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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は競う
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94話 明日へ備えて

書いてて、この描写いるかな……? って思いましたが、書いてしまったので載せます。



「ふぅ……」


 一息ついて、自らのいる場所を見渡してみる。

 天を突くような山脈が立ち並び、眼下にある雲海に大地が沈んでいる。

 おかしい、絶対におかしい。


「さっきまで洞窟にいたよな……俺」


 つい先日まで死霊渓谷を歩き、遂に地上に帰還したと思えば、地上を通り過ぎて雲の上まで来てしまったのだ。

 人として絶対に方向音痴というレベルを超えて、何かの因果関係に呪われているような結果に、不安しか抱けない男は、自らよりも下にある雲海を見下ろして一言。


「飛び降りてみようかな」


 自分は、死なないのだし。

 思い立ったが吉日。そうして、男は恐ろしく高い場所から飛び降りたのだが……。


「ぬ、ぬぉぉおおおおお!!!!!」


 突然現れた飛行型の魔物に掴まれて、飛び降りた場所よりもさらに高い所へと旅立っていった。



―――――――――――――――



「嘆かわしい、嘆かわしいよ」


 それは、明確な誰かに向けた言葉ではない。

 だが、その言葉は自らの持つ役割として放った言葉だ。


「この私が、『弔』の名を冠していながらこの体たらく。呆れてしまいますよ」


 そう言いながら、彼はその手に持ったイカ焼きに噛み付き、味わう様に咀嚼をしながら噛み千切った。

 ムラサキイカというこのイカは、焼くと何故か青色に染まるという何とも食欲をそそらない見た目をしているのにかかわらず、更に不明なことに祭りごとの際には悉く露店の商品として出される謎の食品だ。

 なお、発見者が『創物』の勇者ということもあってか、見たまんまの名前になってしまっている。

 

 そんなイカの死体を噛み、咀嚼し、嚥下する。

 ああ、なんとも愚かしい。食物という観点ならまだしも、なぜ無意味に遺骸を貶めるのか。

 最も、その愚かしきものを斬り捨てることもできない自らに感じていた。


 かの名は弔。死を弔うモノ。

 その手に持った棒きれを用いて、罪を弔うモノ。


 だが、まだその時ではない。

 あと二人。その時に必要な配役がそろっていないから。


 そして、自らが最も斬り殺すべきであろう相手が、まだ現れていないから。



―――――――――――――――



「一人」


 エステラは一人、そうつぶやいた。

 しかしながら、そこに現れた人物にその言葉を聞かれていたようで、


「えっと、寂しくなったのかな?」


 ぽりぽりと気まずそうに頬を掻きながら現れたの優男は、一度部屋に入るために開けた扉を閉めようとしていた。

 その行為の意味に気づいたエステラが、取り繕う様に言葉をかける。


「おい、何を勘違いしている」

「いや、だって。そんな窓に向かって黄昏つつ、『一人』……なんて言ってる現場に遭遇したらさ……」

「ち、違g……こ、これはだね、妙な気配が学園の中に入ったという意味でね」


 少しばかり恥ずかしさを隠しつつ、問題の報告すべきことを言葉にする。

 エステラを揶揄う様にしていたアーディベルトは、その言葉を聞いた時に表情を変える。


「そうか。それで? その妙ってのはどういう意味なんだ?」

「まだ、警戒しているか」

「あたりまえだよ。まだ、君は信頼できるほどの材料が揃ってるわけじゃない」

「それじゃあ、なんで私を学園に入れたのかな……」


 会話の中での問いに、アーディベルトは腰に差した短剣を見せる。


「……いつでも対応できるってことか」

「ま、どうとでも捉えてくれ。それで本題の方はどうなんだ」


 警戒を続けつつも、情報を求めるアーディベルトを見て、やはり信頼を得るには協力的になるしかないか、と選択をとる。


「私の同類、だと予想できるね」

「蘇りし古竜、か?」

「ああ、詳しくはわからないが、同類の気配がする」

「そうか……」


 その言葉を聞くと、アーディベルトは通信用の魔道具を取り出しどこかへと報告を始める。

 それを静かに見守っていたエステラは、自らの情報を起点に行動を起こすアーディベルトを見て思う。


(案外、警戒というのもポーズだけなのかもしれないね)


 その予想に、何かもどかしいものを覚えつつ、エステラは思考を再開する。

 それは『教竜』エステラの力を用いて、未来を計算する力。

 だが、足りない。わかるのだ、まだエステラが未来を計算するには、パーツが足りない。

 竜でもなく、この学園の生徒でもなく、魔物でもない何かが。

 故に、その不鮮明な未来は、エステラにすら予想できない。


 備えよ、来るべき日に。




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