25 いざ出発
ついに伯爵家に向けて出発する日になった。
ウエストポーチの飴の残弾は0だ・・・。
なぜにこうなった・・・。
出発準備は当然、整っており今日は母上もウエストポーチを装着している。
そうなるとお婆様が欲しがるわけで、お婆様用も購入した。
俺が乗る馬車は6人がゆったり座れるくらいの貴族用だ。
「母上、おしりは痛くなりませんかね?」
「慣れね。」
痛いんだ・・・。
「クッションを敷いてもいいですか?」
「気休めくらいにしかならないわよ?」
「これとこれで2重に敷いてもいいですか?」
タブレットに表示させ母上に見せた。
「見ただけでは判らないわね。1個づつ購入しなさい。」
俺は正方形の低反発クッションと正方形のビーズクッションを購入した。
低反発クッションの方は厚めで300Pだ。
母上が馬車に乗り込み試しに座ってみた。
「中々よさそうね。あと5セット購入しなさい。」
「5セットですか?」
「一面に敷き詰めた方が座りやすいでしょう?」
なるほど。
俺は言われたとおりに7セット購入した。
「・・・。」
母上が何も言わず目の前に出てきた7セットのクッションを見つめる。
そして。
「ベル、あなたたちのもあるようよ。持っていきなさい。」
「ありがとうございます。坊ちゃまもありがとうございます。」
ベルとリサが礼を言って自分たちが乗り込む馬車にクッションを持って行った。
俺と母上が乗る馬車は、お爺様とお婆様が乗ってきた馬車だ。
なので向かい合わせで二人ずつ乗車する。
6人乗り馬車の座椅子一面を低反発クッションとビーズクッションで敷き詰めた。
これで俺のお尻も守られる・・・はず。
いよいよ出発の時間になり父上との挨拶をする。
「では子爵、次に会う時までな。」
「はい、伯爵様もお気をつけて、妻と息子をよろしくお願いいたします。」
「それでは、あなた行ってきますね。」
「ああ、気を付けて。」
ありきたりな挨拶が終わるといよいよ俺の番だ。
言いたいことは山ほどあるが一つだけで我慢する。
「父上。」
「レイリー、体調に気をつけなさい。」
「はい、僕が居ない間、一人で釣りに行かないでくださいね。」
俺が釣りに行けないのに、父上が行ったら不公平だ。
「・・・。心配しなくても、そんな暇はないよ。」
やはり領地経営というものは忙しいらしい。
待ってろよ、生贄君。
感動の挨拶を終え馬車に乗り込み出発した。
今の所、お尻は大丈夫そうだ。
「このクッションはいいな。」
「ええ、本当に。」
お爺様とお婆様が感動している。
100円ショップの低反発クッションが出始めの頃は、直ぐにぺちゃんこになって駄目になるものが多かったが、その後はあなどれない品となった。
そういう事が多いのが100円ショップの楽しみの一つでもある。
当たりの品もあれば外れの品もある。
外れの品も時が立てば進化する物もある。
実に奥深いのだ。
そうだ、今のうちに。
「母上、飴を購入してもいいですか?」
「・・・。」
あれ?返事がない。
「母上?」
俺は隣に座っている母上を見上げた。
「あなたは配りすぎなのよ。ウエストポーチの中にはいくつ残ってるの?」
「空っぽですが?」
「はあ・・・。」
母上は大きなため息をついた。
「いいじゃないの100Pなのでしょう?」
母上の対面に座ってるお婆様が助け舟を出してくれた。
いいぞ、お婆様。
「しょうがないわね。2袋購入しなさい。それであまり配らないようにしなさい。」
「えっ?だって休憩中とか兵士の皆に配ったりしますよ?」
伯爵家から一団で来てくれてる兵士の皆さんには休憩中に是非、飴を配ってあげたい。
「あなたという子は・・・。」
「いいではないか。ポイントの件なら、伯爵家に帰れば私が何とかしよう。」
おおー、俺の対面のお爺様が言ってくれた。
とりあえず、2袋購入し3人に飴を渡す、1つは自分用にして残りをウエストポーチに収納した。




