20 鑑定さんはやって来なかった
「レイリーにも鑑定結果が見れるでしょう?」
おばあ様にそう言われたけど、にもってなんやねん?魚か?
「テレサがスキルを使えばこうして親子3代見ることが可能なのよ。」
ふぁっ?
どういうこと?
もしかしなくても、これ母上のスキルなのか?
「お母様、レイリーが困惑してるわよ。」
「どうしてレイリーが困惑するのかしら?」
「きっと自分にスキルが発現したと勘違いしたのよ。」
「スキルが発現するわけないわ。それにたとえ鑑定が発現したとしても知識がないもの。それくらいレイリーも理解してるわよ。ねえ?」
ねえって言われても、知識って必要なん?そんなの俺の知ってる鑑定さんちゃうんやけど。
「レイリーには言ってなかったけど、私のスキルは魔物素材鑑定よ。」
ほうほう。
「鑑定というのはね。目利きの上位版と言ってもいいわ。自らに知識がないと鑑定結果は解らないのよ。」
何その鬼仕様。
鑑定選ばなくて良かったわ・・・、ありがとう100Pショップ。
「母上が知らない魔物素材は鑑定出来ないって事ですか?」
「ええ、そうよ。」
「レイリー、テレサはね魔術師の里に弟子入りして、この世界の魔物素材を勉強したのよ。」
ほえー、めっちゃ勉強家やん母上。
「そうしないと役に立たないからよ。」
母上ちょっとテレてない?
「お母様もあんまり説明なしに突拍子もない事やり続けるとレイリーに嫌われますよ。」
「えっ、そんな事ないわよね、レイリー?」
いやそんな事ありますよ・・・。
「もう私の事を嫌わないで頂戴。」
ジト目で見てたら再び抱っこされた。
「そうだわ、この端切れをレイリーにあげるわ。それで許して頂戴。」
いや、そんな端切れ貰っても。
「レイリー、端切れと言ってもシルバーウルフの毛皮は高価なのよ。せっかくだから頂いてポイントにしてみなさい。」
そう言って母上がタブレットを渡してきたので、俺は抱っこされたままポイント変換してみた。
な、なんだとっ!
あんなちっぽけな端切れが・・・。
うそやん。
「レイリー。」
母上に呼ばれたので、サッとタブレットを渡す。
「あのサイズでも1万ポイントあるのね。」
凄いなシルバーウルフ・・・ローンウルフなんて1頭で400Pしかないのに。
「レイリー、機嫌を直してくれたかしら?」
「はい、おばあ様。」
1万Pも貰えたらシマエナガ君の事や鑑定の事、綺麗さっぱり水に流せますわっ!
「こうやって親子3代スキルが共有できるんだから私にもレイリーのスキルが見れるといいのに。」
「お母様、スキルの共有は親子だけなんだから仕方ないでしょう。」
「なるほど、という事は僕の子供はタブレットが見れるわけですね。」
「ええ、そうなるわね。」
そういうスキルの仕組みは最初に教えとけよ、教会め。
それとも本来は、家庭で習うものなんだろうか?
翌日の朝食は、お爺様、おばあ様を含めた5名で摂る。
おばあ様の機嫌が頗るよかったのは、きっとシャンプーとリンスのお陰だろう。
「やっぱりレイリーは連れて帰るわ。」
そんな事まで言い出す始末。
「ダメに決まってるでしょ。シャンプーとリンスは定期的に送ります。」
母上がキッパリと断った。
「この屋敷の女性使用人全員が使ってるのかしら?」
「ええ、そうよ。仕方ないでしょ?ベルとリサはレイリーにとって母親同然なんだし、二人が使っていたら他の使用人も使いたくなるわ。」
「そう。」
いやベルとリサに認めたのは機嫌が良かった母上であって俺じゃないんやけど。でもそんな事を思っても口には出さない。
朝食が終わると俺はいつもの日課にうつる。
そうキャスティングだ。
こういうのは毎日の継続が大事。
今日は父上に加えお爺様まで参加する。
その為、キャスティング方法を俺が懇切丁寧に伝授していく。
「レイリーは上手だのう。」
お爺様に褒められた。
このままいけばバスプロ顔負けになるんじゃなかろうか?
