店前同伴時に全員合流。女性陣、着替えの間、感触を確かめ合う。男性陣も待ち時間の間感想を言い合い空気が柔らかくなる
夜八時ちょうど。女性陣三人、男性陣三人が、きちっと店前で合流するという流れになった。
京都組も新大阪組も、なんやかんやでちゃんと時間を合わせて戻ってきている。
こういうところが、最近のこの座組のえらいところやなと、博子は内心少しだけ思う。
誰か一人が暴走するでもなく、遅れるでもなく、ちゃんと六人の形に戻る。
それだけで、空気はだいぶ柔らかかった。
「お疲れさまでした。」
「いやいや、ええ感じやったで。」
「ほんまですか。」
そんな軽いやり取りをしながら、男三人の顔色を女性陣はそれぞれ確認する。
全員、少なくとも不機嫌ではない。それがまず大事や。
メイン社長は相変わらずノリノリやし、他の二人も“まだ見極め中”ではあるけど、
来たこと自体を後悔してる感じはない。そこまで確認したところで、
女性陣は一度裏に回って着替えに入る。
バックヤードに入った瞬間、三人とも少しだけ肩の力を抜いた。
着替えながら、すぐに「どうやった」という話になる。
こういうのは、一人ずつ詳しく報告せんでも、最初の一言でだいたい温度がわかる。
「どうやった?」
博子が先に聞くと、アルカちゃんが軽く笑う。
「いやいやいやいや、ヒロコちゃんのとこは良かったんやろうけど、みたいな。」
「まあまあ刺さったで。」
博子は、ちょっと得意そうでもあり、でも浮かれすぎんように言う。
「でもメインは、講義のところまでちゃんとやるから。その辺のところは任しといて。
ちゃんと資料も作ってきたし。」
その一言に、さきちゃんとアルカちゃんが同時に顔を上げる。
「どこまで準備してんの。」
「ほんまにな。」
二人に軽く突っ込まれて、博子は笑う。
でも、その笑いの奥には少しだけ本気がある。
ここで抜いたら、せっかく作った流れがぼやける。
だから、今日はちゃんと“講義”までやるつもりやった。
アルカちゃんも、自分の方を振り返る。
「私は、まあまあ悪くはなかったんちゃうかな。
少なくとも、ご機嫌損ねるようなこともなかったし。」
その言い方が、アルカちゃんらしい。爆刺しではない。
でも、ちゃんと流れを壊してない。
今日はそれで十分やと、三人ともわかっていた。
「さきちゃんは?」
博子が聞くと、さきちゃんは少しだけ苦笑いして答える。
「私は、正直、弱み見せた。」
「ほう。」
「でも、博子ちゃんの鉄板コースの話もさらっとして、“私も気づけたらいいな”みたいなこと
言うてたら、分析力あるね、すごいね、みたいなこと言われて。ちょっと空気和やかになった。」
博子は、その返しを聞いてしっかり頷く。
「それ、今回は良かったな。」
「うん。無理に強がらん方が、今回は多分良かった。」
三人の間に、妙な連帯感が流れる。
前やったら、誰が刺さっただの、誰が弱かっただの、もっとピリついたかもしれん。
でも今は違う。全体で回してる感覚がある。だから、一人の弱みも、全体の調整材料になる。
「じゃあまあ、こっから頑張ろうか。」
博子がそう言うと、二人とも小さく頷いた。
着替えもほぼ終わり、あとは表に戻るだけや。
一方その頃、男性陣三人は表で待ちながら、それぞれの同伴の話をつまみにしていた。
メイン社長は相変わらずノリノリやった。
むしろ、京都で飲んできた酒の話を早くしたくて仕方ない顔をしている。
「是非紹介したい店がある。」
そう言って、今日一緒に来た二人に、清水五条の店の話を畳みかける。
「酒がえぐい。ほんで、すごい安い。十四代飲んできたで。」
「マジか。」
「十四代やで?」
「しかも飲み比べでや。」
向かいの二人が、半分あきれ、半分うらやましそうな顔になる。
「俺らの話、全部吹っ飛ぶやんけ。」
「いや、ほんまそれ。」
でも、メイン社長は止まらない。
「新政もあった。ナンバーシックス。九百円で。」
「は?」
「で、而今も飲んだ。」
「お前だけ何してきてんねん。」
二人がそう言いながらも、ちょっと笑ってるのがわかる。
京都で抜け駆けされた、という気持ちがゼロではない。
でも、それ以上に、“そんな店あるんか”という驚きの方が勝っている。
メイン社長は、そこでもちゃんと一言添える。
「結構楽しかったで。スケジュールちゃんと考えてくれてたから控えめや。」
「はいはい、わかったわかった。」
「いやほんまやって。」
そのやり取りをしながら、三人は女の子たちが戻ってくるのを待っていた。
さっきまで別々に動いてた六人が、ここでまた一つに戻る。
その前の小休止みたいな時間や。
メイン社長の京都話で、場はかなりあったまっている。
残りの二人も、文句を言いながら、完全には嫌がってない。
むしろ、その京都の酒場を今度は自分らも見たいという気持ちが、ちょっと芽生え始めている。
やがて、着替えを終えた女性陣が戻ってくる。
男三人も、そこで自然と姿勢を整える。
裏では裏で手応えを確かめ合い、表では表で酒の話で盛り上がり、
全体としての空気はもうだいぶ柔らかくなっていた。
夜の本編は、ここからやった。




