転生できるようですよ?
「誰ですか…?」
そう尋ねた私に老人はこう答えた。
「神じゃ。」
まあ、大体そんな感じだとは薄々気付いていました。立て続けに起こった超常現象に感覚がどうも麻痺しているらしいです。
ん?立て続け…?自然とそう出たけど別に立て続けってほど変なことには遭遇してないはずです…
何か忘れている、そんな違和感を感じます。
「ふむ…中々に強靭な魂のようじゃの。」
と、意味の分からないことを言ってきた神様。
「それで、その神様が私に何の用ですか?」
というか魂って、死んだのですか私。
「うむ、死んだな。」
「マジですか…というか心読めるのです?」
と聞いてみたがまあ神様なんだから読心術ぐらい余裕なのかもしれない。
「確かに余裕じゃのう、というかそれ以前にもっと関心を寄せるべきものがあるじゃろうに。お主、死んだのじゃぞ?」
「いや、死んだのは確かにショックですが、こうして神様に呼ばれたってことは色々とまだ救いはあるんじゃないかな~と思いまして。流石に人ひとり死ぬたびに神様の所に来るわけじゃないでしょう?」
「うむ、儂的にはもちっと驚いてほしいものじゃが…まあいい、確かにそうじゃな。ここにお主を呼んだのは一つ頼み事があるからじゃ。因みにお主に拒否権はない。断った場合は殺す。」
「それって頼み事って言わないんですよ…赤裸々な脅迫ですよ。」
「それでは具体的に説明するぞ。」
無視ですか、そうですか。
「お主には元居た地球とは違う別世界に向かってもらう。」
おお、噂に聞く異世界転生ってやつですか、魔王でも倒しに行くんですか?それともクラスごと転移した勇者たちをぶっ殺すとかいうあれですか?
なんて考えてると
「違うわい、何考えとんじゃお主は。」
と神様は呆れた顔で言ってきます。
「違いますか…」
「そんなろくでもない事なら儂だけで事足りるわ。実際にお主に何かしろというわけではない。ただ異世界に向かってもらうのじゃ。『とある物』と一緒にな。」
「はぁ…とある物?何ですか?」
何なんだろう、チートです?
「まぁチートと言えばチートじゃな。これじゃ。お主にも読めるようにしといたぞ。」
そう言いながら渡されたのは二冊の本でした。
「本ですか…どれどれ?」
とりあえずなんか表紙がどす黒くて嫌~な感じがする一冊目の表紙を見てみるとそこには
『ネクロノミコン』
「これ見たら絶対発狂とかするやつじゃないですかやだーって、これをもってけと言うのです?」
何という罰ゲームでしょうか。私前世でなにか罪を犯しましたっけ?確かに何年生とは言いませんが中学の時それっぽい表紙のノートでいろいろやったこともありますけどそれとこれとは別ですし神様に直渡しされたってことはこれガチってことじゃないですか。
とりあえず救いを求めて二冊目の黄色い本を見てみます。聖書とかだったらいいんですけどね~
『黄衣の王』
聖書とかだったらよかったのにな~
「いやいやいや無理無理無理、どうぞ他をあたってください私は大人しく三途を渡りますので!」
ふざけないでほしい、こんな二冊の禁書持って異世界にいくなんてさっさと死んで閻魔庁に出頭した方が遥かに救いがあると思うんですよ私は。
「というかこれって所謂あれですよね、厄介払いってやつです。こんな不法投棄物異世界も迷惑ですよ。」
黄衣の王は禁書指定しておけばまだ大丈夫だと思います、読んだ人を不幸にしかしないのだから、だがネクロノミコンてめーはだめです。悪用される未来が目に浮かぶようです。
「ふむ、まあ確かに厄介払いと言うのは反論できんの、その二冊以外にも色々とあるが…しかし何をそんなに慌てているのだ?」
とぬけぬけと聞いてくる神様、禿げろよなのです。というか「以外にも色々…」とか聞こえたんですけど空耳ですよね?
