだった。




