48 テレサ:お茶会
◆テレサ・ジャンビット
本来なら派閥内のお茶会というのに、緊張に包まれていた。
それもこれも王妃様のせいだ。
平然としているのは、招待客ではヴァレンのみだ。
王妃様は、3日前から滞在していたが、食事時に子供たちは同席させていない。
極力レイリーと会わせないようにしていた。
それに対して何か言われることは無かったが、準備中のお茶会会場の品々には質問の嵐だった。それに対応したのは私だが、本当に骨が折れた。
このお茶会が終わっても次は王都だ。
気が重い。
私は王都が好きではない。何より水が合わないのだ。
あの王都の水だけは苦労した。本当に美味しくない。
学生時代は、早くグレイモア領に帰りたいと常々思っていた。
ちょっと待って?
よく考えたらレイリーが居るわ。
水の件は、まったく気にしなくていいのに気が付いて心が少し軽くなった。
軽い軽食から始まったお茶会は、なんとも静かなものだった。
王妃様がジャンビットの燻製を褒めるのを皆が静かに頷いているだけだ。
ヴァレンは既に食べているので、大人しく料理を味わっていた。
それから王妃様が各領地の状況を聞いていく。
やはり何処の領地も魔物が増えているみたい。
直ぐに困っている状況ではなく、今のところは対処可能な状況らしい。
当初の予定とは違ったがお茶会はそれなりに有意義なものとなっていた。
王妃様に話を聞いてもらい安心する人が多かった。
そして、いよいよレイリーのスキルで購入したお菓子の数々が登場する。
さすがにこれには今まで大人しくしていた招待客の皆が声を上げ始めた。
「これは王妃様がご用意されたのですか?」
招待客の一人が言った。
「いえ、私は急遽参加させて貰っただけよ。」
「では、マシューワ様、このお菓子はいったい?」
本来ならここで、レイリーのスキルをあかし派閥を纏める手はずだったが。
「それはおいおいね。今はお茶会を楽しみましょう。」
派閥TOPのお母様のその言葉で、質問はこれ以上続くことは無かった。
お茶会は大盛況に終わった。
お土産に用意したレイリーのスキルで購入したお菓子も好評だった。
「これから大変な事になるかもしれないが、いつでも頼ってくれ。」
ヴァレンが嬉しいことを言って、帰っていった。
セシルとミレイも私とレイリーの事を心配してくれた。
本来なら派閥のお茶会という事で、もっと話が出来るはずだったのに残念だ。
「それでは伯爵、王都でお待ちしております。」
「準備ができ次第、我々も出発しますので、王妃様もお気をつけて。」
最後に王妃様を見送って、ひと段落とはいかなかった。
お茶会が終われば王都行きだ、ゆっくりしている暇は何処にもない。
だというのに我が息子は、のほほんとしていた。
「レイリー、王都へ行く準備は出来てますか?」
「何の準備が必要ですか?」
そう言われたらそうだ。この子に準備する物はなかった。
「クッション類は?」
「王都の屋敷についてから購入しなさい。」
「はい。そういえば王都に屋敷があるんですか?」
「ええ、グレイモアの屋敷があります。」
「へー。」
「派閥の者が滞在できるように、本館以外に別館も複数あります。」
「えっと、僕たちは?」
「本館に私の部屋がありますので、そこに。」
「わかりました。ジャンビットにはいつ帰れますか?」
「それはわかりません。」
本当にわからない。
レイリーのスキルでどうにかして欲しいという気持ちと、レイリーのスキルが通用しなければいいと思う気持ちで揺れ動いている。
お父様やお母様もきっとそうだ。
感じとしては何とかなって欲しい気持ちの方が強いお父様とスキルが通用しなければいいという思いが強いお母様といったところか。
私はその中間だ。
とりあえず私はレイリーの頭を優しく撫でた。
レイリーはキョトんとしているだけだった。




