私と“ワタシ”となんか変なの?
私は…どこにいるのでしょうか…
相も変わらず頭が上手く働きません。
しかし記憶は今回ちゃんとあるようです。超でかい狼さんにパックリされそうになって嫌な予感を振り切りやばそうなスキルを発動しちゃった私です。
それにしてもあたりが暗いですね…と思ったんですが目すら開けず何を言ってるんだ私よ。
私は目を開きました。
そして、猛烈な吐き気と殺意に襲われました。
唯一そこに転がっているかつて狼だったなにかが“ワタシ”の心を安らげます。
“アア キョクセン シンダ”
しかしそれも束の間、更なる吐き気と殺意は尽きることなく私の脳髄を侵していきます。憎い、そこに生え
る木々が憎い、そこに涌く泉が憎い、空を仰げば雲と太陽が憎く地を見れば底に這う虫たちが憎い。
私は正常ではありません、私の中の“ワタシ”かがささやいてます。
“スベテ コロセ キョクセン コロセ”
“ニクイ セイジョウ ニクイ”
“█████ スベテコロセ”
“アア ティンダロス”
残った理性を振り絞り私はステータスを呼び出しました
ステータス
種族:█████
個体名:!@#&
性別:%#@?
年齢:4590988238
誕生日:12月24日
Lv:$##@?
MP:?#@/
VIT:4444444444
STR:███/███
DEX:38273982173821/█
AGI:98237218798321/█
INT:666/666
固有スキル:
███
アア セイジョウ
スキル:
███
所持物:
キョクセン
称号:
█████シヌガヨイ
そして私の意識は深淵へと沈んで行きました。
・・・・・・
「始まったか…」
「期待を裏切るでないぞ。」
・・・・・・
ここはどこでしょう。何だかここの所いっつもこの問題を聞いているような気がしますね。私といえば今は辺り一面真っ暗な空間にいます。なんかデジャヴ。ついでに何だかフラッシュバックしてきました。光の点?あとあの見知らぬ女の子…やっぱり何か忘れてるんでしょうかね私。
「はぁ…それにしてもここはどこでしょうか。」
わざわざ声にだす必要もありませんがとりあえず溜息を吐き出します。
「真っ暗で何も見えな…あれ?」
何でしょうか、目を凝らせば何か見えるではありませんか。何というか、暗闇のなか“それ”だけ更に黒かっ
たのです。何を言ってるのかわかりませんでしょう、私もこの感覚は言葉では伝えられないと思います。
そしてその見えた“何か”とは、まぁ、端的に言うと“何か”でした。
「いや言葉遊びとかじゃなくて、なんなんですかこれ本当に。」
それは、黒い直線でした。本当に他に何もなく暗い空間のなか、“直線”としか言いようがないものがそこ幾
つかにありました。例えるならば黒板を真っ黒にして更に濃い黒で線を引いた様な感じでしょうか。
「あっちに伸びて、収束しています…」
そう、幾つかの直線は並行することなく私の反対側に無限に広がる…つまり私の正面方向に収束していきます。
「行ってみましょうか…」
どの道ほかに手がかりなど無いのです。それにしてもこの直線たち、見るにつれて違和感が段々と湧いてきます。
「完璧すぎる?よくわからないのです…」
そう、完璧すぎるのです。私が見たことある直線と言えるもの、それらは決して完全な直線ではないはずです。これは点の定義と同じです。普通一つの物がどれだけ小さくなっても定義上の点とは同じではないのです、直線も同じ。なのに、いま私の目の前の直線はそう言った理論を全て超越して私に“完璧”という感覚を与えました。
「なんか、段々と怖くなってきたのです。」
暗闇は恐怖を掻き立て、得体の知れない怪現象は私の心を蝕んで行きます。そして段々足取りが不確かになっていき、視線は暗闇に包まれます。
この直線たちを辿っていく先に一体何があるのでしょうか。私は、人はそれを見て、何を望むのでしょうか。それらの答えは私ごときに出せることなんて不可能なぐらい難解です。しかし私は歩き続けるしかありません、ここにとどまっては何もないですから。たとえ後悔するとしても、先ずは先に行くのです。
嗚呼、そして蘇ってくる私の記憶。更に多くの光の点が私の目の前に現れては消え、もはや記憶の想起と現実を区別できません。いえ、それは確かに現実なのでしょう、私の行く先を照らす記憶の光点達は確かにそこに居て私の周りを旋回していました。これもまた奇跡なのでしょうか。
そしてついに
私は辿り着いてしまいました、おぞましい終点へ。
「あれは…なんなんでしょうか?」
全ての直線が収束したその一点に、“それ”はいました。
そしてその姿を目視した時、私は本能的な嫌悪感を心の底から抱きます。
“それ”は名状しがたい青い液体を滴らせた何かでした。
「―――…」
何かを叫んでいる様に見えますが私には聞こえません、いえ、耳が、脳がその叫びを理解するのを拒否しているのでしょう。その冒涜的な叫びを。
“それ”は時には四足歩行しているかのように蠢き、時には這いずるようにのたうち回り、身体は有機物にも無機物の様にも見え、しかし“それ”が蠕くたびにそのどちらともつかない気色の悪い物へと変化していきます。
「―――…――」
何かを感じた様に動きを止めた“それ”は急にグルリ、と首(そう呼べるなら)を曲げて私の方に向けてきます。
“見られた”
そう感じた瞬間私はその眼からこの世有らざる殺意と荒涼な絶望感を感じます。“それ”が私を見た瞬間私も尸塊の坩堝の様に暗く腐った眼を覗き込んでしまいました、その時に歪んだ眼差しから読み取れたどんな深淵より深き憎悪を私は一生悪夢と共に思い出すのでしょう。
そのやせこけた身体は私に宇宙のあらゆる悪意が詰め込まれているのではないかという錯覚すら抱かせ、しかし次の瞬間私は自分に問います、あれは身体だったのか?と。そいつはその様な存在でした
「――…――」
そして“それ”は冒涜的な唸り声と共に近づいてきます。見れば吐き気を催し存在そのものが嫌悪感を引き立てる存在、しかし本来ならば逆方向に向かう筈の私の足は意思に反して動きません。
いいえ、動けなかったのです、それを始めて視覚した瞬間から私の身体はとっくに竦んでいました、足どころか、瞼を落とし恐ろしい現実からの逃避行すら許されません。
やがて、それは私の目の前にやって来ました。その時私が見たそれの姿は蝙蝠と犬を足して割った様な、しかし私がよく知る両者とも決定的に違う狂気的な要素を孕む姿で私に大口を開けて来ます。
牙の様な物質は分解と合成を繰り返し、そこから滴る青い液体の匂いはまるで塩素ガスのような刺激臭と腐りかけた屍が持つ反吐が出る悪臭が合わさったような酷いものです。
狂気と絶望が奏でる交響曲のなか、私の思考は既に停滞していました、できる事と言えば己の運命を呪うだけ。
“どうして…”
次の瞬間、視界が光に包まれました。




