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【完結】リリアをめぐる物語 --いつか言葉にできるでしょうか--   作者: 夢のまたゆめ
第四章 二つの事件

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4-5 ルビアの事件、参考尋問


 ジェフリーは自宅に帰るなり数日前の新聞を探した。

(あった!これだ)

学園で事件があった翌日、センセーショナルな事件が新聞の第一面を賑わしていた。


----------------------------------------------------------------------------------


『――歌姫ルビア 殺害さる!!痴情のもつれか――

○月×日、午後1時20分頃、歌姫ルビアが、恋人と思われる伯爵令息とともに銃殺。殺害者は、ルビアのパトロンである資産家』

1年程前に王都にやってきたルビアはその美貌と歌唱力で、たちまち歌姫と呼ばれるようになった。劇場は連日の賑わいで大いに儲かった。しかしルビアの態度は徐々に傲慢となり男性関係も派手になっていく。ルビアは、資産家の愛人となり援助を受けながら、ある伯爵令息と交際していた。いわゆる二股だ。嫉妬した資産家は伯爵令息とルビアの逢瀬の場に出向き二人を銃殺。資産家も自らを撃って果てた。


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 リリアが刺された日とルビアが銃殺された日は同じだ。学園の事件は、生徒への影響を考えて真相がわかるまで伏せられている。そうは言っても嗅ぎつけてくる輩はいるものだが、ルビア事件の陰に隠れて今のところ明るみに出ていない。


 ジェフリーは思考に沈みこんだ。


(ジルもバーナム嬢も、ルビアを観に行ってそこで出会う。ジルは、ウォルター嬢との面識はない、バーナム嬢に唆されただけだ。ウォルター家とバーナム家は親戚だったはず、なぜバーナム嬢はウォルター嬢を陥れるようなことをしたのだろう?)


(そうだ!そういえば1年ほど前、ジャックがリリアという編入の女子生徒がいると言っていたな。普段女の子の話などしないジャックが珍しい、ようやく色気づいてきたかと思ったが、そうか!あの夢だ。夢の話しは確かルビア…、ルビア?リリア?断罪されるのはレティシア・ウォルター…)


ジェフリーは頭を整理するために、時系列に人と出来事を書き始めた。


(そうか、ジャックはリリアを警戒していたのか。だが夢のようなことは起こらなかった。バーナム嬢はなぜルビアを見に行った?ルビアとリリアの素性も調べてみよう。まずはジャックと話しをせねばな)




 バーナム伯爵夫人マチルダは、自邸で侍女に爪の手入れをさせながらモード誌を眺めていた。そこへ侍従がやってくる。


「あの奥様、お客様が…それがその…警察の方が3名ほど。メリンダ様と侍女マリの話しを伺いたいと…」

「何ですって?メリンダが警察に関わるようなこと…この前の学園祭のことかしら、レティが狙われたものね、親戚だから?…いいわ、お通しして。私が対応するわ。」

 

 マチルダが応接室に出向くと、私服警官2人、制服警官1人が待っていた。私服警官は30代と40代くらいと思われた。マチルダは適当なことを言って帰ってもらうつもりだったが、相手は捜査状を見せて二人の参考尋問を要求した。いくら貴族でもマチルダに拒否権はない。マチルダの同席も許されずメリンダと侍女マリは、別々に応接室に呼ばれた。




尋問は専ら若い方の私服警官が行った。年配の警官はその横で様子を観察している。


___まずは氏名と家族構成を教えていただけますか?

私はメリンダ・バーナムです。両親と私、一人娘で兄弟はいません。


___学園祭の事件のときはどこにいましたか?事件はいつ知りましたか?

私は合唱のピアノ伴奏をしていて、独唱のリリアの声がしなくなって、あれっと思ったんです。レティ、あの指揮をしていた子が倒れてきて、その次にリリアも倒れて悲鳴が聞こえました。


___男が自分の腹を刺すところは見ましたか?

見ていません。


___あなたは、舞台にいたのですよね。

ええ、ひょっとしたら見たのかもしれないけど気が動転していて…、あの、見たとか見ないとか何の関係があるのですか?


