31 テレサ:伯爵家にて
◆テレサ・ジャンビット
レイリーを私の部屋に案内させ、私たちはちょっとした打ち合わせをすることにした。
「テレサ、子供嫌いは治ったのか?」
さっそく兄が聞いてきた。
「どうかしら?」
「治ってはないだろう。レイリーが特別なだけだ。」
お父様が言った。
「父上、特別とは?」
「レイリーは転生者だ。」
「なっ・・・。」
「そうなんですか?」
ヒルデガルト様が私に聞いてきた。
「ええ、間違いありません。」
「テレサ、魔術師の里への連絡は?」
「してません。」
「お前は何をやってるんだ。何かあったらどうするんだ。」
「私が対処しますわ。」
「父上っ。」
「レイリーは大人しくて優しい気性の子だ。心配はなかろう。」
「母上はどう思われますか?」
「とても可愛い子よ。転生者じゃなければ直ぐにでも引き取りたいわ。」
「転生者が問題なのですね?」
「スキルは親子でないと管理できないもの。」
「なるほど。」
「ということは、うちで預かる件は無くなったんですの?」
「ええ、無くなったわ。」
お母様の答えにヒルデガルト様は、がっかりとした表情を見せた。
「それにね。王家が狙ってるようなのよ。」
「何故王家が?」
お兄様が直ぐに反応した。
「レイリーはユニークスキルだからよ。」
「いや別にユニークスキルなら他にも居るでしょう?」
「レイリーのは特別だからよ。」
「お義母様の髪から、とても良い香りがします。それも関係ありますの?」
「ええ、そうね。」
「私も使わせて貰えますの?」
ヒルデガルト様が私に聞いてきた。
「ええ、もちろん。」
「ヒルダ、そういう話は後にしてくれ。それでテレサとレイリーが来たのは単なる顔見世ではないのだろう?」
「伯爵家で大規模なお茶会を開催するわ。」
お兄様の問いに答えたのは、お母様。
「大規模とは?」
「大規模と言っても派閥内に留めるわ。」
「父上、よろしいので?」
「仕方なかろう。」
「当家も大討伐を終えたばかり、余裕がある訳ではないのですが?」
「不要な魔物素材はあるだろう?」
「あります。というか価値が低いものは廃棄処分にしようか迷ってるくらいです。」
「なら、何とかなる。詳細は見た方が早いかもな。不要な魔物素材は纏めておいてくれ。」
「既に纏めてます。」
「ならいい。」
「話し合いはこれくらいでいいかしら?早くレイリーの顔が見たいわ。」
「私もですわ。レイリーとお話ししてみたいし。」
「お話は厳しいと思います。きっとレイリーは寝ているので。」
私たち3人は打ち合わせを終えて、私の部屋へと向かった。
「なにこの子、凄くかわいいわ。」
ヒルデガルト様が覗き込むようにレイリーの寝顔にくいつく。
我が子ながら寝顔は天使と言っても言い過ぎではないくらいだ。
「ふふふ。」
笑いながらほっぺをつついていた。
さすがに子供二人の母親だけあって、扱いには慣れれいる。
レイリーが起きそうな気配はない。
「テレサ、クッションを貰ってもいいかしら?」
さっそくお母様からのおねだりだ。
「ええ。」
「なんですか?普通のクッションと違いますの?」
ヒルデガルト様が近くにあったクッションを手に取り、感触を確かめていた。
「私も貰っても?」
「ええ。」
お母様に許して義姉のヒルデガルト様は駄目とは言えない。
使用人たちがメインルームにあるビーズクッションを移動させていく。
残ったのはレイリーが現在使用しているクッションのみだ。
当然、レイリーがお気に入りの大きい物も残っていない。
「リサ、レイリーが起きたら。」
「はい、伝えておきます。」
後は大きな姿見か・・・。
お母様だけというわけにはいかないわね。
私は内心でため息をついた。




