第三話『抜け出した先』
朝から学校はいつも以上に騒がしかった。
今日は灰浜高校と隣接する中学校合同の学校行事。
校庭には生徒たちが集まり、先生たちが慌ただしく動き回っている。
「高校二年!整列しろー!」
「中学三年はこっち!」
その中で、一人だけ列から離れていく生徒がいた。
暗兎だった。
暗兎「めんどくせ」
先生が背中に気づく。
先生「暗兎、ちゃんと列並べ もうすぐ始まるぞ」
暗兎は振り返らず、片手だけひらひらと振る。
暗兎「ちょっとトイレー」
先生「すぐ戻ってこいよ」
暗兎「はいよー」
そう言い残し、校舎裏へ消えていった。
中学校側。
生徒たちが班ごとに並んでいる。
先生「おい、那衣整列しろ」
那衣「はい...」
返事だけして、そのまま列の最後尾へ。
数秒後。
先生が別の生徒へ目を向けた隙に、那衣は校舎の陰へするりと消えた。
女子生徒A「……またいなくなった。」
女子生徒B「先生、怒るだろうね。」
校舎裏。
暗兎は自動販売機の前でジュースを買い、しゃがみ込んでいた。
暗兎「あっつ〜」
そこへ、小さな足音。
那衣「あ、兎じゃん」
那衣「兎もサボり?」
暗兎「おうよ お前も?」
那衣「うん。人苦手だし、うるさいし」
暗兎「そ。なんか飲む?」
コーラを飲みながら自販機を指さす。
那衣も壁にもたれ、その場に座る。
沈黙。
幼馴染の二人にとって、それは気まずいものではなかった。
那衣「飲む」
暗兎「どれ飲む?」
那衣「サイダー」
暗兎「り」
ピッとボタンを押してサイダーを那衣に渡す。
那衣「センキュー」
那衣「ここでタバコ吸って良い?」
暗兎「お前...やめとけ。」
那衣「えーつまんね」
暗兎「ろくなことねーぞ」
暗兎あ意味ありげな顔をする。
那衣「いつも吸っても止めないじゃんか」
その時だった。
ガタン。
校舎裏の扉が開く音。
暗兎「誰だ」
現れたのはライだった。
ライ「ぁ、、、な、、何、やってるの?」
暗兎「サボり」
那衣「ライかよ。ビックリさせんな」
ライは少し困ったように笑う。
ライ「、、ごめん、、僕もたまたま立ち寄っただけなの、、、、」
暗兎「お前もサボり?意外だな」
ライ「、、そんなつもりはないけど、、、」
那衣「じゃなんでここに?」
ライ「、、お散歩、、?」
暗兎は缶ジュースをライへ投げる。
ライ「えっ、、いいの?」
慌てて受け止める。
暗兎「当たり前だろ」
ライ「、、ありがと、、」
ライは缶を見つめて、小さく笑った。
ライ「、、これ、初めて飲むな、、、」
暗兎「あ、不味かったら捨てていいよ」
ライ「えっ、、、」
那衣「兎なりの優しさだから」
暗兎「なんだよ『兎なり』って」
那衣「なんでもない」
ライ「ふふっ、、ありがとう、、」
暗兎「おうよ」
那衣「今日の夜も待ち合わせしような、、ライ」
ライ「、、う、うん!」
暗兎「珍しいな 那衣から誘うなんて」
那衣「だって昨日楽しかったんだもん、、、」
那衣は少しだけ口元を緩める。
ライはその様子を見て、思わず笑った。
ライ「、僕も楽しかった、、」
那衣「、、、、」
暗兎「まぁ...案外悪くない」
那衣「まぁ警察に見つからないように来いよ。」
ライ「、、、ははは、、そうする。」
まだ友達とは言えない。
でも、昨日より少しだけ近い距離。
校庭から聞こえる歓声をよそに、三人は校舎裏で静かな時間を過ごしていた。
その時間だけは、誰にも邪魔されなかった。