___男に見覚えはありませんでしたか?

見ていないったら!見ていたとしても覚えていないわ。


___学園祭の入場申請は何人されましたか?

えっ入場申請?ふっ、二人申請しました。両親の名前で。


___入場証は何枚もらいましたか?

入場証?いっ、1枚もらいました。えっ2枚渡されている?そっ、そうだったかしら忘れました。


___学園祭の前に王都の歌劇場に行きましたね。歌姫ルビアを見に?

ああ、はいルビアを見にいきました。マリと。なぜって歌姫ルビアに興味があったから。劇場には入れないけど、そこまで行けばポスターが貼ってあるってお友達が…。


___そこで、男と接触しなかったですか?

男?男なんて知らないわ、い、いえ、そう、そうだわ、脅されたの、金を出せって。


___そうですか、そのことは親御さんには?

言ってないわ、心配かけるもの。


___もう一度聞きますが、入場証は2枚では?申請は二人したのですよね。

また?そう申請はしました。だってお父様にも来てほしかったもの、来てくれないってわかっていたけど。だから……2枚もらいました。


___1枚はお母上が使われた。もう1枚はどうされたのですか?

さ、さあ、忘れたわ。落としたのかしら。


___あなたの入場証だけが不明なのですよ。男に渡したのでは?コックス嬢を刺した男は入場証で学園に入っているのですよ。

そ、そんなの知らないわ、きっと拾ったのよ。男なんか見てないもの。




___まずは氏名と仕事を教えていただけますか?

私はマリ・エバンスです。メリンダ様の侍女をしています。メリンダ様の2歳年上でメリンダ様が13歳の時からお仕えしています。


___学園祭の事件前にメリンダ嬢と王都の歌劇場に行きましたね。

はい、確かに行きました。メリンダ様が歌姫ルビアのポスターを見に行くとおっしゃって。私は、そんな所、危ないとお止めしたのですが、メリンダ様は街歩きがお好きなので、またかと。


___どのような服装でしたか?

はい、平民が着るようなグレーのフード付きのマントをご用意しました。メリンダ様と私は体格が似ているので同じものを買いました。


___その時、男に会いましたね。その時の状況を話してください。

男?あ、は、はい、知らない男がメリンダ様にナイフを突きつけて横の路地にはいれと言ったのです。私は逃げようと思えば逃げられたのですが、その間にメリンダ様に何かあったらと思うと足が動かなくて一緒に従いました。


___金銭を要求されたのですか?

いえ、男が何も言わずナイフを振り上げてメリンダ様を害そうとしたのです。こ、怖かった…。お預かりした銭袋を男に投げて渡しました。見逃してくれって。


___そのとき、メリンダ嬢は入場証を持っていましたか?

入場証?ああ、学園祭のですね。たまたまその日にメリンダ様が学園で頂いたようです。男に渡して、自分達を殺すより学園でもっと身分の高い者を狙えってメリンダ様がおっしゃって。私、私、恐ろしくて血の気が引いて、でも自分も死にたくないし…。それで、男がひるんだ隙にメリンダ様の腕をつかんで逃げたんです。


___その身分の高い者とは?

あ、あの、レティシア・ウォルター様。はい、そうです、メリンダ様の従姉妹にあたる公爵家のご令嬢です。


___ウォルター嬢とメリンダ嬢の仲は?

仲は…いいのか悪いのか私にはわかりません。でも噂とかの手伝いはさせられました。えっ、あ!余計なことでした。いえ関係ないです。事件とは。


___今の話を詳しくお願いします。

ごめんなさい、ごめんなさい、ほんとに関係ない話しです。


___関係があるかないかは、こちらが判断します。

あの、本当にごめんなさい。学園で噂をながしたり、リリア様に嫌がらせをしたり…、メリンダ様から指示されて…。私が制服を着て学園に行きました。とても厭だったけど、従わないとやめさせるとおっしゃられて。私、ここを解雇されたら困るんです。仕送りもしないといけないし…。


___このことを知っているのは?

メリンダ様と私の秘密です。


___リリア・コックス嬢、または歌姫ルビアのことで見聞きしたことはないですか?

メリンダ様は、「リリアはルビアのはずなのに」とよくおっしゃっていました。何のことだが意味はわかりません。あの今になって思うのですが…学園でリリア様を見て、歌姫ルビアの看板を見て…二人は似ている気がします。メリンダ様がルビアを見に行ったのも関係あるのかもしれません。


___いや、ありがとう。よく話してくれました。

あの、あの私はどうなるんでしょうか?


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