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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は競う
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105話 混乱


 学園は混乱の只中にいた。

 空からの来訪者。大通りの行軍。謎の怪鳥。

 どれも一つで大事件となりうるものがそろう中、学園を混乱に陥れた原因は、他にあった。


「B班は第四から第七までの訓練場の確認を! C班は一時的に第二訓練場に避難した人たちの警護を続けて!」

『リラ副会長! こちらA班。中庭で交戦中! 何ですかこいつらは!』

「A班、無理はしないで。とにかく今は一般客の避難を最優先に!」

『了解!』


 リラの指示の元、通信用の魔道具の先にいる生徒たちが声を揃えて気合を入れる。

 今だ生徒たちの元気そうな声を聞いて、リラは胸を撫でおろす。

 現在、クラマキナ学園の各地にて、ほんの少しばかりの人間味を持った人型の異形が暴れまわっているのだ。

 そのため、学園自治をしている生徒会を中心として、一般客や下級生の避難を行っている。


(一応、死者の報告はまだきてない。お客さんの中に戦える人がいたおかげで被害が少なくなっているのは不幸中の幸いってとこね)


 通信機からの報告を受ける中で、そこまで被害が大きくないことに安堵する。

 しかし、一般客には重軽症者が多数出ていることには変わりなく、その多さに回復魔法を使える生徒の手が足りてない。

 その上、魔法の腕では生徒たちよりも熟達している教師達は、貴族客の護衛に当たっているために期待することはできないだろう。

 しかし、ただ一人、その護衛の任から外れている教師がいた。

 そして、各班への支持を終えた合間、その教師へと通信機を繋げた。


『……こちら、アーディベルト』

「先生? 重要参考人……エステラさんに連絡は?」

『つかないだよね、これが。今軟禁してた塔に向かってるけど、おそらくもぬけの殻だろうね』

「えっ……? それって、不味くないですか」

『不味いよ。彼女がこの騒ぎを裏で手引きしてる可能性だってあるからね』

「た、確かに」

『なにせ、彼女には未知な部分が多すぎる。こっちはもう少し探すから、そっちは頼んだよ』

「はい、わかりました」


 そこまで会話を続けたところで、通信がアーディベルト側から切られた。

 ぷつりと、切られた通信機が音を立てる中、リラは内心で思う。


(あーっ! こんな時にあの会長は何処にいったの!)


 肝心な時にいない責任者への怒りを募らせつつも、リラは副会長、そして会長代理としての仕事をこなして行く。



――――――



「――この学園の生徒会は優秀だね、エステラ」

「ああ、本当に、素晴らしいと思うよ」


 学園にて、誰かがいるはずの無いとある場所。

 人払いがされているのか、もしくはそう言った人が無意識にこの場所に近寄らないようになってしまう魔法が掛けられているのか、そこにはたった二人の人間しかいなかった。

 いや、あるいは二匹と言った方がいいだろうか。


――『地よ爆ぜろ』


 唯一その場に存在する二匹のうち、一匹がもう片方へと牙を向けた。

 その魔術・・が発動を示すと、地面が膨れ上がり、地雷がそこに埋まっていたかのように爆発した。


「ちっ……、外したか」

「いやぁ、感動の再会なんだから、もうちょっと話そうよ、エステラ」

「お前に話すことなんてないさ、魔竜!」


 敵意をむき出しにして、エステラは魔竜へと攻撃を続ける。

 風は踊り、土は揺れる。

 しかし、エステラがこの学園のことを配慮している限り、その魔法は魔竜へとは届かない。


「まったく、ここにいたのがあなただとは思いませんでした。が、ルティスとハンドグンドを連れてまでここに来た価値はありました」

「そうね、よくあの二人をたきつけることができたものよね」


 魔竜が嬉しそうに言葉を零し、それを腹立たし気にエステラが声を荒げる。


「ルティスは私に借りがありましたから」

「へぇ、そうかい。なら、ハンドグンドは何でなのかね!」


 エステラが言葉混じりに腕を振れば、風の刃が空気を切り裂く。

 それを魔竜は手に持った杖で弾いて消し去った。

 そんな戦闘の中でも、魔竜は嬉しそうに懐かしき同類の問いへと返答する。


「彼が最も斬りたいであろう相手が、この学園にいましたから」

「それはおまえのことじゃないのか?」

「はははっ! 確かに、私も彼に相当憎まれてますからね。しかし、私よりも人間を殺しているものがいたのですよ」

「……それは、誰なの」


 一拍。エステラが攻撃の手を止めて、魔竜へと問いを投げかける。

 にやにやと、小さな笑みを浮かべながら魔竜は答える。


「リーリャと言う名の少女をご存じでしょうか?」


 その言葉は、静まった二人の間で嫌によく響いた。

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