7月4週目水曜日。おじいちゃんと同伴。どうしでも小籠包が食べたくて梅田グランフロントで同伴
水曜日。おじいちゃんとの同伴の日、今日は一個だけ、どうしても食べたいものがあった。
「小籠包……。」
グランフロントに入ってる、あの店の点心セット。昼のランチで二千二百円。
あれを前から食べたかった。
小籠包に蒸し物に、ちょっとずつ色々ついていて、あの値段やったらかなり満足度高い。
ほんまは今日、おじいちゃんとそこに昼で行けたら一番よかった。
でも、おじいちゃんは水曜の昼間は、仕事の都合で動けない。淀屋橋周辺しか無理や。
そこはしょうがない。
「ほな、夜やな。」
ヒロコは、少し残念に思いながらも、すぐ切り替える。
夜やったらランチセットはない。ちょっと高くはつく。
でも、単品で頼んでも十分美味しいのはわかってる。
だったら、今日はそこを素直に押そうと思って、予約を入れて、おじいちゃんに送る。
「おじいちゃん、ごめん。めっちゃ私、昼のランチのここのセット食べたかったけど、
おじいちゃんの仕事の事情もあるからな。夜に行きましょうと。単品で頼んでも美味しいから絶対。」
そんな感じで店の情報を送ると、おじいちゃんからすぐ返ってくる。
「おっしゃ、わかった。博子が中華って初めてちゃうか。」
博子は、そこに少し笑いながら返す。
「そう、初めてなんよ。新地の中でなんか中華ないかな思ってたけども、
ちょっと手頃なので、私の推せるところがここしかなくて。」
おじいちゃんは、そこもあっさり受けてくれる。
「ああ、まあええか。初めての中華やしな。別に同伴イコール北新地ってわけでもないしな。」
その一言に、博子はちょっと助かる。
やっぱり同伴ってなると、なんとなく新地の中でまとめたい気持ちはある。
でも、それに縛られすぎると、出せる店が細くなる。今日は中華を出したい。
それなら梅田まで広げるのは、全然ありやった。
待ち合わせして、グランフロントの方へ向かいながら、おじいちゃんがあたりを見て言う。
「しかし、梅田は梅田でしゃれてるな。」
博子も、その景色を見ながら頷く。
「最近の梅田、高価格帯のところとか、結構増えてきたし。ウメキタの方も、またいろいろ
ビル建ってるやん。」
「建ってるなあ。」
でも、博子はそこで少し口を尖らせる。
「でも中途半端な店も多いかな、みたいな。」
おじいちゃんが、そこで笑う。
「そこまで見てんのか。」
「いや、そんなに偉そうな話ちゃうねんけどな。」
博子も笑いながら続ける。
「一周ぐるっと回った感じで言うと、ゆったりするならゆったりする、安くするなら安くする、
に振り切った方がいいかなと思うねん。私的にはね。別に店舗経営者じゃないから、
そんな偉そうなこと言えへんけど。」
「ふんふん。」
「なんか中途半端で。それやったら、第一ビルから第四ビルの地下で飲むっていうのもあるやん。
東通りで飲むっていうのもあるやん。安いんやったら、なんなら天満もあるし。」
おじいちゃんが、うんうんと聞いている。
博子は、ちょっと言葉に熱が乗ってくる。
「で、高いってなったら、今度はその値段で客呼べるんかって話になるやん。
そこまで振り切れへんと、結局中途半端な店が多いかなって。だから“ここ一押し”っていうのは、
なかなか難しい感じする。」
「なんかそこまであるか。足広げて見てんのか。」
「そんな余裕はあんまりないよ。私なりのざっくり見積もりよ。」
博子は、少し照れくさそうに笑う。
「まあ、他いろいろ行ってみたら変わるかもしれへんけど。今の私の見立てはそんな感じ。
やっぱり基本は北新地で行って、お店に行くっていう流れが、いちばん収まりええしさ。」
おじいちゃんは、その言葉にすぐ乗ってくる。
「でも、わしとの同伴にあたっては、もう北新地でも収まらへんようになってきたってことやな。」
博子が吹き出す。
「それはおじいちゃんがいろんなもん食いたいからやろ。」
「そらそうやろ。」
おじいちゃんも、そこで大きめに笑う。
「わし、いろんなもん食いたいからな。」
「そうやねん。だから、もう北新地だけでまとめるの、ちょっと窮屈やねん。」
「ええことやん。」
「ええことではあるけど、店探す方はちょっと大変やねん。」
そんな話をしながら、二人はグランフロントの中華の店へ向かっていく。
梅田の夜は明るくて、人も多くて、新地のまとまり方とはまた少し違う。
でも今日は、それがかえってちょうどよかった。
ネタ切れ感のある博子にとっても、おじいちゃんの「いろんなもん食いたい」に付き合う流れ
としても、少し北新地から外れたこの感じは悪くなかった。
中華は初めて。でも、こういう一手がまた次の座組の引き出しになる。
博子は、そんなことを思いながら、おじいちゃんと笑って歩いていた。




