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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は競う
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109話 槍

こちら、作者のミスで三本同時投稿してしまった中の二本目です。

同様のあまり手が震えてますが、前話を読んでいない方は、お先にそちらをどうぞ。


「ハァ……ハァ……」


 リーリャの呼吸が乱れる。

 左腕を失った。

 眼前にそびえるのは、何時か――竜であったころに自分が望んだ、同類であった。


 それは、世界的には古竜と呼ばれる存在だ。

 最後に確認された古竜は約二千三百年前。それも、確認された古竜自体その一体だけである。

 もちろんだが、その古竜とは、ほかでもない初代勇者に討伐されたリーリャの前世である。

 だが、遂に二体目の古竜がその姿を現した。


「弔竜。弔『竜』か!」


 左腕を失い、混乱の中に立ったリーリャだったが、その程度は目の前の過去の自分と同じ存在に比べれば些細な事だった。

 その喜びをかみしめると同時に、今自分の立つ状況を確かめた。


 どうあっても、リーリャは目の前の敵と戦うしかない。

 もうすでに相手は学園の中へと侵入することに成功している。


「……まあ、なすべきことは一つ、だな」


 先ほどまでは、幼い子供と知ってか殺すことをためらった。

 だが、今は違う。やっと出会えた同類。だが、その同類は目の前にて敵意をむき出しにしている。

 ならば、リーリャがやることはただ一つだった。

 

「我は、お主を倒す」


 そう、リーリャにとってはいかに同類であろうと、今は敵であり、倒すべき相手なのである。

 そして、リーリャはなくなった左腕の分、崩れたバランスを保ち、目の前の古竜へと相対した。


 眼前の古竜は、確かに竜であった。

 高さはは五メートルほどだろうか。厚い鱗に覆われ、どんなものであろうと貫きかねない牙を揃えていた。

 だが、それは上半身に限った話であった。

 長く伸ばした首は胴へと繋がり、どうには人の様に一対の腕が生えている。

 四足歩行であったリーリャとは違い、明確に手と捉えられる腕を持っていた。

 だが、問題は下半身にある。その竜の下半分には、足と言えるような一対の肢体はなかった。

 だが、代わりに生えていたのは尻尾だ。そう、それはリーリャの左腕を穿った尾と同形状のモノ。長さにして、自らの背丈よりも少しばかり長い。それが、数にして合計八本も生えている。

 それを器用に足代わりとして、ハンドグンドは地の上に立っていた。


(恐らく、あの触肢の一つ一つが我の腕を貫いたように、先の木の枝と同じ『なんでも切り刻む力』……いや、『なんでも貫く力』)


 あの木の枝に宿っていたハンドグンドの力は、今はあの尾に宿っている。

 そして、その尾が八本。蛇の様にリーリャを睨んでいた。


(あ、これは不味――)


 一本目がリーリャを襲う。真っすぐリーリャを突き刺すようにして飛来する尾を、リーリャは咄嗟に避けた。

 幸いといえるのか、相手は尾を槍の様にした点での攻撃しかしてこない。しかし、不幸なことにその点の攻撃は一つ一つが丸太の様な太さを持っていた。

 二本、三本と尾はリーリャを襲う。だが、そのすべてをリーリャは風を纏い華麗に回避した。


 速度は、並。あまりの大きさに圧倒されるモノの、リーリャの速さからすれば遅いからこそ、何とか回避することはできている。

 だが、それと同時にリーリャは攻めきれずにいた。


(我に攻撃を仕掛けるのは最大でも三本、我を追いかけるための移動用が二本)


 その計算において、残る何の役割も与えられていないハンドグンドの尾は三本。

 だが、リーリャにはその尾が何のためにフリーでいつづけるのかわかっていた。


(おそらく、あれは迎撃用。我が攻撃をかいくぐった先にて、迎え撃つためのモノ)


 それはつまり、攻撃の機を見計らったリーリャに対するカウンターとして、三本の尾を遊ばせているのだ。

 故に、リーリャは迂闊に相手の懐へ飛びかかることはできない。


 そして、今リーリャは左腕を失った本調子とは程遠い状態だ。


 左腕は使えない。それは、つまり先の様な水の弓矢といった遠距離攻撃はできないのだ。

 

――打つ手なし。


 その言葉が脳裏に過った。


(いや、だが。そうであろうと!)


「うぬっ……!?」


 疲れか。はたまた左腕を失った精神的なショックか。

 リーリャは相手の動きを読み違えた。

 回避はできた。しかし、その先がダメだったのだ。

 一本の尾を避けると、その後ろに控えるように出された尾が不意打ちの形でリーリャへと襲い掛かったのだ。

 なんとか、その尾に対する回避は間に合った。だが、リーリャは体勢を崩し、しりもちをついた。


 それは、戦いの中では致命的な隙であり。

 そして、それを見逃すハンドグンドではない。

 ハンドグンドは、移動用の二本の尾を残して、残りすべての尾をリーリャへと向けてけしかけたのだ。


 必殺の一撃をもってして、尾はリーリャへと襲い掛かった。




――――――――




「リーリャさん、どこに行ったんだろう……?」


 サリアスは学園前の校門にて、そんなことをつぶやいていた。


 何故サリアスがリーリャとはぐれてしまったかといえば、単にサリアスが優しすぎたというのがあげられる。

 大通りにうずくまっていた怪我人の介抱をしようと目を向けると、次の瞬間にリーリャはサリアスの視界から消えていたのだ。

 どうしたものかと思ったのだが、うめく怪我人たちを放っておくこともできず、何とか近くの露天の幕などを臨時で使用した応急的なベッドに並べた後に、学園に向かったのだ。

 

 そして、リーリャはといえば、とっくの昔にハンドグンドの戦闘に伴い学園の中へと戦場を移動させていた。


 故に、サリアスは、とある方法をとってリーリャの位置を特定しようと考えた。


(リーリャさんのことだ。大きな問題の中にいるかもしれない。なら、一番騒ぎの大きなところに向かえば……)


 そして、その考えの最中に雷鳴が轟いた。

 晴れ渡る空の中走る雷光。明らかな魔法による現象だった。


(誰かが、戦っている……?)


 それが、リーリャによる魔法なのか、それともリーリャがその魔法に巻き込まれているのか。

 正解は、リーリャにとって全く関係ない現象であったのだが、そんなことは知らないサリアスは、真っすぐにその雷光の落ちた場所を目指した。


――新人大会の会場である、第一訓練場へと。

 


 


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