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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は競う
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110話 弱点

こちら、作者のミスで三本同時投稿となった三本目です。

ストックは全部なくなりましたが、まだ前話、前々話を読んでない方はそちらをどうぞ。



 それは、小さな失敗だった。

 だが、その失敗はあまりにも大きく、そして後の運命を左右するものであった。



――――――



(ああ、だから俺はこんなにも脆いんだ)


 高速の斬撃。

 ハジメの首を狙ったそれを、ギリギリで回避する。

 後方に自ら倒れることにより、回避し、自らの頭の上を通る斬撃の残像を目で追った。


「『マッド』」


 水魔法と土魔法の混合といえる魔法を使い、背中から地面に落ちる自らの体を、泥のクッションにて衝撃から守った。


「『ディグ』」


 だが、戦闘の中、地面に仰向けに寝転がっているだけ等、言語道断とも言えよう。

 そのまま、敵に切り伏せられたところで不思議でもない状況だ。

 だから、ハジメは地面に隠れる。『ディグ』とは単なる穴を掘る魔法だ。それを泥沼の上で使い、自らを土の下へと沈めたのだ。

 もちろんだが、ハジメは予め風魔法により呼吸を確保している。そのため、魔力が続く限りは何時間と経とうが地面に潜っていられた。


「『義:不義理の剣』」


 だが、ルティスはハジメの上手を行った。

 つぶやきの様に吐かれた言葉は、まるで魔法の様に魔力を纏い、その手に持つ剣を振るった。

 一つ目の斬撃にて地面が割れる。地を斬ったのだ。断裂とまではいかないが、会場を真っ二つにするほどの切れ込みを大地に刻み込んだ。

 しかし、それだけで終わらない。

 二つ目の斬撃は横なぎに。三つ目の斬撃は斜めに切り払われ、四つ目、五つ目と会場を切り刻んでいった。

 それは、まるで誰にも、どんなモノをも意に返さない。我が道を斬り進む剣であった。


 そして、切れ込みが十に達するころに、空に巨大な魔法陣が光った。


「こっちだ白髪野郎!」


 あえて汚い言葉で罵る様に叫ぶハジメ。

 それは、自らの位置を知らせると同時に、相手の注意を惹きつけるためのモノであった。


「『メテオレイン』」


 土魔法において、最高の殲滅力を誇る魔法。

 空高くに魔力にて生成された巨石をそのまま落下させるといった何とも豪快な魔法であった。

 空に光る魔法陣はあくまでも目印であり、本来の魔法はすでに発動している。そして、それは目印である魔法陣に目掛け、落下していた。


「『重力魔法グラビティ:ポイント』」


 次にハジメが使ったのは、ハジメのとっておきともいえる重力魔法だった。

 だが、その効果はルティスに対して効果的ではない。

 ポイントと呼称された、範囲を絞った一点集中型の重力魔法だ。

 効果範囲は狭く、複数の対象を拘束できないという弱点はあるが、広範囲に対する重力魔法よりもはるかに強力なモノであった。

 しかし、既にその魔法はルティスに対して効果がない事は実証済みであった。

 ではなぜ今使ったのか。それは、空から飛来するものに対して使われたのだ。


「『隕石よ、来たれ(メテオコール)』」


 空に作り、隕石を模った巨石を、重力魔法を使い加速させたのだ。

 巨石は、大気の影響を受け、摩擦により赤熱する。


「『ウィップ』」


 そして、先に通用した拘束をルティスに施した。

 それは、僅か数秒の時間稼ぎであろうが、その程度あれば巨石はルティスの元に到達する。


「『付与:ライトニング』」


 だが、ハジメはさらに魔法を重ねた。

 雲下を落下する隕石に対して、雷を纏わせた。

 それは、一般的にはエンチャントと呼ばれる属性を武器に纏わせる魔法の応用。雷と言う風属性に属する強力な威力を持った属性を巨石に纏わせた。


「『アクア』」


 逆に、ルティスの足元には木の根に続いて水を発生させた。

 巨石到達までに、最も効果的なダメージを出すための準備である。

 そして、最後の仕上げとして、自らの魔法にて学園が傷つかないように結界を張った。

 しかしこれも、すべての衝撃を逃がさないために張った結界であったものの、逆に言ってしまえばその結界の内部では、満遍なく逃げ場を失った衝撃波が暴れまわるという更にその魔法の威力向上につながっていた。


――極級魔法『天照石』


 今現在。周囲の被害を考えて撃つことのできるハジメ最大の魔法であった。


 赤く燃え上がり、雷光を纏うその巨石。その姿は、空に光る太陽のようであり、それは一人の男のために作り出された魔法だった。


 天変地異ともいえるその姿を空に浮かべ、迫る巨石が、遂に会場を呑み込んだ。

 土壇場であったが、何とか最後に張った結界が周辺を守っていることにハジメは安堵の息を漏らす。

 そして、魔法は全力をもってしてルティスを災禍の渦へと陥れた。


 轟音が鳴り響き、巨石は地面へと着地する。音速を超えた影響であるソニックムーブが死をまき散らし、雷雨の最中である様に雷が降り注ぎ、炎が地面を焼いた。

 

 だがしかし、ルティスに傷一つ与えるに至らない。


「『義:不義理の剣』」


 それどころか、空から降った隕石をルティスは真っ二つに切り裂いた。

 その風圧により、纏われた雷は解かれ、炎はかき消された。

 会場に吹き荒れていた嵐は、その一太刀によって静まってしまったのだ。


 隕石、それに結界と巨大な魔力を消費したハジメは、肩で息をするほどに消耗していた。

 今までのもろもろも含めて、ハジメは自らの持ちうる魔力の大部分を消費していたのも大きかった。


(ああ、くそ。だめだ)


 もとより、魔法が効かないという相手の特性上、ハジメとは相性が最悪であった(そも、魔法だけが効かないかは不明である)。


 次は、次はどうする。そうやってハジメは追い詰められていた。


 もともとは足止めを目的とした戦闘ではあったが、先の魔法を無傷で受けきるような相手に、この学園に在籍する生徒や教師たちが敵うとは思えない。


(ここで、ここで俺がやらないと……!)


 もとより、流れ者であったにもかかわらず、最後には一国の主となったハジメである。

 そんな、責任感の強いハジメだからこそ、ここでは引くという選択肢はなかった。


「……身体機能を強化しないのか?」


 そこで、ルティスが何を思ったのか、そんな声を上げた。

 

 そんな疑問を持つのは、簡単な話であった。

 もともと、魔法の攻撃には強いルティスであはるが、拘束には弱かった。それは、先の戦いで示されている。

 そのため、身体強化を使い、身体能力を上げた状態による体術で組み伏せられ、その上で拘束を解けないように全身を凍らされでもしたらこの戦いはもっと簡単に終わっていた。

 それこそ、先の異様な隕石を作り出すことのできるハジメが、もし身体強化の魔法を使えば、この戦いはルティスの捕獲と言う結末で間違いなかっただろう。

 しかし、ハジメは身体強化系の魔法を使わなかった。その結果、ハジメはルティスを捉えることができず、全身の拘束をすることはできなかった。


 いや、言い方を変えよう。ハジメは、身体機能を強化することはできないのだ。


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