7月3週目月曜日。税理士先生とのやりとりを女性陣にシェア。弁護士先生との同伴の準備をする
月曜日。今日は弁護士先生との同伴の日やったけど、その前に一個だけ片づけておかな
あかんことがあった。この前の金曜日の分。税理先生から来ていた取り分の話を、
さきちゃんとアルカちゃんにちゃんと通しておくことや。
博子は昼前、まず二人にそれぞれメールを転送した。
税理士先生からの文面そのまま。
ほんまは全員五ずつ積みたいところやけれども、思ったより弁護士先生の食いつきが強かったから、博子10万、その他2人は7万ぐらいで考えてる、という内容や。
メールだけで済ませるのは違うなと思ったから、そのあと一本ずつ電話を入れる。
先に出たのはさきちゃんやった。
「もしもしー。」
「おつかれ。今ちょっとええ?」
「全然いいよ。」
博子は、軽く前置きしてから本題に入る。
「この前の金曜の件な。ほんまは五・五・五っていう形かなと思ってたんやけど、
思った以上に弁護士先生が刺さったみたいで、七・十・七っていう形で考えてくれてるみたい。」
さきちゃんは少しだけ間を置いてから言った。
「へえ。でも、そんなんで十分ありがたいな。」
「ほんま?」
「うん。だって昼からやし、しかも私ら、言い方悪いけど博子ちゃんに乗っかっただけやもんね。」
博子はすぐに首を振る。もちろん電話越しやけど、そういう感じで声が出る。
「いやいやいや、でも回してくれてありがとうやし。で、ボトル二本入れてくれたやんか。
それを、さきちゃんとアルカちゃんの肩にバックつけてもらってって形にしようと思ってる。」
「え、そうなん?」
「うん。先生の差が出たのはしゃあない。でも、ボトルのところはそっちにつけてもらったら、
差ちょっと縮まると思うし。」
さきちゃんが、そこで少し笑った。
「博子ちゃん、いいの?」
「いいの。こんなん一人で回されへんから。その辺、私もつけといてもらった方が、
三人でやりやすいやん。」
「……マジありがとう。」
その言い方が、ちょっと本音っぽくて、博子も少しだけ力が抜けた。
「別にええって。今後の方が大事やし。」
「うん。それやったら全然OK。」
次にアルカちゃんにも電話を入れる。
だいたい同じ話をして、だいたい同じところで驚かれて、最後はやっぱり納得してくれた。
「え、でも私ら七ももらえるんやったら十分すぎるよ。」
「そうやろ。で、ボトルのバックもそっちにつけてもらうようにしとく。」
「え、博子ちゃん神やん。」
「神ではない。」
「いや神やって。」
アルカちゃんはそう言って笑っていたけど、その笑い方に変なわだかまりがないのが分かる。
そこが一番ありがたかった。
取り分の話は、金額そのものより、空気の作り方の方が難しい。
でも今回は、ちゃんと三人でやりやすいところに落とせそうやった。
二人とも納得してくれたところで、今度は税理士先生に一本返す。
「先生、この前の件ですけど、二人にも話しておきました。
それぞれOKだということでございました。」
電話の向こうで、税理士先生は機嫌よく笑う。
「おお、わかったわかった。やっぱりその辺ちゃんと回してくれるの助かるわ。」
「いえいえ。で、もし金曜日よかったら、座組の反省会みたいな形で同伴してくれたら
嬉しいです、っていうのも一応言うときます。」
「おお、ええやん。定期的にやるの決まってんだから、ちょこちょこそっちもやろうや。」
「じゃあ、金曜日ですね。まあ、ちょこちょこやろうって感じで。」
「そうそう。重くなりすぎんぐらいで、ちょこちょこな。」
それで話は綺麗に終わった。
月一の流れは作れた。
しかも、今回の取り分も、三人の空気を壊さずに着地できた。
博子としては、ここでようやく今日の本番に向かえる気持ちになる。
スマホを置いて、深くひとつ息を吐く。
「……よし。」
ここから弁護士先生の同伴の準備や。
今日は、先週木曜日を踏まえた上で、もう少し普段の弁護士先生との時間に戻す日やと思っていた。
「刺身の美味しい店、行こうかな。」
そう思いながら、服を選ぶ。
木曜ほど大掛かりじゃない。
でも雑でもない。
魚のええ店で、ちゃんと話せて、ちょっと落ち着けるところ。
弁護士先生は、派手さより、ちゃんとした味と会話を喜ぶ。
金土日が濃かったあとの月曜やし、自分としてもそのぐらいの温度がちょうどいい。
メイクをしながら、頭の中で店を何軒か並べる。
刺身が強い店。煮物も外さへん店。日本酒がそこそこある店。
でも肩肘張りすぎへん店。
そういう条件で絞っていくと、だんだん今日の輪郭が見えてくる。
「木曜に京都まで行ってるしな……今日は大阪でええわ。」
そう独り言みたいに言って、ヒロコは少し笑う。
一週間の中でも、ちゃんと変化をつける。
同じ相手でも、同じことを繰り返さへん。
それが最近の自分のやり方やし、たぶん弁護士先生もその方が楽しむ。
バッグの中身を確認して、スマホ、財布、少しだけメイク直し。
最後にもう一回だけ弁護士先生とのやり取りを見返す。
今日は京都じゃない。
でも、そのぶん、話すことは山ほどある。
税理先生のこと、金曜の回し方のこと、土日の反省のこと。
そのへんをゆっくり刺身つまみながら話せる夜にしたいな、と思う。
「ほな、行こか。」
月曜日の昼過ぎ。
前半の雑務は終わった。
ここからは弁護士先生との、少し落ち着いた時間や。
木曜日の鉄板コースとは違う形で、ちゃんと楽しませる準備をしながら、博子は静かに家を出た。




