西中島の小料理屋でしっかり設計された時間を味わう。動線の小気味よさを誉める社長。座組自体は月1でも細かな打ち合わせを話す博子。偶然の産物ではない旨伝えるwww
とりあえず西中島の小料理屋に着くと、社長たちがまず最初に反応したのは、店そのものよりも、
その隣のアパホテルやった。
「うわ、隣アパホテルやん。」
「そうなんですよ。」
「これ、いつでもあれやな。」
「何ですか。」
「すぐ寝れるスタイルやな。」
その言い方に、女の子たちも少し笑う。
「さすがやな。」
「出張族の町やな。」
そういうふうに言いながらも、博子はすぐに話を店の方へ戻す。
「でもね。」「西中島でも、やっぱりちょっと選ばんと難しいんですよ。」
「ほう。」
「梅田に比べたら、美味しい店は多分あるんです。」
「特にね、焼肉屋さん結構多いんです。」
「たしかに。」
「でも。」
博子は、店の暖簾をくぐりながら少し声を落とす。
「ここの小料理屋さんは、夜の七時までしかやってないけども。」「料理丁寧やし。」
「言うたら半個室みたいな形で。」「二階が十席ぐらいなんで。」
「ほう。」
「今日のこれぐらいの面子で、スポッと入れたら、結構いい塩梅なんですよ。」
それを聞きながら、社長たちも、店の狭すぎず広すぎずの感じを見て、なるほどなという顔をする。
完全個室みたいな堅さはない。でも、八人で固まれる。
この“ちょうどよさ”が、今日の流れにはよく合っている。
席について、ひと息つくと、博子がまず飲み物の流れを作る。
「一杯目、とりあえず皆さん。」「ビールかなんかにしますか?」
「それとも、ここ日本酒の品揃え結構いいんで。」
「その辺ちょっと見てもらいながらね、ちびちびやるのもありやと思いますよ。」
そう言って日本酒のメニューを広げると、すぐに反応が返ってくる。
「あ、田酒あるやん。」
「ほんまや。」
「北島は結構押してんねんね。」
博子が、そこで少し嬉しそうに笑う。
「そうなんですよ。」「ここ結構、日本酒強いんです。」
「へえ。」
「ちょっと辛口が多いんですけども。」
「それはそれでええな。」
「何個か、一合でもらって。」
「ちびちびやるのもありだと思いますよ。」
そんな感じで話をしながら、純米大吟醸のええやつを何種類か頼む流れになる。
ただ、最初の乾杯だけはわかりやすく行く。
「とりあえず乾杯は、瓶ビールかな。」
「それがええな。」
「はい。」
そういうことで、瓶ビールが運ばれてきて、みんなでつぎ合いをして乾杯する。
「おつかれさまです。」
「今日はありがとうございます。」
「かんぱーい。」
最初の一口を飲んだところで、社長の一人が、わりと素直にしみじみ言う。
「ほんまに、今日の一日の流れがスムーズすぎてええわ。」
「ありがとうございます。」
「サントリーの工場も良かったし。」
「ここまでの動線も良かったから。」
「ここだけでも、まだ完成度高いよな。」
別の社長も頷く。
「なんか、そつがないっていうのがええよな。」
その言い方に、博子はちょっとだけ照れる。
「いやいや。」
「でも、そら。」
社長が少し笑う。
「ウチ入れて四組座組回してるだけあるわ。」
「そんなことないですよ。」
博子は、そこでちゃんと他の女の子たちにも花を持たせる。
「なんやかんや、あれですよ。」
「私だけじゃなくて、女の子たちみんな、それなりに漏れがないように動いてるからですよ。」
「なるほど。」
「だから、チームで動く意味ってやっぱりあるんですよね。」
その言い方に、アルカちゃんたちも少しだけ照れながら笑う。
「いやいや。」「私はただただ、博子ちゃんの大きい船に乗ってるだけですから。」
「船って。」
「でも、ほんまに。」
さきちゃんも軽く笑う。
「博子ちゃんが回してくれてるから、私らが楽できてるとこもあるし。」
「そんなことないって。」
そんなふうに、お互いちょっとずつ謙遜しながらも、空気はだいぶいい。
誰かが前に出すぎるでもない。
でも、誰も引きすぎもしない。
こういうところが、今日の座組の気持ちよさやなと博子も思う。
で、料理がまたちゃんとええ。
出し巻き卵。
海鮮の盛り合わせ。
揚げ物。
どれも、一品一品が派手ではないけど丁寧で、うまい。
日本酒をちびちびやる流れともよく合う。
「これ、ええな。」
「うまい。」
「こういう店、なんか安心するわ。」
社長たちがそう言いながら箸を進める。
ただ“高い店に来ました”の満足ではない。
値段と空気と味のバランスが良くて、結果として“また来たい”になる感じ。
それがちゃんと出ている。
「これはやっぱり。」
一人の社長が、少し頷きながら言う。
「定期的に何かやりたくなる人の気持ちがわかるわ。」
「でしょ。」
博子も笑う。
「やっぱり。」
別の社長が続ける。
「まだまだ玉はあるんやろ?」
そこを聞かれて、博子はあっさり答える。
「いや、めちゃめちゃあります。」
「おお。」
「だからこれ、どれくらいの頻度でやるかにもよるんですよね。」
「なるほど。」
「だいたい月一ぐらいでやってるんですけど、各座組、元々。」
「元々。」
「で、言うたら。」
博子は、日本酒の猪口を置いて少し説明する。
「私の指名いただいてる代表の社長さんたちとか、先生方が。」
「ちょっと多めに来てもらって。」
「打ち合わせみたいな形でやったりするんですけどね。」
「なるほどなあ。」
社長たちは、その話を聞いてまた少し感心する。
つまり、これは単発のイベントではない。
ちゃんと“継続する前提”で、裏で微調整と打ち合わせが入っている。
そのへんまで見えてくると、今日の完成度の理由も少しわかる。
「やっぱり、こういうの。」
「ただ飲んでるだけじゃなくて、ちょっとずつちゃんと設計されてるんやな。」
「そこはまあ、仕事ですから。」
博子がそう言うと、またみんな少し笑う。
日本酒をちびちびやりながら、
料理をつまみながら、
店の空気にも慣れてきて、
八人の流れはさらにやわらかくなっていく。
山崎のウイスキー工場から、西中島の小料理屋へ。
その流れだけでも、もう十分一本の線になっている。
でも博子の中では、これはまだ一回目でしかない。
まだ見せてない玉もある。
まだ行ってない店もある。
まだ混ぜてない遊び方もある。
そういうことを、わりと軽く言いながら、
でもちゃんと“また次があるかもな”と思わせる空気で回していく。
そういう火曜日の夜の、小料理屋での時間やった。




