27 テレサ:世話のかかる息子
◆テレサ・ジャンビット
まったくレイリーは世話がかかる。
恐らく前世では大人なのだと思っていたけども、5歳児のような迂闊さがある。
まあ5歳だから仕方ないのだけど。
「本当に迂闊な子だわ。」
私の膝の上で寝ているレイリーが起きないよう小さな声で言った。
「あら、でも本当に可愛い子じゃない。」
そう言ってお母様がレイリーのほっぺを優しくつつく。
「グスッ。」
何故か涙ぐんでるお父様の方は見ないようにした。
「なんですか、あなたは全く。」
「あの子供嫌いのテレサが、まさかこんな姿を見れるなんて。」
お父様の涙声も鬱陶しい。
「優しい子だわ。使用人に対してだけでなく動物にも優しいもの。」
「子供は動物には優しいものでしょ?」
「それは女の子の場合でしょ。男の子は少し違うわ。」
「確かにな。男の子は馬には憧れるが、それは騎乗したいが為だ。」
「レイリーもそうでしょ?騎乗したヴァレンを憧れの目でみてたもの。」
「まあそうだろうが、ただ撫でたいとは余り思わないんじゃないか?」
お父様にそう言われて、伯爵家の子供たちを思い出す。
動物をただただ撫でるような姿は見たことがなかった。
「でも動物に甘いのは勘弁してほしいわ。」
「まあ、それはな。次からの休憩が大変そうだ。」
「いいじゃない。飴は高い物じゃないんだし。」
お母様はレイリーには甘いようだ。
「お母様は、アドルやマーカスにここまで甘かったかしら?」
「あら、あの子たちは、普通の男の子のように腕白だったもの。甘くしすぎると怪我をすることもあるでしょ?」
何度屋敷内を走るなと言っても、通じなかったモンスター達。
最終的には私に合わないよう工夫してたけど。
「アドルやマーカスのような子が普通なの?」
「まあそうだな。」
お父様が答えた。
「抱っこされて暴れてたイメージがあるわ。」
「まあそうだな。」
「落ちたら危険じゃない。」
「子供はそんな事は考えないからな。特に歩くようになってからは目が離せない。」
「レイリーが普通でなくて良かったわ。」
「そうだな。」
「レイリーは抱っこされても暴れないものね。」
お母様がそう言った。
抱っこ慣れしてるのもあるのだろうけども、レイリーはきっと危険性を知っているから大人しくしてるのだろう。
「それに思いやりもあって、本当、理想の孫だわ。」
いつも周りに気を配り、自分のことよりもベルとリサの事を思いやっている。出来た息子だ。
「ねえ、テレサ、変わってくれないかしら?」
「駄目よ、そんな事したらレイリーが起きるでしょ。」
「私もレイリーを膝枕したいわ。」
「今日明日、領都につくわけじゃなし、次でいいでしょ。」
そうして今日の宿泊の町へついた。
伯爵派閥領内の為、私たちが泊まる場所も確保されている。
で、レイリーはというと馬車から解放された馬たちに囲まれていた。
これはもう完全に甘い物をくれる人と認識されているわ。
兵士たちが困って馬たちをいなそうとするも、どうしようもない状況だ。
結局、レイリーが全ての馬に飴を渡して漸く解放された。
「母上。」
はいはい、どうせ飴でしょう。
もう聞き飽きたわ。