「むう…つくづく失礼じゃの。」
「いや、ひとまず異世界への影響は置いとくとしてこんな物私じゃ扱いきれないですよ…」
「何もお主に読めと言う訳ではない。あくまでそれを異世界に持っていけ、と言う話じゃ。その後読むか読まないかはお主の自由じゃ、そこらへんに捨ててきてもよいじゃろ。他の物についても同じじゃ。黄金の蜂蜜酒を誰に売ろうとも儂は関与せんよ。」
いやこんな物捨てるに捨てられんですからこう悩んでるんですよ。ていうかおい、さっきは空耳として無視しましたけどなんか他にも持たせようとしていません?。
「ふむ、まあそうじゃの、何を持たせるかはあちらについてからのお楽しみじゃな。」
決定事項ですか、そうですか。
「はぁ…しかしそれなら私じゃなくても別にいいんじゃないですか?っていうか神様が行って捨ててこればいいんじゃ…」
そもそもそう言う理由ならなにも異世界に捨てるなぞせず自分で持っていればいいだけの話でしょうに。神様が住んでるとこのに来れる人なんていないんですし悪用の心配も別にないのに。
「ふむ、正直に言えばこれらをもってけと言うのはついでだ。お主を異世界に送る本当の目的は他にある。」
「本当の目的?」
ついででこんな極悪物を持っていかれる異世界も災難ですね
「まぁ、そっちは秘密じゃな。というか言う必要がないしお主に理解できる事でもないしの。」
そうですか。
「というわけじゃ、何かほかに疑問はあるか?答えられる範疇でなら答えるぞい。」
どうやら私の必死の拒否も却下されたようですね…
「それじゃあ一つ目、異世界ってどんな所ですか?」
異世界って聞くと漠然とファンタジー系が頭に浮かびます。私だって前世は人並みにそう言った小説やら漫画やら見ていたので。
「概ねその認識で間違ってないの。因みにステータスもあるぞ。」
なるほど、ならば次
「それなら私の種族とかはどうなるんですか?エルフ?魔族?吸血鬼?」
せっかくのファンタジー世界へ転生です。定番の種族チートはかなり欲しいのです。
「うむ、その件についてならお主のあちらでの身体は既に決まっている。スペックは良いと約束するぞ?」
ううむ、自分で選択はできないのですか…まぁいいでしょう。
「もう聞くことはないのかの?無いならすぐにでも転生させるが。」
「う~ん、まあもうないですね、他は多分自分で解決出来ると思うですし。」
「そうか、ならばお主をあちらに送ろう。」
その時なぜ一言聞いておかなかったのでしょうか。
「では行くぞ…」
転生先の具体的な地点を。
「おお、言い忘れておった。あちらに飛ぶ際お主の前世に関する記憶はある程度欠如してしまうのじゃ。」
段々と目の前の景色がぼやけていく
「では、お主の――…健闘――…祈――…」
もはや声すら聞こえず、私の意識は再び暗闇に閉ざされた。
そして…
「どこですかここは~!!」
鬱蒼と生い茂る木々の葉の隙間から辛うじて見える青空に私は叫んだ。
・・・・・・
消えていく彼女を見送った神の隣には、いつの間にか現れた黒い顔無き存在が佇んでいた。
「本当にこれでよかったのですか、わが主よ」
名状しがたい声色でそれは問いかける。
「記憶を代償にあれを刷り込んだのだ、あの程度の狂気ならば問題なかろう。」
灰色の髭をさすりながら神は答える
「無意味やもしれんが負けることはまず無い賭けだ。今度こそ、奴らを真の深淵に送れるやもしれん。」
その言葉を残し、次の瞬間神とその従者、そして辺り一面の白い光も消え失せ暗闇だけがそこに残った。
多分更新は週一回ぐらいです