「こうやって狙った所に投げれるようになれば実釣に行けます。」
「ふむふむ。」
「ろくに投げれないうちに釣りに行くと僕が大変です。」
「そうか。レイリーには迷惑を掛けたくないなあ。」
以前、俺に迷惑を掛けた父上は苦笑いしていた。
「レイリーは将来なにかやってみたいと思うことはあるのかの?」
「ずっと釣りをしていたいです。」
「ふむ、しかし領主というものはそう暇はないのだが。」
「どうにかなりませんかね?弟が出来れば一番なんですが。」
そう言ってチラっと父上の方を見たら、目を逸らされた。
「それは無理だろう。元々テレサは子を産む予定は無かったのだし。」
「いや僕が生まれなかったらジャンビット家は誰が紡ぐんです?」
「それはなマーカスが継ぐ予定だったんだ。」
誰ぞそれ。
「マーカスさん?」
「伯爵家の次男でレイリーの従兄にあたるな。」
なんだと、そんな素敵な従兄がいたのか。
「じゃあその子が継げば僕は晴れて自由?」
「レイリーは子爵家を継ぎたくはないのか?」
「先ほども言った通り釣りがしたいんです。もちろん大討伐後はお手伝いします。」
ポイントゲットのチャンスは逃しませんっ。
「ふむ、欲がないのか強欲なのかわからんな。」
「レイリーは釣りに対して強欲ですね。」
父上がそんな事を言った。
「お爺様、伯爵家には伯爵位以外の爵位はないのですか?」
「うむ。全て派閥の者に譲渡してあるから伯爵家にはないのう。派閥の者で爵位が2つあるのはベスナー家だけだな。といっても1つは継承できない爵位だがな。」
ふむふむ。
「という事は、従兄のマーカスはこのままいけば無爵に?」
「そうなるな。」
おーなんて可哀想なマーカス君、ここは俺が一肌脱いであげよう。
「レイリー、勝手に決めるのは良くないからね。」
何故か父上から注意された。
「しかし父上、マーカス君は伯爵家に生まれながら爵位がないなんて可哀想じゃないですか。」
「自分が釣りをして暮らしたいからと他人に爵位を渡すのはダメだよ。」
「父上、他人ではありません。従兄じゃないですか。」
「さっき知ったばかりの従兄だけどね。」
くっ・・・。いつもはチョロい父上もさすがに爵位の事となるとしっかりしてやがる。
「釣りとはそんなにレイリーを夢中にさせるものなのか?」
さすがにキャスティング練習しかしてないお爺様に釣りの楽しみは理解できないだろう。
「実際に魚を釣ると楽しいですね。テレサも楽しいと言ってましたし。」
「なに、テレサもキャスティングというものが出来るのか?」
「出来ませんよ。毎回、僕が投げて母上は巻くだけでした。」
「テレサらしいと言えば、らしいな。」
お爺様が呆れていた。
キャスティング練習が終わるとお茶会会場設営のお手伝い。
母上とおばあ様がアレやコレやと相談し100Pショップで購入する物がどんどんと増えていく。
ぎゃー
俺の大事なポイントが・・・。
心の悲鳴が心の中でひっそりと響き渡る。
お茶会当日次から次へと来訪してくる母上の友人に挨拶していく。
「セシル・ストレングと申します。」
「レイリー・ジャンビットです。母上がいつもお世話になっております。」
「まあ何て可愛らしいのかしら。」
母上の友人がニコニコと笑っている。
「ミレイ・フューバーです。」
「レイリー・ジャンビットです。母上がいつもお世話になっております。」
「テレサ様、何ですかこの可愛い物体は。」
「私の息子よ。」
俺のありきたりの挨拶は概ね好評だ。
そして。
「ヴァレン・ベスナーだ。」
一人毛色の違う人が来た。
言うなればタカラヅカ的な?
「何故に御大が?」
「孫の顔を見に来ただけだ気にするな。」
「子爵も久しいな。」
「あ、ああ。」
ん?なんか父上の対応が・・・もしかして昔?
「そちらがテレサの子か。」
「レイリー・ジャンビットです。母上がいつもお世話になっております。」
「なるほど、賢そうな子だ。私に言えばいつでも剣の稽古をつけてやるからな。」
「その時がくれば是非。」
永遠に来ませんよ、そんなもの。
俺は前世で培った社交辞令で応対した。
さて母上たちがお茶会中は待機だ。
ぼーっと待ってても暇なのでキャスティング練習をする。
俺がキャスティング練習を始めたら、父上とお爺様も合流した。
「時に父上、ヴァレン男爵夫人とはどのようなご関係で?」
ワクテカしながら聞いてみた。
「ヴァレン男爵だな。」
なんだとぅっ、継承できない爵位持ちってあの人か。
「ふははは、レイリーは男爵と子爵の関係が気になるようだな。なあに大したことではないグレイモア伯爵派閥の男子であれば誰しも男爵には剣で負けておるからな。」
「なんだ色恋的なものじゃあないんですね。」
「男爵は自分より弱い男性には興味がないからね。」
父上が言った。
「男爵より強い男性って居るんですか?」
「少なくとも派閥内には居なかったな。」
お爺様がそう締めくくった。




