西中島の小料理屋で別の座組の可能性も探る。博子なしでも設計できるし是非是非お試しください(笑)
「ねえ。」
日本酒をちびちびやりながら、社長の一人が、ふと思いついたみたいに言う。
「俺らの組み合わせ以外でも。」
「うん。」
「なんかこう、また座組みたいなのあったら回してくれんの?」
その問いに、博子は少しだけ笑う。
これは、わりと嬉しい聞かれ方である。
今日のこの流れが、ただ一回楽しかっただけやなくて、
“他にも応用できるんちゃうか”という目で見られている、ということやからである。
「私はもちろん、回したいところですけども。」
「私、パンパンです。」
それを聞いて、社長たちが笑う。
「出た。」
「相変わらずパンパンやな。」
「でも。」
博子は、そのまま女の子たちの方に軽く視線を流す。
「他の三人も、多分、私のことめっちゃ見てるから。」
「そつなく回せると思うんですけどね。」
すると、アルカちゃんがすぐに反応する。
「いやいや。」
「博子ちゃん、私らに荷が重いって。」
さきちゃんも、ちょっと笑いながら続く。
「いきなりそんな高い評価されても困るって。」
社長たちは、そのやり取りを見てまた少しおもしろそうに笑う。
「でも、もしね。」
博子は、そこをさらっと拾い直す。
「社長さんたちが言うてくれたら。」
「店の候補とかはちゃんと送るし。」
「おお。」
「予約して、ある程度ちょっと擦り合わせてやるだけやから。」
「なるほど。」
「こんなんって、どうしても経験がものを言うからさ。」
博子は、日本酒をひと口飲んでから続ける。
「やればやるほど慣れてくるやん。」
「それはそうやな。」
「私だけ今、経験値がバカバカ溜まってるから。」「なんか、そつなく動いてるように見えるけど。」
「うん。」
「この三人やったら、やっていけるって。」
それを聞いて、女の子たちが少しだけ照れながらも、本気でまんざらでもない顔になる。
「ほんまっすか?」
カレンちゃんが素直にそう言うと、社長たちもそこを面白がる。
「いや、でも。」「今のところ、この座組で回ろうとは思ってるけども。」
「そういうのもできるようになったら、幅広がるもんな。」
「そうなんですよ。」
博子も頷く。
「なんかね。」
社長が少し真面目な顔になる。
「お客さん来た時の対応とかで使える店ってなかなかないし。」
「店というか、回せる女の子っていうのが、やっぱりなかなかおらんから。」
「それはありますね。」
「その辺は、地味に重宝されると思うな。」
博子は、その言い方に少しだけ嬉しそうに笑う。
「めっちゃ数があるわけじゃないしな。」
別の社長もすぐに続ける。
「軽く飲む、みたいな感じで。」
「そん時とかに、またお願いしたいわ。」
そう言われると、博子はそこをちゃんと受け取る。
「いや、本当、いろいろ言うてくれてありがとうございます。」
「ま、店ともどもお願いします、ですけども。」
「別に、そんな店に長時間いてくれっていう話でもないですし。」
「なるほど。」
「その辺は、お手当で調整していただけたら。」
その言い方に、社長の一人が思わず笑う。
「博子ちゃん、悪いな。」
「悪いって言いながら、ちゃんと整理してくるやん。」
博子も笑う。
「そこはちゃんとしとかんと。」
「そらそうや。」
「で、私らとしては。」
アルカちゃんが少しだけ勇気を出して入る。
「そういう場で使ってもらえるんやったら、普通にありがたいです。」
「ちゃんとしてるな。」
「いや、でもほんまに。」
さきちゃんも頷く。
「こういうので声かけてもらえるって、結構大きいんで。」
「そうやな。」
「店でフリー待ってるだけとは、全然ちゃうもんな。」
「そうなんですよ。」
カレンちゃんも、ここはだいぶ本音っぽく言う。
「私、まだまだですけど。」「こういう流れ、勉強になりますし。」
「でしょ。」
博子が笑う。
「だから、やりながら覚えるのが一番なんよ。」
そんなふうに話してると、箸は進むし、酒は進む。
誰かが気の利いたことを言えば、誰かが笑って、
誰かが現実的なことを言えば、別の誰かがそこに乗る。
今日のこの八人は、最初の山崎で少し大人っぽくまとまって、
この小料理屋でちょうどよくほぐれている。
社長がまた言う。
「こういうの、ほんまに助かると思うわ。」
「ただ飲むだけやなくて、ちゃんと“回る”感じあるもんな。」
「ありがとうございます。」
「しかも、博子ちゃんおらん時でも、いけるかもしれんって見えるのがええ。」
そこまで言われると、博子はさすがに少し照れる。
「いや、でも、まだそこはこれからですよ。」
「やけど、そういう方向性が見えるだけでも十分や。」
「それはそうですね。」
「ほんまに、店ともどもお願いしますやな。」
「お願いします。」
そうやって、新しい座組の可能性だの、
他の組み合わせでも回せるかだの、
軽く飲む会にも使えるかだの、
そんな話をしながら、閉店の七時頃まで、結構しっかり盛り上がるのだった。
山崎から流れてきて、西中島の小料理屋で酒と料理を進めながら、
“次もあるかもしれん”という話で自然にまとまっていく。
それだけでも、今日のこの会はかなり成功やなと、博子は思うのだった。




