44 テレサ:王妃様来訪
◆テレサ・ジャンビット
王妃様を伴って私たちは応接の間に移動した。
「王妃様、いくらヒルダと仲が良いとはいえ、急な来訪は困りますぞ。」
お父様が苦言を呈された。
「陛下から誤解をとくよう言われてまして。伯爵には迷惑をかけて申し訳ないと思ってます。」
「誤解?」
「私がレイリーの事を調査してたのはご存じでしょう。」
「まあ。」
「別段、私がレイリーをどうこうしようとは思ってませんの。その誤解だけはといておこうと思いまして。」
「では、何故、調べる必要が?」
「それは転生者に関わることですもの。仕方がないでしょう?」
「ふむ。確かに転生者が絡むとしたら仕方ないでしょうな。して我が孫が転生者であるというのは何処から出たデマなのか聞いておきたいですな。」
「転生者は転生者を知るということはご存じでしょうか?」
「いや、そうなのか?テレサ。」
「はい、黒の魔術師は、勇者の事を知っていたとお師様から聞いております。」
「私の娘が転生者であることは、もうご存じでしょう?」
「「「・・・。」」」
沈黙は肯定を現わしていた。
「娘には毎年、ユニークスキルを見せていたのですけど。100Pショップを見た瞬間に召し抱えたいと我儘を言いだしまして。」
「それでレイリーが転生者だと?第三王女の我儘なんていつもの事では?」
第三王女殿下の我儘は有名だ。
「まあ、そうなのですが、いつも以上に固執していましてね。ちなみにテレサ様は魔女殿の弟子、当然魔術師の里には連絡しておりますよね?」
「何の連絡が必要なんでしょうか?」
私はしれっと答えた。
「正気ですか?転生者の問題は個人や家族で、どうこうできるレベルではありませんよ。」
「うちの息子のスキルは、私が管理できると判断しました。」
「理解に苦しみます。伯爵はどうお考えですか?」
「我が孫はスキルもそうだが、性格も到底、勇者や黒の魔術師のようになるとは思えん。」
「確かにショップというスキルであれば、二人の転生者の様になるかと言われるとそうですね。ときにヒルダ、暫く見ないうちに美しい髪になっておりませんか?」
「な、なってませんわ。」
ヒルデガルト様は嘘が苦手だ。
「異世界にはシャンプーとリンスといった髪を洗ったり整える物が存在すると聞いてます。」
「初耳ですわっ!」
「あなたの髪からも、とてもいい匂いがします。なんの香りですか?」
「椿ですわ。」
この世界に椿という花は存在しない。
「椿ですか?どこにあります?」
「知りませんわ。材料がどこにあるかなんて知らないのは普通ですわ。」
「本当に嘘がつけない子に育って、将来の伯爵夫人になれるのか不安になりますね。」
「大きなお世話ですわ。」
「王妃様はシャンプーとリンスを何処でお知りになりました?」
私は気になったので聞いてみた。
「うちの我儘娘のスキルは錬金術師です。ずっとシャンプーとリンスを作ろうと必死にしていました。未だに出来ておりませんが。」
「王女殿下は自らが転生者と言っておられるのですか?」
「いえ。自分では隠しているつもりのようですが。」
うちと同じか。
「勇者と黒の魔術師の事があるでしょう?転生者ということを隠している者が他にもいるかも知れませんし。」
勇者と黒の魔術師は、危険人物だった為、転生者が危険視されているのは仕方ないのだけど。
「なるほど、納得はいきました。それで王妃様はどうされるおつもりかな?」
お父様が聞いた。
「グレイモア派閥でお茶会が開催されるのでしょう?是非、参加させていただきたいわ。」
「マシューワ。」
お父様がお母様に言った。
「せっかくお越しいただいたので、是非、ご参加ください。」
「ありがとうございます。」
王妃様のお茶会参加が決定した。
「陛下からの言伝がありますので、伯爵には個別で宜しいですか?」
「わかりました。」
お父様とお母様を残し私たちは部屋を後にした。




