↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】リリアをめぐる物語 --いつか言葉にできるでしょうか--   作者: 夢のまたゆめ
第四章 二つの事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/47

4-10 送別会、王城の塔


 2年生の終業式の後、学園長室には、杖をついたリリアとそれを支えるコックス男爵、生徒会役員4人、レティシアとサラ、ウォルター公爵と、そして数人の教師が集まっていた。


「リリア・コックス嬢、日常からの学園への献身に対し『特別賞』を授与する。これは教師、2年生の生徒の総意だ。前例のないことだから、このような少人数での授与となった。退学するのは残念だが、学園で学んだことを誇りに思って今後の人生に活かして欲しい。おめでとう!」

「学園長様、ありがとうございます。」


 リリアが学園長から賞状を受け取ると、温かい拍手がおこった。

「皆さん、大変お世話になりました。こんな名誉を頂いて嬉しいです。」

リリアは、晴れ晴れとした顔で集まった人達を見渡し、ぺこりと頭をさげた。


 ウォルター公爵が皆に向かって声をかけた。

「皆さん、せっかくなので記念写真を撮りましょう、別室に写真技師を呼んでいる。どうぞそちらに。」

 別室には2人の男が待っていた。以前ウォルター邸で記念写真を撮ったときより、はるかに小さなカメラを持って。技師の一人が人数を見ながら指図する。


「学園長は真ん中にお座りください。あと椅子席に女子生徒さん、ああ、あなた大丈夫ですか?賞状を持って学園長の横にお座りください。」

 リリアは、サラの助けをかりて学園長の右隣に遠慮がちに座る。その横にサラ、レティシアは学園長の左隣に座った。その後ろに男子生徒、周りに大人たちが立った。

 そうして、技師に指示されるまま、笑ったりすましたりして写真に収まったのだった。


 撮影が終わるとウォルター公爵はコックス男爵に声をかけた。

「子供達はこれから送別会をするようだよ。私たちは男二人で茶会でもいかがかな?」




 アルバート達七人は、瀟洒なホテルの最上階のラウンジに来ていた。

「アル、こんな所知っていたの?」

「ああ、ずっと前父上と来たんだ。公爵様にお願いして席を予約してもらったんだよ。」


 黒い制服を着た見目のよいウエイターが個室に案内してくれる。部屋に入ると全面の窓から王都が一望できた。雲ひとつない青空の下に、王都の街が広がっている。


「「「うわぁ~」」」

男子が窓にかけよって感嘆の声をあげる。だがここは高級ホテルだ。ウエイターの顔を気まずく見やって居住まいを正した。レティシアとサラはリリアを支えてクスッと笑い合った。


「さあ、みんなお腹空いたね。公爵様が好きなだけ食べなさいって。」

「じゃあ遠慮なく、どれにしようかな~」

七人はワイワイと上品とはほど遠い量の注文をしたが、ウエイターは、穏やかに礼儀正しく注文を受けてくれた。


ウエイターが去り七人だけになると、再び外の景色に目が行く。

「この景色をみんなで見たかったんだ!」

アルバートの視線は、遠方の王城に注がれている。


「王城の塔が見えるね。」

「ああ、7基」

「7基ね。」

「僕たちと同じだ。」

サラとリリアは、夏休みにエルベ川の遊覧船から見上げた塔だと気づき、お互いに顔を見合わせた。


「本当だ!真ん中の高いのは誰かな?」

「アルバートだろ?」

「いや僕かも!」

「何だ、エドガー、すごいじゃないか。」

「誰もであって誰でもないんじゃないか、誰にだっていろんな時があるさ。」

「そうだね、それぞれの位置でそれぞれの役割があるんだ。僕たちも同じだよ。」

「そうよ。」

「そうだね。」

「いつまでもこうありたいね。」

「ああ、7基ね。」

「うん、ほんとに。」




「ねえ、ジャック、もう大学に行くんだから挨拶しなさいよ。」

サラが隣に座ったジャックの背中を叩く。


「え、ぼ、僕?…あの、みんな、色々ありがとう。楽しかったよ。元々父と同じ弁護士を目指していたけど、あのことがあって1日も早く弁護の仕事をしようと思った。ちょっと先に大学に行って待っているよ。アルバートもだろ?」


「ああ、僕も急遽卒業認定を受けたんだ。ジャックと違ってギリギリの成績だったと思う。1年シャンバル帝国に留学して危機管理の勉強をしてくるよ。レティと離れるのは淋しいけど二人で相談したんだ。ね、レティ」

「何だ、そのもう夫婦みたいなの。」

「ほんとだわ、じゃあ次、レティシアさん」


「私は…私はまずリリアさんに助けてもらった命だから、リリアさん、何度でもお礼を言います。ありがとう。」

レティシアの礼に、リリアは恐縮した様子で首を振る。

「悲しいことはあったけど、リリアさんやみんなと仲良くなれて嬉しかった。最終学年も、みんなと充実して過ごしたいと思っているの。」


「そうだね。僕はまだ、みんなみたいに何の目標も持てないけど、最後の学年を大事にしようと思っているよ。」

「いや、エドガーはその顔と口で生きていけるさ。」

「何だよ、サイモン、お前はどうなんだ?」


「うん僕も、3年も変わりなくエドガーやみんなとワイワイやっていたい。でも決めたこともあるんだ。大学はシャンバルの土木建築に進む。この方面はあっちが進んでいるからね。僕は今まで強度がどうとか、見栄えがどうとか、そんなことしか考えてなかった。あのとき思ったんだ。僕は人の安全を考えてなかったって。みんなが安心できるものを生み出せるようになるよ。」

「「「おう~!!」」」

パチパチとみんなから拍手がおこった。


「じゃあ、次、サラ女史、ああ、もうサラ女史はいいか。」

「何でよ。」

「もう何回も聞いてるよ。親の会社を継いで女性の地位向上をめざすんだろう?」

「ま、まあ、そうだけど」

「サラ女史には、そのまままっすぐ育って欲しいよ。」

「そうね、私、サラさんにたくさん助けられた。ありがとう。」

「そ、そんな…」

「ぼ、僕も、サラさんの志は、す、素晴らしいと思う…」

ジャックが真っ赤になりながらサラを見つめる。サラもまんざらでもなさそうだ。


「も、もう!じゃ最後はリリアね。」

「リリアさんは明日帰るのね。」

「はい、皆さん、ありがとうございました。色々楽しかったです。お元気で。」

「何言ってんのよ、今生の別れみたいに。また会えるよ、会いにいくよ。」

「そうだよ、残るのは4人になってしまったけど、また会おうよ。」


「そうだね。濃い2年間だったよ。ところで学園祭はどうなるのかな?」

「学園祭自体は好評だったよ。続けるかどうかは新しい生徒会に委ねるらしい。」

「そう、できたら続けて欲しいわね。」

「残った僕とサイモンで引き継ぎをする。ゴリゴリ押しておくよ。」


「「「ははははっ」」」


いつまでも話しのつきない七人だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。