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【完結】リリアをめぐる物語 --いつか言葉にできるでしょうか--   作者: 夢のまたゆめ
第六章 コックス領の日々

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6-5 書簡 事件のあとで


ウォルター公爵 様


 ウォルター公爵様はじめ公爵邸の皆様、ご健勝でいらっしゃることと思います

 リリアの療養中は、大変お世話になり有り難うございました。あれから半年過ぎ、お陰様でリリアの回復もめざましく普段どおりの生活が出来るようになりました。


 王都滞在中は、公私にわたる万般のアドバイスを頂き望外の喜びとなりました。

 コックス領では、従来の農産物の他に、養蜂、ホップの生産も軌道に乗り、りんごの発泡酒作りに取りかかったところでございます。


 お尋ね頂いたルビアについては、たしかにリーズにおりました。詳しくは存じませんが、ルビアが出演していたホールに王都の劇場支配人が来られてスカウトされたようです。

 偶然ではありますが、ルビアが上京した時期は、リリアが王立学園に編入学した頃と伺っております。リリアはルビアが王都に居ることを知りませんでしたし接点はなかったと思います。


 私は、病床の祖母の相手をしてくれる歌の上手な者を探しておりました。若い女性とは限らず男でも女でもよかったのです。

 知人に誘われ、私も一度だけルビアの歌を聴いたことがございます。たしかに上手ではありましたが、心引かれるものはありませんでした。リリアに出会ったのはその時でした。


 公爵様が何を明らかにされようとしているのか図りかねますが、私はリリアを選び、育て、リリアが唯一となったのでございます。


 リリアを養女としたこと、15歳の年齢差、私自身の若き日の悔恨など、理由を並べて前に踏み出せずにおりましたが、公爵様から温かいお言葉を頂き、リリアとの将来を考えていきたいと思っております。


 また良き報告ができますよう精進して参ります。


                           敬愛をこめて

                           ジョン・コックス




親愛なるリリアへ


 リリア、元気にしていますか?私、サラはとっても元気よ。

3年生になって仲間が減ったから少し寂しいけれど、声楽の授業後の集まりは相変わらず賑やかです。


 新2年生は、私たちの学園祭を評価してくれて今年も開催することになりました。

 リリアの悲しい事件が起こってしまったけれど、アルバート様の言ったとおり歴史を残せたことを誇りに思います。父兄も、安全面については生徒だけに任せられないと協力を申し出てくれたそうです。

 

 レティシアさんとサイモンは大学受験で忙しそうです。エドガーはフラフラしているけど相変わらず女子人気はすごいのよ。


 飛び級でリンデン大学に行ったジャックからは手紙が届きました。政治がどうのって理屈っぽくてレディに出す手紙じゃないわ。

 でも自炊に苦戦して痩せたそうだから、私はベイル家の財力にものを言わせて缶詰をたくさん送ってあげました。

 もうすぐ、大学のあるリンデンにも駅ができるのですって。ジャックが大学を案内してくれるそうなので、途中下車して見学しようと思っています。


 メリンダは私の父の紡績工場で働いています。最初は工場の下働きをするのが普通なのだけど、メリンダは、自分のことを王立学園の才女だとかって売り込んだらしく、父もその威勢の良さをかって、総務部~従業員のお世話をするところ~に配属したらしいです。


 総務部の人は滅多に工場に行かないのに、メリンダは納得がいかないと工場に突撃するらしいの。みんな最初は白い目で見ていたけれど、メリンダがみんなのために動いているとわかって、いつのまにかメリンダだけ工場もフリーパスになったようです。


 工場には大きな機械もたくさんあって危険だから、工場長が「こんなお嬢さん一人で行かせられない」ってメリンダについて歩くのだって。工場長って無骨で大きな人よ。それを従えているメリンダを想像すると笑っちゃうわ!さすがね。


 話しは変わりますが、リリアの養父様、コックス男爵様って素敵な人ね。私は勝手に老人を想像していたのだけれど、若くてびっくりしました。

 リリアの目がハートマークになっていたのを私は見逃しませんでした。男爵様もきっとリリアのことを大事に思っていると思います。


 リリア、自分の気持ちは、言葉にしてはっきり伝えないとだめよ。幸せはつかむものだわ。私は、誰よりも、誰よりも、リリアの幸せを願っています。


 ブナンに帰ったら度々会いに行きますね。それではまた、ごきげんよう。


                            心をこめて

                            サラ・ベイル


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