7-3 レティ姉たち、そして僕
僕が王立学園に入学する頃、レイ兄はシャンバル帝国の大学を卒業して外交官になった。僕たちが小さい頃、ゴルド共和国の侵攻があって10年もの戦争があったんだ。
僕は小さかったから、ほとんど記憶がないけど、レイ兄は、戦争を起こさないように国同士の対話が大事だと痛感したんだって。
それと同時にレイ兄は、長年婚約者だったソフィア・サウスランド侯爵令嬢と結婚した。サウスランド家は北部の大貴族で、嘘か誠か、あのリリアさんが読んでくれた神話まで遡れる家系らしい。
ソフィア様は、プラチナブロンドの髪に水色の瞳で、まるで妖精みたいなんだ。僕は初めて会ったとき魂を抜かれるかと思ったよ。で、今でも僕はソフィア様のことをソフィア様と呼んでいる。
レイ兄とソフィア様の間には、男女の双子の赤ちゃんが生まれた。顔はそっくりなんだけど、男の子は金髪に水色の瞳、女の子はプラチナブロンドの髪に緑の瞳。ウォルター家は代々、緑の瞳が多いんだよ。
僕は16歳にして叔父さんになったけど、年の離れた弟妹ができたみたいで嬉しくて可愛がっているんだ。
◇
同じ頃、シャンバル帝国の留学から帰ったアル兄と、王立学園を卒業したレティ姉は、ともにリンデン大学に進学した。アル兄は経済学部、レティ姉は歴史文学部、レティ姉は同時に教育学も専攻した。
リリアさんは「男爵様に教育の機会を頂いたから、サラやレティシアさんと知り合えた」って言っていたんだって。
レティ姉は、知識としては教育に恵まれない人も多くいると知っていたけど、実際リリアさんの話しを聞いて教育に目覚めたらしい。高等部は王都にしかないから各地方にできれば、優秀な人が学べる機会がふえるんじゃないかって。
何と言ってもウチは、魔王の公爵家だから、レティ姉は父上にそのことを進言したらしいよ。たぶん父上は、誰よりも教育の必要性は感じているのだろうけど、娘が言うからといってホイホイと乗るような人じゃない。「叶えたくば自ら動きなさい」の一言だった。
それでレティ姉は教育学を学ぶと決めたわけ。そして、まずはポートフォード領に高等学院を創りたいのだそうだ。そして人と知り合う機会、人生を開く機会を与えてあげたいって。
でもね、きっとレティ姉が望めば、アル兄が必死になって実現するんだよ。ウォルターの父上と母上そっくりだ。
レイ兄とソフィア様が離ればなれの長い春なら、アル兄とレティ姉は、見ているこっちの奥歯が痛くなるくらい甘々カップルだ。特にアル兄は、学園祭でレティ姉が狙われてから、レティ姉に対する過保護が過剰だ。
大学生活を始めるにあたり、アル兄はレティ姉と一緒に暮らすと言いだし、レティ姉は普通の大学生と同じように自炊して暮らしたいと言いだした。
そんな不謹慎なこと、母上がお許しになるわけがない。
ウォルター家はリンデンの手頃な屋敷を購入して改装し、アル兄とレティ姉と、学生4人の6人での共同生活を許した。自炊はいいけど掃除洗濯は通いの人を雇うことになった。要するに母上のスパイだ。それに学生4人も公募したと言っても母上が選考されたんだ。
(レティ姉、僕たちはいつまでも母上の掌の上だよ!)
◇
僕は、王立学園に進学して二つの目標をもっていた。
一つ目の目標は2年生になったら生徒会役員をやること、成績もよかったから、ちゃんと教師と上級生の推薦をもらえたよ。アル兄達が残した学園祭を自分の手で引き継いで後輩に渡したかったんだ。僕の頃にはすでにノウハウができていて規模も少しずつ大きくなっていたけど、最初は大変だっただろうと痛感した。
僕は、学園祭にアル兄、ジャック、エドガー、サイモンの元生徒会役員と、サラさんとレティ姉を招待した。
リリアさんは被害を受けたから招待を出すべきかどうか迷って、結局サラさんに言付けをお願いした。リリアさんからはコックス男爵との連名で、招待への感謝と欠席の通知が届いた。まあ、しょうがないよね。
他の6人は皆学園に来てくれて、学園長とも再会し当時を懐かしがって喜んでくれたよ。そして僕にとっても、このときの出会いが後々よい交流として続いたんだ。
もう一つの目標は、アル兄と同じように飛び級で2年で卒業することだ。
これは入学するときから決めていたので勉強はむちゃくちゃ頑張った。もちろんちゃんと友達も作ってスポーツも頑張った。
僕は、子供の頃から外を飛び回っているのが好きだったから、勉強をするよりも国中を旅して色んなことを知りたかったし大学も行かないと決めていた。
僕は残りの1年を自由にさせて欲しいとバーナム叔父さんに頼んだんだ。バーナム叔父さんは条件付きで許してくれた。
「ルバート、勝手気ままな旅は許さない、何か結果を持って帰ってこい」
僕は、記録ノートと、パステル、サバイバルナイフを持って旅立ったんだ。
(義父上、わがままを許してくれて感謝します。たくさんの経験をして、きっと一回り大きな男になって帰ってきます。)




