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薬品会社社長達が帰宅。いい流れの中次の約束もできた。裏で黒服に呼ばれ時給千円アップ。きちんと評価されて嬉しい

三セット目に入って、酒も料理もだいぶ落ち着いた頃、自然と

「じゃあ今度どうします?」という話になる。

今日ここまで綺麗に流れたら、そら次の話も出る。

しかも、今日は一回の遠足として終わった感じやなくて、

「これをどう次に繋げるか」まで含めて、みんなもう半分その気になっている。

「一か月後っていうのは、ちょっと遅いかもしれんしな。」

社長の一人が、そう言う。

「三週間後ぐらいに、またやりますか。」

「それぐらいがええかもですね。」

博子も頷く。

「今度は伏見の酒蔵見学ってことで、やります?」

すると、向こうもすぐに食いつく。

「あ、酒蔵見学したいな。」

「でしょ。」

「ちょっと、いろんな球仕込んどいてよ。」

その言い方に、博子は少し苦笑いする。

博子は、そこでちょっと現実的なことも混ぜる。

「仕込む時に、打ち合わせに行くとかしないといけないじゃないですか。」

「その辺のところが、今ちょっとバタバタで動けないんで。」

「なるほど。」

「とりあえず今は。」

博子は、指で軽く数えるように言う。

「ウイスキーと酒蔵と。」

「あと、同伴の時に使う、その九百八十円の日本酒飲み比べのところ。」

「おお。」

「そこはスムーズにいってるんで。」

「その辺からですかね。」

「なるほどな。」

社長たちも、そこは無理に大風呂敷を広げずに聞いてくれる。

むしろ、もう十分玉があることは今日でわかってるから、

“今すぐ全部見せろ”みたいな感じではない。

そこがまた、ええ意味で大人である。

「ほな、まあ、とりあえずそれで。」

「はい。」

「で、今日、色々遊んでくれたから。」

社長の一人が、そこでわりと軽く言う。

「その分のお手当も、ちゃんとあとで皆にフィードバックするし。」

「ありがとうございます。」

博子も、そこは素直に頭を下げる。

女の子たちも、こういうのはやっぱりありがたい。

山崎行って、小料理屋行って、店まで戻して、

しかも次もあるかもしれんとなったら、

そらちゃんと返してもらえる方が嬉しいに決まっている。

そういう話も混ぜながら、

三セット目はわりとゆっくり、まったり進んでいくのだった。

外で大人の遠足して、

ウイスキー工場行って、

日本酒飲んで、

店に戻って、

ちょっと下世話な話もして、

次の酒蔵見学の話まで出た。

ここまで来たら、社長たちの満足度はかなり高い。

派手に騒いだわけではない。

でも、全体としてちゃんと線になっていて、

“今日は一日使った甲斐があったな”という顔をしている。

結局、社長たちはそのまま、気分よく三セット目を過ごして帰宅する流れになった。

で、そうこうして、帰る準備やら、最後ちょっとまったり喋ってる時に、

博子が奥で呼ばれる。

「博子ちゃん。」

「はい。」

黒服さんである。今日は顔が妙にええ。そらそうである。

「今回。」「百年の孤独と、森伊蔵、下ろしてくれたし。」

「はい。」

「時給千円アップね。」

「え。」

ヒロコは、そこでちょっとだけ目を丸くする。

こういうのは、軽く言われても、やっぱり嬉しい。

「ありがとうございます。」

「いや、だって。」

黒服さんは、わりと率直に言う。

「ちゃんとお店まで戻してくれて。」「しかも、満足度も高くて。」

「で、次もあるでしょ。」

「入りました。」

博子は、そこはもうすぐ返す。

「また外で遊んでから、同伴して、店に来るっていうところまでの流れ、作ってますんで。」

「やろ。」

黒服さんも頷く。

「そういう意味で。」

「言うたら、この座組も含めて、いくつか回してるみたいやけども。」

「はい。」

「そっちも頑張ってよ。」

「わかりました。」

ただ、黒服さんはそこで終わらない。

店側として見てるポイントも、ちゃんとある。

「で、できれば。」「店のことも考えて。」

「セット数とか落とす仕組みみたいなのを、ちゃんとこう見といてくれたら。」

「こっちとしても別に言うことないから。」

その言い方は、わりと本音である。

外遊びがどうとか、座組がどうとかもええ。

でも、結局店にどう戻るか。

それが見えてるから、今日みたいな評価になる。

博子は、そこで少し考えてから返す。

「わかりました。」「できる限り頑張りますけども。」

「どっちかというと、その、落とすっていうよりも。」

「継続、次に繋げられるように。」

「一個一個、ちょっと丁寧にやっていきますわ。」

黒服さんは、その返しにわりと納得したように頷く。

「まあ、そこら辺は任せるわ。」

「ありがとうございます。」

「今日はほんま、ようやってくれたわ。」

そう言われると、博子としても、今日はちゃんと店にも返せたんやな、という実感がある。

外で回して、

店に戻して、

女の子の顔も立てて、

社長たちの満足度も高くて、

次にも繋がった。

その上で、時給まで上がる。

そら、悪くない日である。

「ほな、お疲れさまです。」

「おつかれ。」

そうやって黒服さんと別れて、博子は帰宅の途につくのでございました。

今日も長かった。

山崎から西中島、そこから店。

気も使ったし、段取りもしたし、喋りもした。

でも、その分だけちゃんと手応えもある。

帰り道、少しだけ肩の力が抜ける。

時給千円アップ、という言葉も地味に効いている。

ありがたいなと思うし、

その分また、ちゃんと回さなあかんなとも思う。

座組も増えてきた。

玉もまだある。

でも、全部を一気に出す必要はない。

一個一個丁寧にやって、

次に繋げて、

店にも戻して、

その中で自分も潰れんようにする。

そういうことをぼんやり考えながら、

博子は夜の帰り道を、少しだけ軽い足取りで帰るのだった。

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