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僕らだけが知る物語  作者: いち
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第二話 昼の距離

朝の横浜。


灰浜高校の校門には、生徒たちが次々と登校してくる。

高校一年のライは、眠そうな目をこすりながら校門をくぐった。


ライ(,,,皆、、仲良しなんだ、、、)


少し離れた場所には、高校二年の暗兎。


制服のネクタイは緩め、片手をポケットに入れたまま校門を通る。


先生「暗兎!今日こそ授業は出ろよ!」


暗兎「えー、多分無理っすね。」


先生「こら!!」

暗兎は笑いながら、そのまま校舎へ入っていく。

ライは思わず苦笑した。


ライ(、、暗兎君って、、ああいう人なんだ、、、)


その頃――。


隣接する中学校。

中学三年の那衣は、気だるそうに昇降口へ向かっていた。


女子生徒A「見て、那衣だ。まじうざいんだけど」


女子生徒B「それな!目合わせない方がいいって。」


那衣「....ッチ」


那衣(こっちの事情も知らないくせに)


聞こえていても、何も言わない。

ただ、教室へ向かうだけだった。


昼休み。


ライは一人で中庭のイスに座ってパンを食べていた。


そこへ、フェンス越しに声が聞こえる。

暗兎「ん、お前か」


ゆっくり近づいてきて半眼でライを見る暗兎。


ライ「ぁ、、此処座る、、?」


暗兎「俺はいいよ」


ライ「、、そっか、、」



暗兎「あ"〜 疲れた」

それだけ言うと、暗兎はフェンスにもたれ掛かった。


気まずい沈黙。


ライ「、、、お昼、食べたの?」


暗兎「あー、いらねぇ」


ライ「、、そう、、?」


暗兎「腹減ってねぇから」


ライは思わず笑う。

ライ「でも、お腹鳴ってるよ」


暗兎「...鳴ってない。」


少しだけ空気が和らぐ。

その時だった。

フェンスの向こう、中学校側の校庭を歩く那衣が目に入る。


ライ「、、那衣さん、、」


暗兎も視線を向ける。


暗兎「那衣」


那衣は二人に気づくと、ため息まじりながらこっちに向かってきた


那衣「あ、暗兎とライじゃん」


暗兎「ん?珍しいな暗兎呼び」


那衣「まぁたまにはちゃんと呼んであげようと思って」


暗兎「なにかあったんだろ、どうせ。」


那衣「何もないし...」


暗兎「あっそ、じゃぁ別に何も聞かないけど」


暗兎「あんま溜め込むなよ」


那衣「暗兎こそ」


ライ「、、、仲、良いんだね、、」


那衣「別に、お前こそ暗兎と仲良くなってんじゃん」


昨日より少しだけ柔らかい声だった。


ライ「へへ、、そうかな、、」


那衣「良かったじゃん」


暗兎「いいことなのか? 俺と仲良くなって、、、」


那衣「まぁ暗兎やさしいし」


ライはコクコクと頷く。

また沈黙。


気まずいはずなのに、不思議と嫌ではない。


那衣「んじゃ、教室戻るわ」


那衣は踵を返し、中学校の校舎へ戻っていく。


ライ「またね、、」


暗兎「じゃぁな」


ライ「僕も、そろそろ戻るよ、、」


暗兎「おう、じゃあな」


ライ「ばいばい、、」


暗兎「気をつけて戻れよ」


ライは小さく笑った。


昨日の夜に出会った三人。


昼の学校では、まだ「友達」と呼べるほど近くはない。


けれど、夜になればまた山下公園へ向かう。


誰かが約束したわけでもない。


それでも、三人とも心のどこかで思っていた。


「今日も、あそこに行けば誰かがいるかもしれない。」


まだ名前で呼び合うだけの関係。


それでも、その小さなつながりは、少しずつ三人の日常を変え始めていた。


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