7月4週目水曜日、東京イキリ社長の動き。博子達に言われて銀座で遊んでみるとあまりの違いに衝撃。痛い客扱いされへこんで帰り博子に連絡するwww
水曜日。実は東京のイキり社長は、その日の晩、前回大阪で一緒に遊びに行った
社長二人と飲みに行っていた。土日の大阪京都が終わってから、三人ともずっと余韻が残っていて、
あれやっぱり楽しかったな、という話ばっかりしていたからである。
せっかく二日間も丁寧に回してもらったんやし、銀座六本木でもう一回遊んでみろと
煽られたしほな今週は銀座でも行こうや、という流れになって、久しぶりに銀座へ繰り出した。
店に入ると、やっぱり扱いはいつもの感じやった。
「社長たち、いつも使ってくれる方々」みたいな空気で迎えられて、席に座るや否や、
女の子たちがやってきて、開口一番こんな感じである。
「とりあえず、なんかあけましょうよ。」
イキり社長は、その時点でちょっと引っかかった。
まだ何も喋ってへん。
乾杯の前にひと言ふた言ぐらいあってもええやろ、と。
だから少し苦笑いしながら返す。
「いや、でもな。ちょっとぐらい話してからにしてくれよ。」
すると銀座のお姉さんたちは、きょとんとした顔でこう言う。
「えー、でも社長たちって、いつもなんか陽気に開けてくれるじゃないですか。」
そこでもう、三人の社長たちは「ああ、この感じやな」と内心で同時に思った。
悪いわけやない。ただ、もう感覚が少し変わってしまっている。
大阪の二日間を味わったあとやと、どうしてもこの“開ける前提”の空気が雑に見えてしまう。
で、せっかくやからと、イキり社長が話を振る。
大阪で遊んできた話や。博子たちと遊んだ話。
あれがめちゃくちゃ気づきやったという話。
高い店でガチャガチャするんやなくて、女の子たちなりに工夫して、
外でも中でもいろいろ接待してくれたのがすごい嬉しかった、と。
今まで自分が信じてたヒエラルキーを、横からドーンと倒された感じがして、
結構快感やった、みたいな。そういう遊び方もあんねんな、新たな発見やったわ、
ということを、割と素直に喋った。
ところが、その話を聞いた銀座のお姉さんたちは、思ったより薄い反応やった。
「えー、なんでそこまでしないといけないんですか?」
「私ら、そんな外で遊ぶんやったら、やっぱりお酒とかたくさん積んでほしいし。」
「そうそう。」
三人の社長たちは、ちょっと顔を見合わせる。イキり社長が、少し食い下がるように言う。
「でもあれやで。その子ら、本当に酒なんか全然積まなくても遊んでくれたし、
めっちゃ丁寧にやってくれたで。まあ、あとでお手当てっていう形では返したけども。」
それでも、銀座のお姉さんたちは、やっぱり首をかしげる感じやった。
「えー、でもやっぱり、先にもらうもんもらっとかんと、こっちも不安やし。」
「まあ、人によるんかな、その辺は。」
その時点で、もう空気が少し違ってきていた。
大阪で受けた“丁寧に考えてくれてる感じ”と、銀座での“まず開けてくれる前提”が、
あまりにも違う。で、イキり社長はさらに聞いてみる。
「こう、ご飯食べに行く時とかって、いろいろ考えんの?」
その問いに対する返事も、なんとも正直やった。
「考えんの?いや、まあ基本的にお客様任せやし。」
「なんか高いところ連れてったろか、みたいな人が多いから、それに乗っかるとか。」
「私らから提案するとしたら、映えるところかな。」
「パンケーキ屋さんとか。」
「あと、握り寿司でも、なかなか予約取れへん店に連れてってあげるとかやったら、
結構ノリノリで行くけども。」
それを聞いて、イキり社長がぽつりと言う。
「パンケーキなんか俺らくわへんし。」
そこはもう、本音やった。別にインスタ映えを求めてるわけでもないし、予約困難店に
行きたいわけでもない。高い店が嫌なんやなくて、考えてない高い店が嫌なんや。
だから、さらに少し踏み込んで言う。
「いやいや、まあ高い店もええけども。俺ら、結構あれやで、家庭料理とかも好きやで。」
すると、その言葉に銀座のお姉さんが、ほとんど条件反射みたいに返した。
「えー、なんかダサいやん。」
その一言で、三人とも一瞬だけ黙った。
ダサい。それを、そのまま言うか。しかも、悪気なく。
イキり社長の中で、「あ、なんか話違うな」という感覚がはっきりした。
横にいた他の社長二人も、たぶん同じことを思っていた。一人が、小さく言う。
「んー、なんかちょっとあれちゃうか。やっぱ大阪に当てられたんちゃうか。」
もう一人も、苦笑いで頷く。
「うん、そうやな。もう飲み方変えよかな。」
それを聞いて、銀座のママが慌てて割って入ってきた。
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくださいよ!」
「え?」
「この子らだって、社長たちさんがちゃんと可愛がってくれたら、
どっか行ってくれるかもしれませんよ。」
でも、イキり社長の中では、もう論点が違っていた。
どっか行ってくれるか、くれへんかじゃない。ワンナイトがあるかないかでもない。
ゴルフに付き合ってくれるかどうかでもない。そういうんやなくて、
女の子たちなりの考えが見たいんや。自分たちの頭で、「これやったらハマるやろな」と
考えてくれてる感じが、めちゃくちゃ貴重なんや。そこが、大阪京都で食らった一番でかい衝撃やった。
だから、イキり社長は、少し疲れた声で言う。
「いや、別にこっちはワンナイトとか、ゴルフについてきてくれるとか、そんな求めてない。
なんか、女の子たちなりの考えみたいなのを、一生懸命考えてくれてる感じとか、
“これやったらハマるやろな”っていう頑張りが、結構貴重やねん。」
でも、その言葉に返ってきたのは、あまりにも率直な一言やった。
「えー、私らそれちょっと面倒くさいな。」
他の女の子も続く。
「他の社長さんとかやったら、なんかこう、どっか行って連れてったろか、みたいな感じやから。」
「それ、ちょっと面倒くさいな。」
その瞬間、イキり社長は、なんとも言えん気持ちになった。
怒るというより、へこむ。ああ、そうか。
大阪京都で当たり前みたいに出されてたものは、こっちでは当たり前やないんや。
むしろ、かなり面倒くさい部類なんや。それが、はっきり見えてしまった。
結局、その晩は、なんとも微妙な空気のまま終わった。
大きく揉めたわけでもない。でも、楽しくもなかった。
店を出て、三人で並んで歩きながら、イキり社長がぽつりと言う。
「……もうちょっと銀座には来おへんかもな。」
他の二人も、苦笑いする。
「それはある。」
「もう、大阪に当てられてもうたな。」
「うん。」
誰も強く否定せえへんかった。銀座が悪いわけやない。
ただ、自分たちの感覚が、あの二日間で少し変わってしまった。
それだけや。でも、その変化は、思っていた以上に大きかった。
三人は、ちょっとへこんだような、でも妙に納得したような顔で、そのまま東京の夜に散っていった。




