店内でのおじいちゃんとの2セット。土日の東京メイン社長とのやり取りで仕事のコンサルで実際に動いて形になったことが嬉しい。キャバ嬢以外の複線化
お店の方に戻ってからも、伏見の話の続きみたいな流れで、博子はおじいちゃんに
土日の東京社長たちのことをぽつぽつ喋っていた。
グランフロントの中華でいったんお腹も気持ちも落ち着いていたぶん、
店の中では逆にゆるく、でも少し深い話がしやすい空気になっていた。
「でな。」
博子が、グラスを軽く持ちながら言う。
「さっきの伏見の話の続きというか、土日の東京の社長さんたちの話やけどな。」
おじいちゃんが、うんうんと頷く。
「結局、私が解説した後に、話の種でね。奨学金返済の肩代わりをする企業が、
最近ちょっとトレンドになってるっていうことを私知ってたから、その辺の話をしたのよ。」
「ほう。」
「で、ChatGPTでめっちゃ細かく見積もり出して、それを社長さんたちに出したんよ。」
おじいちゃんは、そこで少し目を細めた。
「お前、ほんまいろいろやっとるな。」
「やってんのよ。」
博子は少し笑う。
「で、もともと軽く投げてたら、社長が動いてくれてて。
ある程度の相場感みたいなん、ざっくり見積もってたみたいで。」
「へえ。」
「効果あるっていうのが、向こうでもなんとなくわかってたらしくて。それは結構受けが良かったわ。」
「そら、数字見えたらな。」
「そう。しかもな。」
博子は、少しだけ嬉しそうに続けた。
「昨日連絡来たけども、結局、自分の会社で採用することになった上に、なんかいろいろ
動きがあったみたいよ。」
「もうか。」
「もう。で、ありがとうっていう電話来たわ。」
おじいちゃんが、そこでちょっと驚いたように笑う。
「そうなんか。」
「そうなんよ。」
「で、その分の手当てもろてるんか。」
博子は、そこではっきり頷いた。
「もらってるのよ。」
おじいちゃんは、一瞬だけ「ほう」と感心した顔になる。
でも博子の方は、その金額そのものより、どちらかというと別のところに気持ちが
向いているようやった。
「まあ、私も今、キャバ嬢二十歳やけど。」
「うん。」
「三十までどこまでやるかとか、これからどうしようかなって、うっすら考えてる中で。
なんか、そういうキャバ嬢以外の複線化みたいなんも、ちょっと考えたりしてるんよ。」
「複線化、な。」
「そう。言うたら、東京の社長さんたちとも仲良くするために、東京近郊でちょっと
面白そうな店を、こっちで食べログとかGoogleで探して。」
「おお。」
「で、社長さんたち行ってきてくださいって投げて。それで、感想また教えてね、みたいな。
なんか、そういうキャッチボールしたりとか。いろいろ考えてんのよ。」
おじいちゃんが、そこで少し笑いながら言う。
「博子はいろいろ考えとるな。」
「考えとる。」
「考えすぎて疲れへんのかと思うんやけど。」
その一言に、博子は少しだけ間を置いてから、ふっと笑った。
「いやでもね。」
「うん。」
「ハマった時が気持ちいいのよ。」
「ハマった時。」
「そう。考えたやつが、ちゃんとハマった時。」
それは、たぶん博子のかなり本音やった。
ただお金をもらったから嬉しい、だけではない。
自分で考えたもの、自分で組み立てたものが、相手の中で意味を持って、動いて、返ってくる。
その快感が、かなり大きい。
「だから、結局社長からもお金はもらったのよ。」
「うん。」
「三人からお金もらうっていう形になったけども。ぶっちゃけたところ、社長が決定までしてくれて、
話が動いて、なんか喜んでくれたっていうのが嬉しいかな。お金よりもね。」
おじいちゃんは、その言葉に、ちょっとだけ静かに頷いた。
「お金はあれやんか。」
博子が続ける。
「結局のところ、キャバで使ってもらったらいいし。アフターはアフターで行くねんから、
そこで使ってもらったらいい。でも、それ以外のところで役に立ったっていうのは、
結構嬉しい経験やったかなって。」
そこまで言うと、おじいちゃんは、少しだけ笑って首を振った。
「博子、あれやな。ほんまに。」
「何。」
「キャバ嬢以外のところでも、なんかちょいちょい芽出してきてるのがすごいわ。」
博子は、その言い方に少し照れくさそうに笑う。
「いや、まだ芽かどうかもわからんけどな。」
「いや、芽やろ。」
「そうかな。」
「そうや。普通、夜の店でそこまで考えて、しかも外で返ってくるところまでいかん。」
博子は、そこでちょっとだけ視線を落として、でも嬉しそうにしていた。
褒められるのは単純に嬉しい。
それが、おじいちゃんみたいに、ちゃんと長い目で見てくれる人からの言葉やと、なおさらや。
「でもまあ、考えすぎて倒れたらあかんで。」
おじいちゃんが、最後にそう付ける。
「それはそう。」
「そこだけは気ぃつけや。」
「うん。」
そんな話をしながら、二人は店の中でゆっくり二セットを過ごした。
土日の東京社長たちの濃い流れと、今ここでおじいちゃんに話している静かな時間が、
妙につながっている。
博子は、自分の中で少しずつ何かが広がっているのを感じながら、その夜をやわらかく過ごしていた。




