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7月3週目金曜日。税理士先生との話がまったり進む。次の計画や接待ゴルフや旧来のキャバクラのめんどくささについて語る

税理士先生が、二杯目の酒をちびちびやりながら、少し身を乗り出してきた。

「夕方から吹田のアサヒビールの工場とか、山崎のウイスキー工場とか、山崎のビール工場とか、

ありよな。」

博子は、その言い方がちょっとおかしくて、小さく笑った。

「ありです。しかも、山崎のウイスキー工場は、言うたら社長層には結構人気ありますし。」

「やろ。」

「だから、夕方ゆっくりおしゃべりして、そのまま同伴っていう形も全然ありです。

もちろん、お手当ては今回みたいな一日コースに比べたら全然低くていいですけども。

そういう“軽いけど満足度ある”やつは、たぶんちょうどいいです。」

税理士先生は、そこで「ほう」と頷く。

「それええな。しかも、こんなんきっかけにさきちゃんと弁護士先生が仲良うなってくれたら、

また別の回し方できるやろ。」

「できますね。」

博子はすぐに乗る。

「さきちゃんと弁護士先生が、ある程度話しやすくなってくれたら、

今度は個別同伴して、個別でお店行って、そのあと反省会で戻すっていう流れもできるし。

あるいは昼からちょろっと遊んで、夜に戻すでもいいですし。」

「そうそう。」

「昼から遊ぶんやったら、東京の人たちにやってるみたいな、ああいうのをちょっと

軽めにアレンジして。東京の人たちほどギチギチには詰め込みできないですけど、

軽くデートして、同伴して、また戻ってくるみたいな座組は組めます。」

税理士先生は、そこで本気で感心したように笑った。

「ほんま、やり方なんぼでもあるんやな。」

「あります。まだよかったら言うてください。その辺は、予定合わせながら全然やります。」

「でも東京勢、結構忙しいやろ。」

その問いに、博子はちょっと苦笑いした。

「忙しいです。ほんまにバンバン言ってくるんで。

私たちが、やる時期を一週間ずつずらして、調整してるところです。」

「やっぱそうか。」

「私ら、体力持たないんで。」

そう言って笑うけど、それは半分以上本音やった。

土日を一回回しただけで終わりならまだしも、東京の社長たちは気に入ると本当に早い。

しかも向こうは、新幹線代やホテル代までひっくるめても、六本木銀座でバカバカ使うより

安いと思ってる。だから余計にこっちへ向いてくる。

「ただ。」

博子はそこで、少しだけ真顔になる。

「やっぱそれに見合っただけのお金は積んでいきはるんで。

六本木銀座でバカバカ遊んでた人たちは、今、結構こっちにガーッと向いてきてます。」

税理士先生は、酒を置いて、ゆっくり頷いた。

「いやでも、この座組をやってくれると、遊ぶ方は楽なんやな。」

「そう思います。」

「しかも、そうやって金積んで何かする層からしたら、面倒くさい上に、

女の子に媚び売らなあかんって、わけわからんやん。」

博子は思わず吹き出した。

「先生、言い方。」

「いや、ほんまやで。もちろん、キャバクラでワンナイト狙うとか、付き合うとか、

そういう話やったら別や。でも、ただ“遊ぶ”ってなると、あの面倒くささはわけわからんやろ。」

その“わけわからん”には、博子もかなり同意していた。

東京組が刺さったのも、結局そこやった。

高い店行って、女の子の機嫌取って、また店でも気を使って、しかも何が残るんかわからん。

だったら大阪まで来て、こっちが段取りして、向こうは乗ってるだけの方が楽や、という話や。

税理士先生は、そこからさらに踏み込んだ。

「極端な話言うたらやで。」

「あ、危ない前置きや。」

「博子ちゃんたちで接待してもろて、で、雄琴の風俗とか、福原の風俗とか行って、

性欲はそっち、遊びはこっちって分ける方が、コスパええしな。」

博子は、箸を止めて先生の顔を見た。

「社長、それ、私の前でなかなか結構チャレンジングなこと言いますね。」

税理士先生は、ニヤッと笑う。

「せやろ。」

博子は、そこで少しだけ間を置いた。

こういう時、慌てて否定してもつまらんし、乗りすぎても品がない。

だから、ちょっと溜めて返す。

「……でも、そうです。」

ジェリー先生が、そこで声を上げて笑う。

「お前、返すなあ!」

「いや、だってそうじゃないですか。遊ぶとこは遊ぶとこ。性欲は性欲で別。

そこを一緒くたにして、女の子に全部背負わせるから変になるんですよ。」

「おお。」

「私らがやってるのって、言うたら接待の座組みと、気づきの提供と、

ゆっくり遊ばせる導線の設計で。そこに色恋とか、下心とか、ワンナイトの期待まで

全部乗せたら、そらしんどいです。」

税理士先生は、テーブルを軽く叩いた。

「博子ちゃん、なかなかありやな。インファイトでガチガチに打っちゃうな。」

博子も笑う。

「先生が踏み込んでくるからでしょう。」

「いや、でも今の返しはよかったわ。」

そこから少しだけ、二人とも笑いながら酒を飲んだ。

話の中身は際どいのに、空気は妙に穏やかやった。

税理士先生はこういう、“一歩踏み込んだ会話をしてもちゃんと返してくれる”

ところが博子の好きなところなんやろうなとなんとなく思う。

結局、その夜は二セットでお開きになった。

税理士先生は、最後まで機嫌よく、「またなんか考えといてや」と言い残して帰っていく。

博子はその背中を見送りながら、今日のこの感じも悪くなかったなと思った。

座組の話、東京組の話、工場見学プランの話、そして最後は少し危ないところまで踏み込んだ話。

そういうのをちゃんと会話にして、笑いにして、次につなげる。

それができるのは、やっぱりこの人との関係性があるからやなと思いながら、

博子は静かにグラスの残りを飲み干した。

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